一般車の削減分を倉庫に転用

地域ルールでは、一般車駐車施設にしても荷さばき駐車施設にしても需要推計に基づき整備台数を求める仕組み。その台数を付置義務駐車台数と比べると、一般車駐車施設では少なくなり、荷さばき駐車施設では多くなる(図2)。

(図2)大丸有地区で運用する地域ルールにおける駐車場整備台数の考え方。地域ルールの適用によって、荷さばき駐車施設は追加される一方で、一般車駐車施設は削減されることになる(資料提供:大手町・丸の内・有楽町地区駐車環境対策協議会)
(図2)大丸有地区で運用する地域ルールにおける駐車場整備台数の考え方。地域ルールの適用によって、荷さばき駐車施設は追加される一方で、一般車駐車施設は削減されることになる(資料提供:大手町・丸の内・有楽町地区駐車環境対策協議会)

地域の性格上、荷さばき駐車施設は一般車駐車施設と違って需要が多い。大丸有駐車協議会事務局の白根氏は「荷さばき駐車施設は条例によって最大10台で許されるが、ビル内の店舗が開店する前の時間帯には、それではとても足りない」と明かす。

地域ルールでは駐車施設の整備台数を需要推計に基づいて求めることを認めたうえで、付置義務駐車台数からの削減度合いに応じて負担金を徴収する仕組みも盛り込んでいる。金額は削減台数1台あたり原則100万円(非課税)だ。

大丸有駐車協議会ではこの負担金を原資に、駐車環境整備事業を実施する事業者に対して助成金を交付している。駐車場や道路の安全性の確保、自動二輪の駐車施設整備、自転車の駐輪施設整備などが主な対象だ。

2018年度からは、車番認識システムの導入も助成の対象に加えた。渡邊氏は「車両の出入りに関するデータを協議会に提供してもらい、それらを基に需要推計の精度をさらに高める仕組みをつくる」と、狙いを語る。

地域ルールの運用を始めて14年。大丸有駐車協議会事務局によれば、新築ビルでの適用がほとんどで、既存ビルでその適用を受けて付置義務駐車台数を削減した例は1件にすぎない。そこはいま、倉庫として転用されているという。

既存ビルで地域ルールの適用を受けて削減分の転用を図ろうとする意識は、大丸有地区の場合、そう高くないようだ。渡邊氏は「古いビルは駐車場への出入り口が2.1mと低く、2トン車が入れないほど。適用を受けて一般車駐車施設を減らせても、荷さばき駐車施設を増やせないという現実がある」と、事情の一端を明かす。

白根氏は環境面やコスト面の難しさを挙げる。「地下空間で通風・採光を得られず、転用用途によっては法規制への対応が必要になり、コストが掛かる。転用用途として考えられるのは、倉庫や自動二輪の駐車施設くらいではないか」。

一時保管へのニーズが生まれる

しかし目を転じれば、将来への可能性を感じさせる例もみられる。アスクルが東京・六本木の東京ミッドタウンで同ビルのマネジメント会社である東京ミッドタウンマネジメントや佐川急便の協力を得ながら取り組む小口配送モデルの実証実験である。

アスクルでは従来、顧客からの注文を受けると、顧客ごとにピッキング・梱包した荷物を在庫拠点である物流センターから出荷してきた。それに対して新モデルでは、物流センターから配送エリア近隣までの輸送と、そこから顧客までの配送を切り分ける(図3)。

(図3)アスクルの新旧小口配送モデルの概要。新モデルには、東京・六本木の東京ミッドタウンで2018年7月から実証実験に取り組む。一時保管スペースを挟み、輸送と配送を二分する(画像提供:アスクル)
(図3)アスクルの新旧小口配送モデルの概要。新モデルには、東京・六本木の東京ミッドタウンで2018年7月から実証実験に取り組む。一時保管スペースを挟み、輸送と配送を二分する(画像提供:アスクル)

実証実験の例で言えば、東京ミッドタウン内に一時保管スペースを借り受け、そこに通常の受注品と併せて需要予測に基づく補充品を事前出荷する。補充品はエリア内の顧客からの受注に応じて、一時保管スペースから台車で顧客に納品する。

物流センターからの補充品の事前出荷は、通常の受注品を積載する車両の空きスペースを活用する。それによって配送量の平準化による生産性の向上を図る。顧客にとってみれば、補充品に関して注文から納品までのスピードアップが見込める。

アスクルでは2018年7月から、こうした小口配送モデルの実証実験に取り組む。今後は、結果の検証を進めながらサービス開始につなげていくとともに、対象エリアを広げていくことを考えているという。

一時保管スペースに対する需要が出てくれば、地域ルールの運用によって付置義務駐車場に生まれる余剰分を、そうした需要の受け皿として活用することも考えられる。転用用途として有望なメニューが、一つ加わる。

需要は限られているとはいえ、大都市中心部の多くのエリアで付置義務駐車場にムダなスペースが生じていることは間違いない。それを、地域ルールの運用によって掘り起こしていこうという流れが生まれてきたわけだ。

課題の一つは、地域ルール策定の旗振りを誰が担うかという点にあるという。

大丸有駐車協議会事務局長の渡邊氏は「大丸有はもともとまちづくり協議会という会議体があったからこそ、合意形成を図れた。地元任せでは策定も運用もできない。行政主体でないと動かない」と、自治体への期待をにじませる。