国土交通省が今年3月、「国道15号・品川駅西口駅前広場 事業計画」をまとめた。品川駅西口の国道15号上で、2022年以降をめどに人工地盤の整備に着手し、次世代型交通ターミナルなどを設置する計画だ。次世代モビリティを、交通結節機能を担う鉄道駅前にどう取り込み、円滑な乗り換えを促すか――。品川駅前にMaaS(Mobility as a Service)の拠点が誕生する。

鉄道駅との間が比較的近い距離の移動に、シェアリングを前提にした次世代型モビリティの利用が進みそうだ。品川駅西口に2022年以降をめどに整備される次世代型交通ターミナルの計画からは、そうしたモビリティサービスの未来像が読み取れる。

例えば品川駅と近隣施設との間の気ままな移動には、この次世代型交通ターミナルを乗降の拠点とするパーソナルモビリティや超小型モビリティを利用する。

パーソナルモビリティは歩行支援の役割も果たすもので、歩行者と同じく人工地盤上を走行する。超小型モビリティも自動運転技術を用いて人工地盤上で歩行者と共存しながら安全に走行する想定だ(図1)。

(図1)品川駅西口の2階駅前広場では、このセンターコアが歩行者動線の中心軸を形成する。歩行者と自動運転技術を用いたモビリティが共存する想定だ(資料提供:国土交通省東京国道事務所)

注目されるのは、人工地盤上の駅前広場で歩行者とモビリティとが共存するという発想だ。駅前に整備される人工地盤と言えば、歩行者専用で自転車の通行さえ禁じられていた。そうした従来のルールが、ここではがらりと見直される。

品川駅西口でルールが見直されるのは、交通結節点としての機能を向上させるため。国土交通省東京国道事務所副所長の藤坂幸輔氏は「交通結節点として、利用者が円滑に乗り換えられることを重視している」と説明する。

この次世代型交通ターミナルは、品川駅西口を南北に走る国道15号の真上に、国を中心に2022年以降をめどに整備する人工地盤上に設置されるもの。JRや京浜急行電鉄の品川駅の改札階とは、この人工地盤を介して同じレベルで結ばれることになる。

計画の背景には、品川地域の拠点性の高まりがある。品川駅では東海道・山陽新幹線に加え、リニア中央新幹線の開業が決まり、東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線の白金高輪駅との間には地下鉄新設の構想も浮上している。

東京都が2014年9月にまとめた「品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014」では品川駅周辺地域を国際交流拠点と位置付け、(1)国内外のビジネスパーソンの活力にあふれる最も進んだビジネスのまち、(2)世界の人々が集い交わる文化・知の交流のまち、(3)世界に向けた次世代型の環境都市づくりを実現するまち――という将来像が示された。

一方、課題として挙げられるのは、交通結節点としての弱さである(写真1)。

(写真1)品川駅西口。駅前広場に沿って走る幹線道路が、国道15号。この上に人工地盤を整備する。駅の背後にそびえるのは、港南口(東口)のオフィスビル群(写真:茂木俊輔)

AIや自動運転でモビリティを過不足なく供給

駅前広場が狭いため、路線バスの乗降場は周辺の歩道上に分散し、利便性が低い。タクシーの乗降場はあるものの、広場内に進入できない客待ち車両が国道15号の歩道寄りの車線をふさぐこともあるという。

国道15号を横断するには横断歩道や歩道橋を利用するしかないが、将来に目を向けるとそれでは容量面で心もとない(写真2)。「平日1日でいま約11万人が横断している。今後は周辺の開発で倍増する見通し」と、藤坂氏は明かす。

(写真2)品川駅西口と高輪方面を分断する国道15号を渡るには、正面に見える横断歩道を利用するか、撮影位置にあたる歩道橋を利用するかしかない。高輪方面の開発で国道15号の横断者が増えれば、この2つだけでは対応し切れないとみられる(写真:茂木俊輔)

国はこうした課題を克服し、都が掲げる将来像の実現を後押ししようと、この人工地盤の整備と品川駅西口の交通結節機能向上に乗り出したのである。

人工地盤上は、大きく2つのゾーンに分かれる(図2)。一つは、都心寄りに位置する次世代型交通ターミナルとセンターコアと呼ぶ歩行者動線の中心軸になるゾーン。もう一つは、反対側の横浜寄りに位置する賑わい広場と呼ぶゾーンである(図3)。

(図2)品川駅西口の2階駅前広場のゾーニング・コンセプト。2階レベルには次世代型交通ターミナルやセンターコア、それに賑わい広場を設置する一方で、地上レベルでは国道15号を拡幅し、路線バスやタクシーなどの乗降場を整備する(資料提供:国土交通省東京国道事務所)
(図3)横浜側から見た品川駅西口2階駅前広場のイメージ。人工地盤上に交通ターミナルや商業施設などを整備するという、これまでにない造りを見せる(資料提供:国土交通省東京国道事務所)

次世代型交通ターミナルは冒頭に紹介した通り、モビリティの乗降拠点。駅利用者はここでモビリティを乗り降りする。しかし従来の路線バスやタクシーのように、自ら利用する車両をここで長時間待つようなことはない。

それは、次世代型交通ターミナルで乗降するモビリティは、人工知能(AI)を活用した配車システムや自動運転技術によって、常に過不足ないように自動供給されるから。その待機場として、ある程度の台数のモビリティを待機させる「プール」と呼ぶ駐車場を、近隣のビルの地下などに分散配置する。

賑わい広場は、人工地盤上に設置される3~4層の商業施設やイベントスペースなどで構成されるもので、人々が集い、憩う、賑わいの空間として想定されている。帰宅困難者の一時滞留施設など防災拠点としての役割も期待される。

2階レベルではこれらのゾーンがJRや京浜急行電鉄の品川駅と直結するほか、反対側に位置する周辺開発エリアとも接続し、さらに現在開発中のJR高輪ゲートウェイ駅方面まで広域のネットワークを形成する(図4)。

(図4)品川駅周辺エリアでは西口の2階駅前広場を中心にモビリティのネットワークを築く想定だ。その拠点は、次世代型交通ターミナル。エリア内の所々に小規模な乗降場である「デポ」を配置し、南北方向や西方向にネットワークを広げる(資料提供:国土交通省東京国道事務所)