乗換案内事業を営むジョルダンが2018年7月、100%出資で「MaaS(Mobility as a Service)」事業の子会社を立ち上げた。同年8月には事業の一環として、公共交通データを配信する公共交通データHUBシステムの提供を開始。バス事業者のデータを各種サービス事業者らが利用者に提供しやすくする。事業の展望を、代表取締役社長の佐藤俊和氏に聞いた。

――あらゆる交通サービスを統合する「MaaS(Mobility as a Service)」事業の新会社、JMaaSを7月に設立されました。そのきっかけや今後の展開をお聞かせください。

佐藤 1993年から提供する「乗換案内」に全国全駅の時刻表掲載後は、バスに焦点を当てました。例えば地方都市まで含めたすべての路線バスに関して、どこを走行しているのか、バス停はどこなのか、バス停にはいつ来るのか、この3つが分からないという問題意識の下、サービスの拡充を図ってきました。また地図の領域にも進出しようと、「乗換案内」とは別に、出発地から目的地までのルートを案内する「行き方案内」というアプリも開発していました。さらに、調べてみると、経路検索は「乗換案内」の利用が、ラストワンマイルの移動は「Googleマップ」の利用が多いことが分かった。そこで、それらをシームレスにつなげようと、「乗換案内」と「行き方案内」を一体化させる方向で開発を進めていました。

100%出資の新会社、JMaaSの代表取締役社長を務めるジョルダン代表取締役社長の佐藤俊和氏(以下、人物写真の撮影は尾関裕士)

一方、MaaSに関しては、自動車関連の各社が動いていることは認識していました。最近は、フィンランドに拠点を置くマース・グローバルが開発したアプリ「Whim(ウィム)」で、現在地から目的地まで、電車、バス、タクシー、レンタカーなど、さまざまな交通機関を用いたルートを、予約から決済まで含めて提案することを知って、時代はここまで進んでいるのかと驚かされました。

マース・グローバルのようなベンチャーの事業展開は非常に速い。われわれも急がなくてはならない。事業の立ち上げスピードを上げたい。そこで、移動を事業とする関係各社が集まってくるような場をつくれないかと考えたのが、新会社設立のきっかけです。

MaaS事業は時間との勝負

――1社単独で事業を進めていくのではなく、協業の場をつくるということですか。

佐藤 そうです。MaaS事業はやはり、ブラウザーを握っている企業が乗り出すのが一番、早い。だからこそ、われわれでやろうと。

ただ、時間との勝負です。早く事業化しないと、海外の資本が日本国内で事業に乗り出しかねません。思惑通りに事が運ぶかどうか分かりませんが、新会社に集った関係各社と提携し事業化を進めていきたいと考えています。

――協業の場として、提携する相手はどのように巻き込んでいくお考えですか。

佐藤 2018年10月に「乗換案内」と「行き方案内」を一体化させたアプリを提供します(図1)。地図情報を中心に、経路検索とも連動したものです。これを、MaaS事業のプラットフォームとして位置付けています。Googleマップなしでも現在地と目的地との間を行き来できるという、このプラットフォームの強みを示していきたいですね。

(図1)「乗換案内」と「行き方案内」を一体化させた新しい「乗換案内」のイメージ画面。Googleマップの経路検索と同様に、地図からも、現在地から目的地までの経路を検索できるようになる (画像提供:ジョルダン)

――ではMaaS事業として「Whim」のようなアプリの開発を想定しているわけですね。

佐藤 もちろんです。鉄道やバス以外では、タクシー、レンタカー、シェアサイクルなどとの連携が考えられます。これらをシームレスにつなぐことができればいいですね。例えば、次の乗り換え地点までもう10分かかり、乗り換えた先はどこで降りればいいのか、移動中にすべて分かるような、そういう画面イメージを想定しています。