一体整備の象徴は、「パークライフ・サイト」と呼ばれる商業ゾーンと公園ゾーンの融合するエリアだ。ここでは市有地をソニー・クリエイティブプロダクツに無償貸与し、同社がパークライフ棟とミュージアム棟の2棟を建設した。

パークライフ棟にはまち開きに併せて、「まちライブラリー」や「子どもクラブ」などがオープン。ミュージアム棟にはひと足遅い2019年12月、東京・六本木に立地していた「スヌーピーミュージアム」が倍の規模で開館した。

「まちライブラリー」や「子どもクラブ」は、言わば民間版の図書館や児童館。「スヌーピーミュージアム」では、市の独自事業である「えいごのまちだ」の一環として小学生向け校外学習の機会を提供する。これら3施設の運営責任は文化・観光施設の運営などを手がけるコングレが担う。

「公共が担ってきた機能を民間でも生み出せるなら、そこに挑戦しようという発想に立つ」と辻野氏。ただ、公共が担ってきた機能だけに事業性には期待できない。「まちライブラリー」には市や東急が、「子どもクラブ」には市が資金面で支援するという。

まちそのものがグリーンインフラに

狙いは、にぎわいを生み出すほか、文化交流機能や市民活動支援機能などを導入し、多様な市民活動を誘発することだ。こうした融合ゾーンを置くことは、市が2015年6月に公表した「南町田駅周辺地区拠点整備基本方針」で打ち出していた。

この融合ゾーンを挟んで商業ゾーンと公園ゾーンはいまでは互いに向き合う。駅寄りの高台に位置する商業ゾーンと境川沿いの低地に位置する公園ゾーンは、つづら折れのスロープなどで結ばれる。歩行者中心の広大なまちが、こうして誕生した(写真3)。

(写真3)商業施設「グランベリーパーク」から鶴間公園を望む。間を隔てていた道路を廃止し、商業ゾーンと公園ゾーンを一体の空間として整備した(画像提供:町田市・東急)
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鶴間公園再整備の基本計画・基本設計や商業施設「グランベリーパーク」のランドスケープデザインはともに、Fd Landscapeを主宰するランドスケープアーキテクトの福岡孝則氏が担当。屋外空間のあり方を一体的に提案した。

具体の提案で目を引くのは、「グリーンインフラ」と「パークライフ」だ。

グリーンインフラとは、自然環境が持つ多面的な機能を社会課題の解決に生かす考え方。地面の露出の限られる商業ゾーンではこの考え方に基づき、雨水の一時貯留・浸透を心掛け、下水道施設の負荷抑制につなげる。

具体的には、歩道には透水性舗装を施したほか、その脇には雨水を一時的に貯留し徐々に地中に浸透させる「バイオスウエル」と呼ばれる植栽帯を整備した。またその象徴として、一時貯留・浸透の役目を果たす「レインガーデン」という一角も設置した。

これらの取り組みは、米国グリーンビルティング協会が開発した環境性能評価システム「LEED」でも評価された。市と東急は2019年1月、南町田グランベリーパークの一部を除くエリアに関して新規開発・再開発を対象にした「LEED ND」のゴールド予備認証を取得。2020年、最終認証の取得を目指す。

「バイオスウエル」や「レインガーデン」といった要素技術はもちろん、公園と一体整備されたことも、このまちのグリーンインフラとしての価値。辻野氏は「まちそのものが周辺地域にとってグリーンインフラとして機能するといい」と期待を寄せる。

パークライフがまちの魅力を高める

かたやパークライフとは、鶴間公園の再整備にあたって福岡氏が掲げたコンセプトの一つ。公園の利用によって広がる暮らしの豊かさと言ってもいい。

福岡氏はこう期待する。「公園の利用によって、家族、友人、地域の人とのつながりや、活動の範囲、時間の使い方など、暮らしの幅が広がる。そうした公園の利用を普段の暮らしの中に取り込んで、パークライフを再発見してほしい」。

平日の日中に現地を訪ねると、園内にはペットと散歩する姿や子どもを遊具で遊ばせる姿がみられる。商業ゾーンの手前には内部の様子をガラス越しに見通せる「子どもクラブ」。公園側から様子をのぞき込みながら立ち寄る親子連れも少なくない。

商業ゾーンと公園ゾーンを分ける「パークライフ・サイト」に立地する各施設は、暮らしの幅を広げる一つの要素と言える。とりわけ「まちライブラリー」や「子どもクラブ」には、鶴間公園との間で相互利用が見込まれる。

一方、境川沿いの人工芝グラウンドでは、外周に設けられた鮮やかなブルーのトラックを黙々と走る姿もみられる。地面には走る姿・歩く姿のピクトグラムや矢印などが白で描かれ、利用者の動きを誘う(写真4)。福岡氏が取り入れた「アクティブデザイン」だ。

(写真4)フットサルコート3面に相当する広さを持つ人工芝グラウンドの外周にはトラックを整備。地面には利用者に運動してもらう仕掛けを施した(写真:茂木俊輔)
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「鶴間公園は運動公園。特定の競技スポーツを楽しめるようにすることだけでなく、『誰もが健康になる』ということを実現したかった」と福岡氏。そのため、誰もが自然と体を動かしたくなる仕掛けとして、アクティブデザインを活用したという。

南町田グランベリーパークの原点は、「このまちに住み続けたい、このまちに暮らしたいと思える魅力」を、まちの内外に訴えることにある。「その魅力を感じてもらう狙いから、パークライフを打ち出している」(辻野氏)。

地域のグリーンインフラとしてパークライフの再発見を提案する南町田グランベリーパーク。公民連携で誕生したこのまちが未来に向けて提示するのは、公園というオープンスペースを活用した都市再生の可能性である。

福岡氏は「日本の都市が今後、競争力を高めるには、既存の地域資源を創造的に活用する戦略が必要」と指摘し、地域資源の資産化を訴える。その方向性として掲げるのが、「Livable City(住みやすい都市)」の6つの指標だ(図2)。

(図2)ランドスケープアーキテクトの福岡孝則氏が提唱する「Livable City(住みやすい都市)」の指標。オープンスペースの活用は「Livable City」への有効なアプローチという(資料:福岡孝則氏)
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オープンスペースは誰もがアクセスできる地域資源の一つ。活用の仕方は誰の目にも明らかで、戦略の方向性を感じ取りやすい。そのオープンスペースをどう活用し、「Livable City」としての再生を目指すのか――。まちづくりでは今後、そこが問われていく。