「みらいの公園」の提案で軸にすえるのもやはり、その運営である(写真5)。

「PARK PACK」のコンテナのうちの一つは、運営を担当するスタッフが常駐する拠点だ。例えば「こういうことをやりたい」という公園利用者の要望を受けて、そのやり方や時間帯を提案する役割を担う。

(写真5)「みらいの公園」では、禁止行為ではなく、推奨行為を列記する。利用者が「やりたい!」と思うことを運営スタッフに伝えるように促す(写真:茂木俊輔)
(写真5)「みらいの公園」では、禁止行為ではなく、推奨行為を列記する。利用者が「やりたい!」と思うことを運営スタッフに伝えるように促す(写真:茂木俊輔)

運営には、公園利用者の生の声だけでなく、その属性・人数データなども生かす。

仕掛けの一つは、出入り口に最も近いコンテナの上部に設置された2台のカメラである。公園利用者の姿を捉え、性別・年代や人数のデータをリアルタイムで推定し、その結果を、運営を担当するスタッフのアクティビティー提案に生かす。

もう一つ、近距離無線技術「ビーコン」も用いる。スマートフォンや携帯ゲーム機などの情報端末がWi-Fi環境を探索する電波を受信し、その電波に含まれるデータを取得。それによって把握できる人流データを、運営にフィードバックする。

ティー・ワイ・オーのクリエイティブエージェンシー本部オファリングマネジメント部門営業開発部でプロデューサーを務める橋本哲也氏は「ここで試みる運営の実験が、ケース・スタディーとして参考になればいい」と話す。

コンテンツ提案で将来像示す

「例えば、サッカーが禁止されている公園でサッカーをやりたい利用者がいる場合、それを可能にするにはどうすればいいかを探っていきたい。禁止行為にせざるを得ない課題があっても、こうすればそれを乗り越えられる、と提言できるかもしれない」

答えは、一つではない。橋本氏は「公園利用者の生の声や機器を通じて得られたデータを逐一把握し、それを翌日の運営に反映させていくような、フレキシビリティーの高さを発揮していきたい」と意気込む。

電通ライブのクリエーティブユニット第1クリエーティブルーム山本ディレクター部でチーフ・プランナーを務める西牟田悠氏も、「『みらいの公園』とはこういうものという押し付けがましい提案は公園らしくない」と、フレキシビリティーの高さを強調する。

「こんなことができる場所かもしれないという公園の可能性を、公園利用者の生の声を基にどれだけ示していけるかが問われる。そうして公園の将来像を示すことが、いまの公園の課題を考えるきっかけにもなる」

実際、公園利用者を中心にすえた運営を心掛ける一方、公園の将来像として、ワイヤレスヘッドホンで音楽を楽しむ「PARK is Disco」や大型スクリーンに映画を投影する「PARK is Cinema」など、いくつものコンテンツも用意する(写真6)。それによって、公園がその舞台になれるという可能性を、具体的なシーンとして利用者に示す。

(写真6)ワイヤレスヘッドホンで音楽を楽しむ「サイレントディスコ」の案内(上)。この日は夕方17時から、コンテナの一つをDJブースとして開催された(下)。「モジュール」の開発同様、これらのコンテンツもパートナー企業・団体と組んで提供している(写真:茂木俊輔)
(写真6)ワイヤレスヘッドホンで音楽を楽しむ「サイレントディスコ」の案内(上)。この日は夕方17時から、コンテナの一つをDJブースとして開催された(下)。「モジュール」の開発同様、これらのコンテンツもパートナー企業・団体と組んで提供している(写真:茂木俊輔)

「PARK PACK」の残る2つのコンテナは、これらのコンテンツ提案で必要なスペースを提供する役目も担う。例えば「PARK is Disco」ではDJブースとして、展示系コンテンツではギャラリーとして活用される(写真7)。

「『PARK PACK』の中に収納されているものは、こういうことをやりたいと思ったときにそれを可能にするツールや仕掛け。ただそれだけでなく、コンテナそのものが場所を提供することもある。その自由度は高い」(西牟田氏)。

(写真7)コンテナの一つはこの日、展示用のギャラリーとして活用された。特定非営利活動法人両育わーるどが、障害や疾患を疑似体験できるツール「THINK BOX」などを展示。このツールを用いたワークショップも実施した(写真:茂木俊輔)
(写真7)コンテナの一つはこの日、展示用のギャラリーとして活用された。特定非営利活動法人両育わーるどが、障害や疾患を疑似体験できるツール「THINK BOX」などを展示。このツールを用いたワークショップも実施した(写真:茂木俊輔)

利用者のマインドチェンジを

さまざまなコンテンツを提案することで、齋藤氏は公園利用者にマインドチェンジが起きることを願う。「公園に出掛けても、利用の仕方は受け身。こう利用したい、と能動的に要求することはない。これらのコンテンツ提案が、公園でこんなことをやってもいいのか、と利用者が気付くきっかけになれば」。

何かを気付かせるだけのインパクトは十分に見込めそうだ。プロペラ・アンド・カンパニーの共同代表でデザイナーの山岸政樹氏はこう話す。

「芝生広場にコンテナを設置したら、多くの人が興味を持って集まってきた。ここで何が始まるのかという好奇心を刺激するたたずまいが、このコンテナにはある。今後、実験的なプロジェクトとしてどう波及していくのか、見届けていきたい」

ターゲットは都市公園に限らない。民間都市開発で提供されていくパブリックスペースも視野に入れる。「これらのパブリックスペースはいま、似たようなものばかり。そのまちを特徴付けるようなスペースが生まれてくるといい」(齋藤氏)。

いずれにしても、パブリックスペースの主役は「人」という発想に立つ。「PARK PACK」というツールを提供し、パブリックスペースという白地のキャンバスに利用者に思い思いの絵を自由に描いてもらう。それを運営者が支援するという構図だ。

いま不動産の価値はその運営によって左右される時代になってきた。床貸しの発想で済まされていたオフィスでさえも、コワーキングスペースの普及を背景にオペレーショナルアセットの仲間入りを果たしつつある。パブリックスペースも、例外ではない。

ただ、利用者との間で対話を重ねる温かみのある運営を目指そうとすると、その担当者が欠かせない。課題は、その確保に必要な資金の調達だ。伊藤氏は「運営の価値に共感し投資する文化が根付けば、温かみのある運営も可能になる」と、将来に期待を抱く。