新駅直結の再開発ビル

現在計画中の駅まち一体開発の事例を一つ紹介しよう。東京メトロ日比谷線虎ノ門新駅(仮称)に直結する(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワーである。森ビルなど地権者が構成する再開発準備組合が2022年度完成を目指し計画を進めている。

まちと一体整備される虎ノ門新駅(仮称)は、日比谷線の霞ヶ関駅と神谷町駅の間で都市再生機構が2020年供用開始を目指し設置工事を進める。2022年度の最終完成時に(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワーとつながる予定だ(図2)。

(図2)(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワーは虎ノ門ヒルズ森タワーを中心とするエリア内に建設される予定。2022年度完成を目指し、東京メトロの日比谷線虎ノ門新駅(仮称)と一体整備される計画だ(資料:森ビル)
(図2)(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワーは虎ノ門ヒルズ森タワーを中心とするエリア内に建設される予定。2022年度完成を目指し、東京メトロの日比谷線虎ノ門新駅(仮称)と一体整備される計画だ(資料:森ビル)

名称から分かるように、建設予定地は虎ノ門ヒルズ森タワーを中心とするエリア。同じエリア内では森ビル関連のプロジェクトとして、(仮称)虎ノ門ヒルズビジネスタワーが2019年12月完成を、(仮称)虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワーが2021年1月完成を目指し建設中だ。

通常、地下鉄の駅はまちとの接点が出入り口のみ。駅とまちの一体感はない。駅まち一体開発をここで計画する意義を、森ビル都市開発本部計画企画部都市計画2部チームリーダーの加藤昌樹氏はこう説明する。

「相互直通運転で私鉄と直結し地下鉄の駅は重要性を増している。ところが地下鉄の駅は、道路区域の下というスペースの制約があって、人のたまる駅前広場のような空間を整備できなかった。しかも、地下鉄の駅はどこにあるのか、地上からは分かりづらい。これらの問題を再開発ビルとの一体整備で解決していく」

具体的には、道路区域の外、再開発区域内の地下に駅前広場を整備する計画だ(図3)。「新しいまちの拠点として人がたまる機能を確保する。運営面でもにぎわい創出を図りたい。災害時には一時滞在施設として利用することになる」(加藤氏)。

(図3)(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワーの足元で虎ノ門新駅(仮称)と一体整備される交通結節空間のイメージ。東西に駅前広場を確保する計画だ(資料:森ビル)
(図3)(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワーの足元で虎ノ門新駅(仮称)と一体整備される交通結節空間のイメージ。東西に駅前広場を確保する計画だ(資料:森ビル)

駅前広場は、地下鉄のコンコースに接続する地下2階から地上1階まで3層吹き抜け。広場空間を整備する道路上のデッキに連なる天井からは自然光を取り入れる。床面積を削ることは収益性を損なうことにもなるが、この空間には床はあえて張らないという(図4)。

(図4)虎ノ門新駅(仮称)の東西に整備される予定の駅前広場の一つ、西駅広場のイメージ。自然光に導かれるように地上レベルに上がれる空間づくりを目指す(資料:森ビル)
(図4)虎ノ門新駅(仮称)の東西に整備される予定の駅前広場の一つ、西駅広場のイメージ。自然光に導かれるように地上レベルに上がれる空間づくりを目指す(資料:森ビル)

加藤氏は「地下鉄の駅は、どこを通ると地上に出られるのか、分かりにくい。そこで地上の光を取り込み、動線を分かりやすくしようと考えた。地上の光を感じながら、上へ、上へ、と感覚的に上がっていけば、地上にたどり着く想定だ」と、意図を説く。

歩きやすさが不可欠に

3層吹き抜けの側面、地下レベルの地下鉄コンコースやプラットホーム、地上レベルの道路に接する面は、ガラスで仕切る計画だ。ガラス越しに鉄道のアクティビティーとまちのアクティビティーを互いに感じられるような空間を目指す。

手本は、みなとみらい駅と一体整備されたクイーンズスクエア横浜である。「空間づくりでは画期的だった。関係者間の調整には苦労するが、あの空間を超えられるものを目指す。都市交通のモデルとして海外にもアピールしたい」(加藤氏)。

再開発ビルの足元に新駅とまちをつなぐ交通結節空間として駅前広場を整備するだけではない。再開発区域外ではさらに、周辺の開発プロジェクトとつながる歩行者ネットワークの整備も並行して進める。加藤氏は将来をこう展望する。

「周辺の開発プロジェクトでは、ホテル、商業、カンファレンス、ビジネスインキュベーションなど、さまざまな機能が整備される。それらの機能と、地上、地下、デッキの各レベルでつなげ、互いの間を歩いて行き来できるようにする」

歩行者ネットワークは、(仮称)虎ノ門ヒルズビジネスタワー1階に整備される「バスベイ」との間を接続する連絡路の役目も果たす。ここには、都心と臨海部を結ぶBRT(バス高速輸送システム)のターミナルが置かれる予定だ。

目指すは、歩きやすいまちの実現である。「駅を中心にさまざまな機能やにぎわいの拠点を緩やかにつなぐには、まちの歩きやすさが求められる。それが、都市部の駅まち一体開発には重要だ」。加藤氏はそう強調する。

駅まち一体開発によって駅の拠点性をまちの価値向上に着実につなげていくには、まちの回遊性をもたらす「歩きやすさ」が不可欠だ。それを実現するのは、一言で言えば、バリアフリーをはじめとする歩行環境の快適性にほかならない。

公共交通を中心とする駅まち一体開発では、公共交通の利用者で歩行者でもある「人」が主役になる。その歩行環境の快適性を、どう高めていくのか――。アナログの空間づくりにデジタルの技術を組み合わせる可能性が、そこに開けそうだ。