ストレスなく円滑な移動を実現する環境を提供

1階レベルではまず国道15号を西側に拡幅し、現在とほぼ同じ場所で路線バスやタクシーの乗降場を整備するほか、周辺開発エリアと連携したタクシー、ツアー系高速バス、モビリティなどの複合ターミナルの整備も見込む。

事業計画では、品川駅を起点・目的地としているわけではないが、ここで想定するモビリティの活用イメージも具体的に描く(図5)。

(図5)モビリティの活用イメージ。次世代型交通ターミナル、デポ、プールという、性格の異なる3つの拠点間で、人工知能(AI)を活用した配車システムや自動運転技術でモビリティを最適配置するため、利用者は乗り換え地点で待つことなく、円滑な移動が可能になる(資料提供:国土交通省東京国道事務所)
(図5)モビリティの活用イメージ。次世代型交通ターミナル、デポ、プールという、性格の異なる3つの拠点間で、人工知能(AI)を活用した配車システムや自動運転技術でモビリティを最適配置するため、利用者は乗り換え地点で待つことなく、円滑な移動が可能になる(資料提供:国土交通省東京国道事務所)

起点は羽田空港だ。利用者は東京出張前に羽田空港から仕事先のMICE施設まで超小型モビリティの利用を予約する。空港に着くと予約済みのモビリティに乗り込み、MICE施設に向かう。出張に伴う荷物は多目的自動車でホテルに直送。身軽に移動できる。

この多目的自動車も事業計画で想定するモビリティの一つだ。自動運転技術搭載の移動する多目的空間という位置付け。渋谷・六本木や羽田空港などとの間のビジネス・娯楽目的の移動で活用する想定だ。オンデマンドで高齢者や訪日外国人の移動も支援する。

利用者はMICE施設で仕事を終えると、併設の「デポ」から近隣の商業施設までパーソナルモビリティで移動し、友人と買い物や食事を楽しむ。そして再びパーソナルモビリティを利用して近隣のホテルまで移動し、チェックインする、という流れを描く。

「デポ」とは、モビリティが待機する小規模な乗降場。移動の起点や目的地になるホテルや店舗などに併設されるほか、他の交通機関との乗り換えの便を考え、駅の改札口やエレベーター近くなどに配置されることを想定する。

活用イメージから分かるように、利用者はストレスなく目的地であるMICE施設に移動し、気ままな移動にもモビリティの歩行支援を受けることができる。ストレスのない円滑な移動を実現する環境が提供されるようになる。

人工地盤をはじめとする施設整備は公民連携で段階的に進めていく(図6)。

(図6)品川駅西口駅前広場の整備は大きく3つのステップで進めていく。一つの区切りは、リニア中央新幹線の開業見通しである2027年。国土交通省東京国道事務所ではこのころまでをめどに、次世代型交通ターミナルの整備を終えたい考えだ(資料提供:国土交通省東京国道事務所)
(図6)品川駅西口駅前広場の整備は大きく3つのステップで進めていく。一つの区切りは、リニア中央新幹線の開業見通しである2027年。国土交通省東京国道事務所ではこのころまでをめどに、次世代型交通ターミナルの整備を終えたい考えだ(資料提供:国土交通省東京国道事務所)

第1ステップではまず、国道15号沿いに位置する京浜急行電鉄の地平化、国道15号の拡幅による1階駅前広場の整備、人工地盤の都心寄り半分の事業化に着手する。この段階で人工地盤の整備にあたるのは、主に国だ。藤坂氏は「周辺の民間地権者にも相応の負担を求めていく方針」と話す。

2027年をひと区切りに公民連携で段階的に整備

第2ステップでは、1階駅前広場の整備や人工地盤の都心寄り半分で事業完了を見込む。完了時期の想定は、リニア中央新幹線の開業予定である2027年。人工地盤上の次世代型交通ターミナルは、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式を活用し、公募で選定された民間事業者に整備・運営を任せる方針だ。

第3ステップでは、人工地盤の横浜寄り半分を、周辺開発と連動する形で整備する。ここは都心寄り半分と違って民間事業者に直接整備・運営を任せる方針。国道15号という公道の上に民間施設を整備するため、法律上の位置付けは都心寄り半分とは異なる。そのため、2つの異なる構造物を別々に整備し、一体的に利用する形を取る。

課題は、構造物の法律上の位置付けを明確にすることなど、山積みだ。「今後、民間事業者へのヒアリングを重ね、具体化していく」(藤坂氏)。

例えば次世代型交通ターミナルでは、歩行者とパーソナルモビリティや超小型モビリティとの共存をうたうが、具体的に導入するモビリティやネットワークの築き方などはまだ定まらない段階。これらは、次世代型交通ターミナルの整備・運営を任される民間事業者が選定された段階で初めて確定する。「そうした中で安全性をどのように確保していくのかという点も、課題の一つ」と、藤坂氏は指摘する。

一つ確かなのは、移動サービスの利用者が既存の交通機関はもとより、各種のモビリティまで含めて円滑に乗り換え利用できるようにすることを目指す、という考え方だ。そうした目標の達成に向けて、課題は整理されていくことになる。

今後、自動運転技術をはじめ、各種の先端技術を用いたモビリティや配車システムが提案されるようになっていくことは間違いない。そうした移動サービス提供側の提案に都市側としてどう対応していくのか――。MaaS(Mobility as a Service)時代の駅前広場の将来モデルが、ここに示されることになる。