ザ・リッツ・カールトンが進出

広場の運営を担う主体や体制に関しては未定。佐古田氏は「グループ企業のうちイベント運営に実績のある西日本鉄道と西日本新聞社、それに三菱地所を加えた3社を中心に、現在検討を進めている段階」と、現状を明かす。

積水グループでは基本方針として、「4つのシンボルの整備」も掲げる。

「ビッグバンのシンボル」として打ち出したのは、「世界最高級ホテルの誘致」。ブランドとしてザ・リッツ・カールトンの進出が予定されている。東京、京都、大阪、沖縄に続く、国内5カ所目の開業。「国賓など新しいニーズを受け入れていく」(佐古田氏)。

オフィス・ホテル棟19~23階の5フロアに配置される客室は160室規模。広さはいずれも50㎡以上と余裕を持つ。最上階にあたる24階にはルーフトップバーが配置される計画。高さ110mから博多湾への眺望が楽しめるという。

「福岡成長のシンボル」は、「ハイグレードオフィスの整備」である。ワンフロアの広さは約2500㎡。災害対応やセキュリティなど設備面でもグレードの高さを打ち出す。また屋外に出てリフレッシュできる「クリエイティブテラス」や上下階を内部階段で行き来可能な「コミュニケーションボイド」を用意するなど、働き方にも気を配る。

「恵まれた立地条件を持つなど福岡は都市としてのポテンシャルが高い」という佐古田氏。そこに安心できる災害対応を施したハイグレードオフィスを供給すれば需要は見込める、とテナント誘致にも自信をのぞかせる。

「スタートアップのシンボル」としては、「厚みのある創業支援・人材育成環境の整備」を打ち出す。その一つが、コミュニティ棟2、3階の創業支援・人材育成施設。ここには、コワーキングスペースやシェアオフィスを整備する計画だ。広場の一角に広場と一体的に利用できるように整備するイベントホールともに、既存校舎に開設されているスタートアップ支援施設との連携を想定する。

最後は「クロスカルチャーのシンボル」。「世界や地域との多様な交流拠点の整備」である。具体の拠点としては広場やイベントホールのほかにも、オフィス・ホテル棟3、4階に配置されるホテルのファンクションルームやカンファレンス施設が挙げられる。

新しい価値を生み出せるエリアへ

これらのスペースは、MICE機能対応を想定したもの。市内にはウオーターフロント地区に福岡国際会議場やマリンメッセ福岡などMICE機能が集積している。「それらのサブ会場やアフターミーティングでの利用を想定する」(佐古田氏)。

国際会議に目を向けると、全国規模で比べても市内での開催は多い。図4は、国際会議の開催件数の推移を、2017年実績で上位の4都市について見たものだ。福岡は2017年こそ神戸と京都に抜かれたものの、2008年から16年までは東京に次ぐ2位だった。

(図4)主な都市の国際会議開催件数。2017年実績で上位4都市を取り上げ、2008年以降の10年間の推移をたどった(出典:「日本政府観光局(JNTO)国際会議統計」)

しかもMICE機能は、ウオーターフロント地区で今後さらに拡充されていく。市では同地区の再整備事業に向け、目下、基本スキームづくりを進めている段階。2019年2月からは、民間事業者の意見や提案を募る民間サウンディングを実施している。

旧大名小学校跡地活用事業が交流の拠点としてユニークなのは、ローカルとグローバが混在している点だ。

もともと立地していた公民館などの公共施設をコミュニティ棟に移す形で残し、広場では地域の夏祭りや運動会も開催される予定だ。一方で、オフィス・ホテル棟にはザ・リッツ・カールトンが進出し、MICE関連のイベントも開催される。そこにはオフィスを構える企業やスタートアップの関係者も加わるだろう。新しい価値は異質なもの同士の交流からこそ生まれるとすれば、この拠点のポテンシャルは高い(図5)。

(図5)敷地全体構成図。明治通り側からオフィス・ホテル棟の足元を抜けて広場に直接入ることができる造り。開発事業者側では現在、市の都心部機能更新誘導方策(前編参照)を活用し800%までの容積率割り増しを得られるように市と協議中(画像提供:積水ハウス)

天神ビッグバンとは、新しい空間を創出する取り組みだ。ただそれは何も、オフィス空間に限らない。ホテルや創業支援など多様な用途の空間が想定される。さらに、それらの利用者が交流するカンファレンス施設やイベントホールなどの空間も考えられるだろう。この跡地活用事業は、そこに気付かせてくれる。

そうした多様な空間が天神地区に整備されることによって、これまで消費色の濃かった繁華街・天神は、新しい価値を生み出せるエリアへ、と変わっていくに違いない。

ただ、互いに交流し価値を生み出すのは、あくまで人である。

佐古田氏は「人が増えれば、住宅の需要が生まれ、交通の渋滞も考えられる。住宅の供給や交通インフラの整備も並行して進めていく必要がある。オフィスだけ開発されれば成功というわけではない」と、多面的なまちづくりの必要性を訴えている。