規制緩和を背景に、公共空間の民間開放が進んでいる。人を呼び込み、にぎわいを創出し、地域を再生していく狙いだ。さまざまなビジネスチャンスを生み出すその民間開放に、東京都も取り組む。河川沿いの店舗を河川側にせり出させる「かわてらす」の社会実験を、日本橋川や隅田川で展開する。

「かわてらす」とは言うなれば、京都の夏の風物詩、鴨川納涼床の東京版である。起源をたどると近世初頭にまでさかのぼるという鴨川納涼床とはさすがに成り立ちは異なるが、河川沿いの店舗を河川側にせり出させる造りは共通だ。

鴨川納涼床のにぎわいからもわかるように、空を広く見渡せる開放的な水辺で飲食・歓談するのは心地いい。とりわけ夏場の夕方から夜にかけては、涼風が水上を渡り、街灯が川面にきらめき、夕涼みにもってこいの場所になる。

東京都はその「かわてらす」を飲食店舗に設置する民間事業者を公募し、2013年度から社会実験に取り組む。

第1弾は、日本橋川に架かる日本橋を中心とする一帯である。2014年3月、民間事業者としてジェイプロジェクトを選定した。同社は日本橋の近く、江戸時代には魚河岸のあった場所で「日本橋室町豊年萬福」を運営する。

今年7月には、隅田川に架かる駒形橋と厩橋の区間で第2弾も動き始めた。公募で選ばれたのは、フランス料理店「Nabeno-Ism(ナベノイズム)」を運営するシスコと、食堂・居酒屋「ボン花火」を運営するバルニバービの2つの民間事業者。ともに、東京スカイツリーを望み、隅田川の花火を見上げる立地である(図1、2)。

(図1)隅田川沿いの店舗側から見た「かわてらす」のイメージ(画像提供:東京都)
(図2)隅田川のテラス側から見た「かわてらす」のイメージ(画像提供:東京都)

「水辺利用の機運が高まり、規制が緩和されてきたという政策の流れを背景に、恒常的なにぎわいを生み出したい」。東京都で社会実験を担当する建設局河川部低地対策専門課長の冨澤房雄氏は取り組みの狙いを説明する。

「規制」とは河川法である。河川沿いは一般に、河川管理者が河川敷地として管理する、言わば公共空間にあたる。そこを誰かが排他的・継続的に利用するには河川管理者の許可を必要とする。許可に対するルールは許可準則で別途定める。

ところがこの許可準則では原則、河川敷地内を排他的・継続的に利用する占用施設を公的主体の運営する公共性・公益性のあるものに限定し、民間事業者の運営する民間施設は想定していなかった。河川敷地内は原則、民間事業者は利用できなかった。

地域の合意あれば占用可能に

それが、民間事業者の利用を認める方向で改められる。狙いは、都市や地域の再生。河川敷地を水辺空間として活用しようという民間事業者の意向に応えたものだ。

2004年3月には、占用施設に広場やイベント施設を加え、飲食店やオープンカフェなどの工作物を一体として設置することを国が指定した区域で認めるよう、特例措置を講じた。指定区域は大阪市の道頓堀川や広島市の京橋川など全国8カ所にのぼる。

2011年3月には、社会実験向けの特例として定めたこの緩和措置を、国の指定区域に限らず、全国の河川に広く適用するように許可準則を改めた。ただし占用許可の前提として、公平性・公益性の確保という観点から「地域の合意」を掲げる。

「かわてらす」は、防潮堤の外側に設置された管理用通路の上部空間、つまり河川敷地上に店舗をせり出させる造りのため、河川法に基づく占用許可が必要になる(写真1)。それを、期間を2年に限った一時占用として認めるのが、東京都の社会実験である。

(写真1)「かわてらす」は管理用通路の上部空間に店舗をせり出させる(画像提供:東京都)

「許可準則上は『地域の合意』を前提に占用を認めることになる。ところが、その『地域の合意』を確認する手立てがない。そこでまず、社会実験という形で取り組んだ」(冨澤氏)。社会実験を通じて「地域の合意」を見定め、継続しても問題ないと判断できれば、実験期間終了後は許可準則に基づく占用許可を与えるという二段構えで臨む。

ポイントは、隣近所など周囲に迷惑がられることなく、人を呼び込み、にぎわいを生み出せるかという点だ。商業ビルばかりが並ぶ区域ならともかく、その間に民家も混在する区域ともなれば、騒音やプライバシー侵害の訴えも出かねない。

東京都では社会実験を通じた検証の視点として大きく2つの点を挙げる。

第一は、地域貢献策である。「『かわてらす』の利用客にアンケート調査を実施し、利用の感想や魅力を尋ねる一方で、店舗で主催するイベントの回数・参加人数や清掃や緑化などへの取り組みを定性的に判断し、貢献策を検証する」(冨澤氏)。