アジアの拠点都市を目指す福岡市が2015年2月に打ち出した「天神ビッグバン」。市中心部の天神地区で新たな空間と雇用の創出を図る。その「西のゲート」と位置付けられる開発プロジェクトが、旧大名小学校跡地活用事業だ。前編に続く後編では、積水ハウスや地元の西日本鉄道など民間5社を中心に取り組むこのプロジェクトを通して、福岡の未来像を見通す。

福岡市の中心部、天神地区の西の一角に、交流の拠点が生まれる。旧大名小学校跡地活用事業である。地元福岡市が跡地約1.2haを民間事業者に貸し付け、その事業者がオフィス・ホテル棟とコミュニティ棟の2棟を開発する。全体完成は2022年度内の予定だ。

天神地区では、市が地下鉄天神駅を中心とする半径500mの区域で「天神ビッグバン」と呼ばれる施策を展開中。航空法に基づく高さ制限のエリア単位の特例承認を得たり、容積率の割り増しを与えたりするなど、老朽化したビルの建て替え更新を後押しする。

旧大名小学校跡地活用事業は、その目玉プロジェクトの一つだ。地区西端に位置することから、天神ビッグバンの「西のゲート」と位置付けられる。小規模な店舗も立地するヒューマンスケールな街並みの大名地区と天神地区を結ぶ結節点ともなる(写真1)。

(写真1)旧大名小学校跡地。右手に立つ高層の建物は西鉄グランドホテル。天神の中心部は右手方向(写真:茂木俊輔)

オフィス・ホテル棟の高さは、天神地区では際立って高い約110m(図1)。この一帯は航空法に基づく高さ制限を受け、高さ約76mまでしか建てられなかった。それが2017年7月、エリア単位の特例承認によって高さ約115mまでなら建てられるようになった。

(図1)天神地区を東西に貫く明治通り側から見たイメージ。約110mという際立つ高さが分かる(画像提供:積水ハウス)

交流の核は、校庭として使われていた跡地の中央部分に整備される人工芝中心の広場だ。広さは約3000㎡。地元で開催されてきた夏祭りや運動会などの行事を引き続きここで行うことを踏まえた形状とするほか、防災広場としての活用も想定する。

跡地の南端には既存校舎が残り、そこには市が2017年4月、民間3社とともに公民連携で運営するスタートアップ支援施設「FUKUOKA growth next」を開設済み。複合ビルにはこの支援施設と連携を図る創業支援・人材育成施設も整備される計画だ。

民間事業者の代表である積水ハウス福岡マンション事業部で都市開発部長を務める佐古田智哉氏は「オフィス、ホテル、創業支援施設の利用者が、広場を介して相互に交流・連携し、新しい価値を生む。それが、都市のブランド力を高める」と、将来を見すえる。

どのような開発事業なのか、構想段階から振り返っておこう。

グローバル創業都市の新たな拠点

大名小学校は1873年に市内の別の場所で開校し、その約20年後に跡地の場所に移転してきた。以来約120年、地域とともに歩んできたが、都心部の小中学校の再編に伴い、2014年3月に閉校する。100年以上の歴史を持つ、地元とのつながりの深い小学校だ。

市はその跡地活用に向け、地域団体代表や学識経験者を中心に検討委員会を組織し、2016年3月に「旧大名小学校跡地まちづくり構想」(2017年9月改訂)を策定。同年5月には民間事業者のニーズを把握する目的で提案を公募し、11社・グループから提案を受けた。

これらを踏まえて市が2017年3月に策定したのが、「旧大名小学校跡地活用プラン」だ。ここではコンセプトを「人・モノ・コトが交流する新たな創造の場へ」と定め、土地利用や事業手法の方向性を示した。これが、民間事業者公募の基礎になる。

民間事業者の公募は2017年10月。公募要綱では、民間事業者が市から定期借地として借り受ける跡地に、(1)広場、(2)公共施設、(3)民間施設――という大きく3つの施設を開発するという事業スキームや公民の役割分担などを示した(図2)。

(図2)市が跡地活用事業の公募要綱で示した事業スキーム。スタートアップ支援施設が入居する既存校舎は南校舎。ここは跡地を定期借地で借りた大名プロジェクト特定目的会社が校舎を所有する市に土地を転貸する(出典:福岡市「旧大名小学校跡地活用事業公募要綱」)

この公募に対しては、九州旅客鉄道、積水ハウス、福岡地所、それぞれを代表とする民間事業者3グループが提案書を提出。内容評価や価格評価の結果、優先交渉権者に選ばれたのが、積水ハウスを代表とする民間事業者グループである(表1)。

(表1)市の公募で優先交渉権者として選ばれた積水ハウスを代表とする民間事業者グループに属する企業の一覧(資料:福岡市)

このうち、積水ハウス、西日本鉄道、西部瓦斯、西日本新聞社、福岡商事の5社は2018年7月、大名プロジェクト特定目的会社を設立。2018年9月には市との間で事業契約を交わした。現在、設計・施工計画を固めている段階で、2019年度内の着工を目指す。

積水グループの提案で掲げた基本方針は、「グローバル創業都市の新たな拠点『ガーデンスクエア』」。階段状の屋上庭園を持つ国際・文化・情報の交流拠点「アクロス福岡」を天神地区の「東のゲート」と位置付け、そことの対応関係を打ち出した。

それはつまり、アクロス福岡に隣接する天神中央公園と同様、広場を中心に緑豊かな空間を整備し、イベントも開催する市民の憩いの場として活用していく、という提案だ。佐古田氏は「都心のオアシスという位置付け」と説明する(図3)。

(図3)広場側からイベントホールを見たところ。広場に面してオープンな造りで一体利用が可能(画像提供:積水ハウス)