東京・新宿の歌舞伎町。歌舞伎と無縁そうに見えて、なぜその名が付くのか、いぶかる人は多い。由来は、実現には至らなかった歌舞伎劇場の建設構想にある。戦災復興土地区画整理後の姿として、観光需要も見込んだ芸能施設を中心とする繁華街を地元では構想していたのである。そうしたまちのDNAを受け継ぐ開発計画が、来年着工に向け動き出している。
まちのDNAを受け継ぐ開発計画とは、「新宿TOKYU MILANO再開発計画」だ。事業者は、東急レクリエーションと東京急行電鉄(以下、東急電鉄)の2社。新宿TOKYU MILANO跡地と隣のホテル跡地を合わせた約4600㎡の敷地に、エンターテインメント施設、ホテル、店舗などで構成する地上40階建ての複合ビルを建設する計画だ(図1、図2)。着工は来年7月の予定。2022年度の完成を目指す。


「新宿TOKYU MILANO」とは、4スクリーンの映画館やボウリング場などで構成するエンターテインメントビル。東急レクリエーションの前身にあたる会社が1956年に「新宿東急文化会館」として開業した。60年近くにわたって営業を続けてきたものの映画館が老朽化してきたことなどから、2014年12月に閉館。昨年7月からはその跡地を、体験型エンターテインメント施設「VR ZONE Shinjuku」として暫定利用する(写真1)。

そこに、新しいエンターテインメント施設が誕生する。目玉は、屋外劇場的都市空間(図3)。目の前に広がる「シネシティ広場」と一体的に利用することで、屋外劇場のような都市空間を生み出す。その仕掛けとして、シネシティ広場側の壁面に屋外ビジョンを設置し、ビルの足元から敷地境界に向けて屋外ステージを整備する。

この広場はもともと新宿コマ劇場前の噴水広場として親しまれてきたもの。約20年前に噴水設備が撤去され、歩行者専用道路として改修された(写真2)。現在は、この一帯でエリアマネジメント活動を展開する任意団体の歌舞伎町タウン・マネージメントが運営を担う。

東急電鉄で開発事業を担当する開発事業部都内開発部開発四課の課長を務める田島邦晃氏は「シネシティ広場の運営を担う歌舞伎町タウン・マネージメントと連携し、まちを盛り上げるための場づくりを進めていきたい」と抱負を語る。
田島氏がシネシティ広場との一体利用で開催を想定するイベントには例えば、コネクト歌舞伎町実行員会と歌舞伎町商店街振興組合が主催してきた「CONNECT歌舞伎町」という音楽イベントがある。今年5月に開催したイベントでは、総勢121組のアーティストが歌舞伎町内のライブハウス10会場で演奏を繰り広げた。