にぎわいの創出や防災などアナログな活動を展開してきたエリアマネジメント。そこにもいま、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せる。東急不動産とソフトバンクはその基盤になるプラットフォームを構築し、今年秋以降の開業が見込まれる「東京ポートシティ竹芝」に社会実装。新規開発の都市型スマートシティが、第一歩を踏み出す。

ランチに繰り出すと、どこの飲食店も満員。さてどうするか――。持ち駒の中で考えを巡らすことが、よくある。そこに、スマートフォンの助けによってまち側から店舗の空席情報が入れば、自分たちで足を使って探し回らずに済む。

「これが、まちの最適化。それを実現できれば、日常をまちで過ごす人の行動が変わり、生産性が上がる」。こう指摘するのは、東急不動産都市事業ユニット都市事業本部ビル運営事業部事業企画グループ課長補佐の花野修平氏である。

新規開発の都市型スマートシティ第1号とも言える「東京ポートシティ竹芝」(写真)では、一つにはこうしたまちの最適化という課題に向き合う。

(写真)「東京ポートシティ竹芝」で今年5月に完成する予定のオフィスタワー。メーンテナントとしてソフトバンクが汐留地区から本社を移す。低層部には、「スキップテラス」と呼ぶ緑に囲まれた空間を整備する(写真撮影:茂木俊輔)
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恩恵を受けるのは、日常をまちで過ごす人に限らない。まちのことをよく知らない来訪者であれば、なおさらだ。

例えば劇場で公演が終わり、まちに繰り出したときにも、目につく飲食店がどこも満員という事態に見舞われることがある。適当な店舗が見つからないからという理由で、早々とそのまちを後にしてしまうことさえ起きうる。

「そこにまち側から適切な情報を提供し、さらに店舗側と組んだ割り引きの仕組みで誘客できれば、まち全体として各事業者のWin-Winの関係をつくれる」。まちを運営する目線を持つ花野氏は、地元関係者と行政機関で組織する竹芝地区まちづくり協議会と連携しながらエリアマネジメントに取り組む一般社団法人竹芝エリアマネジメントの副事務局長という肩書きも持つ。

花野氏が挙げる例はいずれも、デジタル技術を活用したエリアマネジメントの一例。これらを東急不動産では「デジタルエリマネ」と呼び、そのあり方を、夢物語と思えるものまで含め、多様な角度から検討しているという。

エリアマネジメントとしてはこれまで、にぎわい創出や防災などアナログな活動が展開されてきた。スマートシティではそこにデジタル技術が持ち込まれることで、異なる活動が展開されていく。都市のデジタルトランスフォーメーション(DX)と言っていい。

ではいま、東京ポートシティ竹芝ではどのような都市型スマートシティ像が目指されているのか――。ここであらためて、その開発計画をおさらいしておこう。

ソフトバンクとプラットフォームを共創

開発地は、臨海部と都心部の接点とも言える東京・竹芝。同じエリア内では、東日本旅客鉄道が、劇場、商業、オフィス、ホテルで構成する複合施設「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」を、2020年4月以降、段階開業する。

東京ポートシティ竹芝の開発主体は、東急不動産と鹿島建設で設立した事業会社であるアルベログランデ。都有地約1.5haを定期借地契約で借り受け、地上40階建てのオフィスタワーと地上18階建てのレジデンスタワーの2棟を建設する(図1)。

(図1)「東京ポートシティ竹芝」周辺のイメージパース。正面の超高層ビルが、地上40階建てのオフィスタワー。そのすぐ左が、地上18階建てのレジデンスタワー。右手のJR浜松町駅との間は、歩行者デッキで結ばれる(画像提供:東急不動産)
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完成は、オフィスタワーが今年5月、レジデンスタワーが今年6月の予定。開業は2020年と公表するにとどめているが、オフィスタワーのメーンテナントであるソフトバンクが本社を今年秋以降順次移転することから、同時期とみられる。

特徴の一つは、その立地にある。臨海部と都心部の接点とも言えるウオーターフロント。エリア内では先ほど紹介した「WATERS takeshiba」がひと足早く開業し、舟運の活性化にも乗り出す。隣接する芝浦エリアの浜松町ビルディングや浜離宮恩賜庭園の先にある築地エリアの築地市場跡地でも大型開発プロジェクトが計画・検討されていることから、回遊性を高められれば、まちの厚みは確実に増す。

もう一つの特徴は、先端のデジタル技術を社会実装することにある。技術と社会の橋渡しを担うのは、事業者側の働き掛けで2015年4月に設立された一般社団法人CiP(Contents innovation Program)協議会。理事会員と一般会員の計約60者が協議会での活動を通じて「デジタル×コンテンツ」産業の拠点づくりを目指す。活動拠点は、オフィスタワー8階のクリエイションフロア内に置く。

ここに新たに加わるのが、都市型スマートシティ。言葉を換えれば、デジタルエリマネである。その基盤となるプラットフォームを、事業者側の東急不動産とメーンテナントであるソフトバンクが共創する。

ソフトバンクでは「社会課題の解決」をキーワードに掲げ、各地の自治体と包括連携協定を交わしたり、次世代移動サービスのMaaS(Mobility as a Service)事業に取り組む会社としてMONET Technologiesを自動車メーカー各社と共同で設立したりしてきた。都市型スマートシティへの取り組み姿勢は、その延長線上にあるという。

同社デジタルトランスフォーメーション本部第四ビジネスエンジニアリング統括部統括部長の宮城匠氏は、「本社移転のタイミングで都市型の社会課題にも向き合い、その解決を図っていこうという構えだ」と説明する。

スマートシティを掲げるエリアがいまやどこも「個人の幸福」を追求するのと同様、東京ポートシティ竹芝でもやはり、居住者や就労者への価値提供を通じた幸福の追求を目指す。宮城氏は「そうでないと根本的な課題解決には結び付かない。提供するサービスが技術起点に陥らないように注意したい」と気を引き締める。