品川開発プロジェクトによって新しく出来上がるまちの位置付けは、国際ビジネス交流拠点。オフィス機能のほか、MICE機能や文化創造機能を併せ持つ。地区北端の1街区にはインターナショナルスクールを併設した居住施設約860戸を、高輪GW駅前の4街区南棟には短期滞在者に対応した宿泊施設約200室を備える(図4)。

(図4)品川開発プロジェクトⅠ期分として4つの街区に5棟のビルが建設される計画。羽田空港に直結する都営地下鉄泉岳寺駅とも結ばれる(資料提供:JR東日本)

拠点性を高めていくうえでJR東日本では、4街区の地下や同街区南棟6階に整備するコンベンション・カンファレンス施設をまちの魅力の一つとして打ち出す。国際会議や国際展示イベントなどでの利用を見込んだもので床面積は合計約1万3000㎡。国際会議に対応できる最大会場の広さは1700㎡規模という。

天内氏は「これだけの広さの会場を備えた駅直結の施設はほかにはそうない。強い競争力を見込める」と、自信を見せる。立地や広さだけに目を向ければホテル内の宴会場と競合するが、コスト面で差別化を図ることができるとみる。

もう一つ、まちの魅力として打ち出す施設は、2街区に建設する地上6階建ての文化創造施設である。施設内には、「ラボ(創造・実験)」「エキシビション(発表・体験)」「ライブラリー(情報収集・提供)」「ホール(発表・発信)」の各機能を配置する想定だ。

この文化創造施設は、ビジネスの創造・発信に向けた「価値創造の好循環」の起点と位置付けられる(図5)。

(図5)文化・ビジネス機能の連携・活用イメージ。ハード・ソフト両面の仕掛けによって価値創造の好循環を生み出していきたいという(出所:JR東日本の資料を一部簡略化)

ここで想定する好循環とは、文化創造施設などでの「創造・実験」で生み出したビジネスを、4街区北棟のビジネス支援施設などでの「事業化支援」を通して育て、文化創造施設のホール・エキシビション機能や4街区のコンベンション・カンファレンス施設などでの「交流・発信」を通して発信していくものだ。

新しいモビリティサービスの可能性も

国際ビジネス交流拠点とはつまり、新しいビジネスを生み出せるまちでもある。コンベンション・カンファレンス施設や文化創造施設は、価値創造に必要なインフラという位置付けだ。

ただ「価値創造の好循環」を生み出すには、施設間の連携が欠かせない。その役割を担うのが、「(仮称)品川駅北周辺地区タウンマネジメント組織」。JR東日本ではグループ会社とともに、このタウンマネジメント組織を立ち上げる方針だ。

タウンマネジメント組織では、施設連携、公共空間の活用、にぎわいの創出などに取り組むほか、文化とビジネスのつなぎ役も果たしていきたいという。「世界中のクリエイティブな人が持ち込むテクノロジーやアートと、それらを基に新しい事業を立ち上げようという人を、マッチングさせる機会も提供していきたい」(天内氏)。

JR東日本では、価値創造に向けたベンチャー企業との協業やオープンイノベーションにすでに取り組む。2017年度には、「JR東日本スタートアッププログラム」を展開し始め、駅や鉄道など自社グループの経営資源や情報資源を生かした新しいビジネス・サービスの実現を目指す。またモビリティ変革を創出する場として「モビリティ変革コンソーシアム」を立ち上げ、会員企業とともに実証実験に取り組む。天内氏は「これらの取り組みやそこでの企業とのつながりを、まちづくりに生かしていきたい」と話す。

価値創造の循環の中から、新しいモビリティサービスが生まれる可能性も見込める。

図5で示したように、「創造・実験」段階ではパブリックスペースも利活用する。その一つが、高輪GW駅西口の地上部に整備される約3500㎡の交通広場だ。路線バスやタクシーなど地域交通と駅との結節点になる、いわゆる駅前広場である。

その交通広場を、JR東日本ではグループ内で管理・運営する予定だ。狙いは、地域交通のコントロール。新しいまちを開発・運営する立場から、交通広場で受け入れる車両の種別を臨機応変に決めていく。

「例えばコンベンション施設で開催される国際会議の参加者を乗せた空港リムジンバスを交通広場内に乗り付けさせることが考えられる」(天内氏)。コンベンション施設への出入り口は交通広場近くに設置し、参加者の円滑な誘導を図る。

この交通広場が将来、「モビリティ変革コンソーシアム」の実証実験に利用されることも考えられる。オープンイノベーションの場と実証実験の場がともにそろえば、新しいモビリティサービスの開発には弾みがつくに違いない。

リニア開業にらみ、品川駅北口開発へ

2024年のまち開き以降、JR東日本は品川エリアの拠点性をさらに高めようと、次の一手を打つ。開発投資の向かう先は、JR品川駅北口である。リニア中央新幹線の2027年開業をにらみ、品川駅周辺に立地を希望する企業の受け入れ能力を高める狙いだ。

開発のタネ地は、一つは土地区画整理事業で生み出される6つの街区のうちビル建設の計画がまだ明らかになってない地区南寄りの2つの街区だ。

図3に示されているように、JR品川駅には将来、リニア中央新幹線の開業に併せて北口広場が新しく整備される予定だ。いまは東西2カ所の駅出入り口に新しく駅北口が加わる。この北口が開設されれば、地区南端の2つの街区はJR品川駅にも近くなる。高輪GW駅西口というよりむしろ、品川駅北口と呼んでいい立地だ。

金森氏は「この2つの街区も自社で開発していく方針。ただ、街区の間に計画されている環状4号線の整備工事などとの関係もあって、ここに建設するビルが開業するのは2030年代になる見通しだ」と説明する。

JR東日本ではさらに、その品川駅北口一帯の開発も計画中だ。「駅北口に人工地盤を整備し、ビルを開発する計画だ。玄関口として本丸である品川駅もテコ入れを図る」。天内氏は将来計画を明かす。

品川駅北口一帯に隣接する駅西口ではいま、駅前を南北に走る国道上に、次世代交通ターミナルや商業施設一体のにぎわい広場などで構成される人工地盤を整備する計画が、国土交通省を中心に検討されている。国道で分断されていた駅と駅西口一帯の結び付きはこの人工地盤によって強化され、開発の波は西方向にも押し寄せていく。

品川エリアはJR品川駅東口の開発と東海道新幹線の品川駅開業で2000年代初めに拠点性を格段に高めた。しかしその後、都心3区内ではビル街の建て替え・再開発が次々に進み、地域間の競争は激しさを増している。拠点性をさらに高め、競争を勝ち抜く次のチャンスは、駅北口の開発とリニア中央新幹線の開業にある。

品川開発プロジェクトは、その前哨戦。言わば反撃の起点なのである。