SAVSで新たな移動が誘発される

――SAVSで最適配車を決める場合、道路の混雑状況は勘案されているのですか。

中島 今はまだ勘案されていません。将来、SAVSを利用した車両が街中を走行するようになれば、道路交通状況を計測する「プローブカー」として機能させて、それらが収集するデータを基に道路の混雑状況や降雪による影響を反映させていく予定です。

――これまで全国各地で実証実験に取り組んできました。それらを通してSAVSでの移動サービスの提供に関して何か明らかになった点はありますか。

中島 新たな移動を誘発し、周遊効果を生み出すという点が挙げられます。東京臨海副都心地区や神戸市内などではNTTドコモと同社のオンデマンド交通システム「AI運行バス」の開発に向けて、実証実験を重ねてきました。臨海副都心地区では、東京ビッグサイトでのイベント開催時にこの「AI運行バス」を走らせると、近くの商業施設に多くの来場者が立ち寄ることが分かりました。

神戸市内では、高齢化が進む郊外の住宅地内にこの「AI運行バス」を走らせると、地域内で運行されている巡回バスと違って、利用のピークが朝だけでなく、昼にも夜にも表れました。目的までは完全にはつかみ切れませんが、居住者が出歩くようになったことは確かです。オンデマンドの交通システムとして呼べば来て目的地まで届けてくれるという利便性が評価された結果ではないか、とみています。これらの実証実験はいずれも無償で実施しましたから、その点も大きく影響しているはずです。

モビリティ版インターネット目指す

――オンデマンドでリアルタイムの送迎を支援する、そのSAVSというシステムによって、将来的には何を目指そうとしているのですか。

中島 モビリティ版のインターネットの構築です。インターネットはさまざまなサービスのプラットフォームとして機能しています。それと同じく「SAVS」をプラットフォームとして、飲食、医療、観光など、各種のサービスが展開されていくイメージです(図3)。

(図3)SAVSでは、勘・経験やスケジュールに従った運行をシステムによる運行に切り替え、都市交通・物流の全体最適を目指す。そしてそのプラットフォーム上で、送迎、通院、観光ツアーといったサービスと組み合わせていく(出所:未来シェア)

例えば観光の領域では、JTBと組んでいます。クルーズ船の寄港地でSAVSを利用したモビリティサービスを提供する実証実験も実施しました。乗船客を行きたい観光スポットに送り届けたり、帰船する時に迎えに出向いたりしました。そこでは旅行商品としてパッケージでサービス提供したため、通常は認められない「便乗」も実現できています。

最近、MaaS(Mobility as a Service)という言葉が使われ始めています。その具体例としてよく挙げられるヘルシンキ発のアプリケーション「Whim」では、各種公共交通を一括で利用できる共通のプラットフォームを提供しています。私たちはそのプラットフォームの上にどういうサービスを展開させるかという点を意識し、まずプラットフォームの拡充を進めていきたいと考えています。

提供するサービスとして可能性を最も感じるのは、やはり観光の領域です。私たちにしても、知らない街では街中の移動に不便を感じます。アプリを利用して行きたい場所に気軽に行けるようになればいいですよね。英語版や中国語版なども用意できますから、外国人からすると日本語を話せなくても困らない。この点も非常に便利だと思います。

――今後の展開に向けて、どのような点を課題として意識されていますか。

中島 技術的に足りない点はほとんどないとみています。欠けているものがあるとすると、利用料金の設定に関するノウハウです。これは実稼働に至らないと分かりませんが、年度内にはSAVSを利用した有償のサービスを提供できるようになる見通しです。そこである程度見極められるようになれば、と期待しています。

中島秀之(なかしま・ひでゆき)氏。1983年東京大学大学院情報工学専門課程修了。工学博士。電子技術総合研究所に入所後、産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センター長、公立はこだて未来大学学長、東京大学先端人工知能学教育寄付講座特任教授を経て、現在、札幌市立大学理事長・学長、公立はこだて未来大学名誉学長。研究分野は、人工知能、デザイン学、サービス学。

私たちが研究・開発している技術はまだ社会でフルに活用されていません。一番の障壁は法律です。法律が技術の後追いであることは仕方ないにしても、その間の開きが今後、どんどん広がりやしないか、心配しています。技術の可能性を損なわないような法律に少しでも早く見直されることを願っています。