CiP協議会会員企業との連携にも期待

スマートシティの基盤として構築するプラットフォーム上ではどのようなデータを収集し、どのようなサービス提供に結び付けていくのか――。ソフトバンクIoT技術企画本部IoT技術戦略統括部IoT戦略部テクニカルマネ―ジャーの村山貴一郎氏は自社の社員向け提供サービスの例を挙げる(図2)。

(図2)ソフトバンク社員向け提供サービスのイメージ。「出勤前」から「アフターファイブ」まで赤字で示したさまざまな課題がある。それに対して、青字で示したサービスを提供することをここでは想定している(画像提供:ソフトバンク)
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それは例えば、トイレ個室の空き情報の提供だ。しかも、空き情報の可視化を図るだけでなく、そこからもう一歩踏み込むという。「仮に満室ばかりとすれば、それを伝えても意味がない。上下階のトイレの空き情報も併せて伝え、代替案を提示する」(村山氏)。

つまり、プラットフォームで収集した情報を基に、アプリケーション側でサービス提供者に最適な行動を提案する。村山氏は「提供サービスの例をより多く積み重ねていくことで、ビルやまちの利便性を高め、個人の幸福にもつなげていく」と、将来を展望する。

そこで行動提案まで意図する以上、提供サービスの基になるデータにはリアルタイム性が求められる。「それを損ねないように、必要なデータ処理は可能な限りプラットフォーム側で済ませ、アプリ側の負担軽減を図る」(村山氏)。

プラットフォーム上のデータを活用するサービス提供者には、オフィスタワーの管理者はもとより、テナント企業も含まれる。ソフトバンク自身、社員向けのイントラネット上でデータを活用することになる。

エリアマネジメント団体も、その一つ。防災を例に取れば、アプリを開発するか否かは別として、情報共有に役立てられる。花野氏は「まちなかにセンサーを設置できれば、それを通して災害時の人の滞留状況や道路の危険状況などを可視化できる。そうした情報を共有するなど、エリアの防災機能を高める仕組みを構築したい」と話す。

活用範囲は幅広い。「サードパーティーのアプリにもプラットフォームからデータを提供する。それを積極的に広報し連携を図っていく」と、村山氏は意欲を見せる。いわゆるAPI(Application Programming Interface)連携だ。データを幅広く活用してもらい、「みんなでまちをつくっていく」という発想に立つ。

連携先として有力なのは、CiP協議会の会員企業だ。「API連携でプラットフォーム上のデータを活用してもらったり技術連携を進めたりすることで、新しいサービスが生まれるまちになるといい」。花野氏はそう期待を寄せる。

芝浦、浜松町、築地への展開もにらむ

ソフトバンクではこの3月から次世代通信規格「5G」を用いた商用サービスの全国展開を、まず都市部を皮切りに開始した。竹芝エリアでも5Gの通信環境が整えば、まちなかで収集し活用を図るデータのリアルタイム性の確保にも有利に働く。

ただ具体像はまだ描けていない。「5Gの特性を生かすセンサーはまだない。まずは足元でできることから、人に寄り添った目線でテクノロジーを配置し、最終的にそれらが5Gの通信環境で結ばれることになる。どういう価値を提供できるか、東急不動産とチャレンジを積み重ねていきたい」。宮城氏はこう展望する。

プラットフォームを活用したデジタルエリマネをどう展開していくか、ビジネスモデルの構築は、目下協議中の段階という。「センサーを誰が設置するか、どこまでのデータをプラットフォームで取り扱うか、それらのデータを誰が管理しどう活用するか、全体像を現在詰めている」(宮城氏)。

デジタルエリマネを構想する東急不動産の花野氏も、プラットフォームを通したデータ活用にマネタイズの可能性を見いだしつつ、「それをまちづくりにどう生かすか、スマートシティの具体像は今後、PoC(概念実証)を重ねながら固めていきたい」と話す。

その想定エリアは、竹芝エリアでエリアマネジメントの範囲とされている約28haの区域(図3)。東急不動産ではソフトバンクや竹芝エリアマネジメントとともに、エリア内での展開を図っていくという。

(図3)「東京ポートシティ竹芝」を中心とする約28haの区域が、竹芝地区のエリアマネジメントで想定する範囲。まずはここで「デジタルエリマネ」の展開を目指す(画像提供:東急不動産)
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竹芝エリアで事業性を検証した後にはさらに、周辺エリアへの展開も目指す。東急不動産都市事業ユニット都市事業本部ビル運営事業部事業企画グループグループリーダーの田中敦典氏はこう期待を語る。

「ここでプラットフォームを構築し、開発したサービスを実証する。そこで事業性の認められたものは、渋谷などのまちづくりに生かしていきたい。プラットフォームを競争力の高いものに育て上げ、芝浦、浜松町、築地など、周辺エリアにも展開していきたい」

竹芝エリアをモデルにしたいという思いはソフトバンクも共通だ。宮城氏は事業としてのスマートシティへの取り組みをこう冷静に見つめる。

「ここをフィールドに都市型スマートシティのモデリングに取り組む。PoCを重ねながら、社会課題の解決へのソリューションが見えてきたら、それを展開していく。事業者としてどういう価値を提供できるか、事業性を見極めていきたい」