固定費を背負う飲食店舗の弱点がコロナ禍で露わになった。その一方で、都市インフラとしての可能性を感じさせたのが、フードトラックだ。車道と歩道の間の空間の柔軟な活用を国が検討する中、出店の場は公共空間にも広がる見通しだ。飲食事業者とビルオーナーらの間でプラットフォームビジネスを展開するMellow代表取締役の森口拓也氏に事業の現在と未来を聞いた。

――飲食物の移動販売車「フードトラック」の開業支援にも乗り出しています。どのような手応えを感じていますか。

森口 もともとはフードトラックで独立開業しようという事業者が多くを占めていましたが、最近は、今年3月以前に比べ飲食店舗からの問い合わせが増えています。経営破綻後、業態をフードトラックに転換しようという事業者も見られます。

固定店舗の場合、賃料は通常、2年に1度の更新でその2年間は固定です。しかも事業者が出店する前に、その金額を決めます。これに対してMellowのビジネスモデルでは、事業者から売り上げの15%を受け取り、そのうちの数%分はフードトラックの出店スペースの提供者に支払う仕組みです。つまり、売り上げに応じた変動制で、出店後に結果として金額が決まります。その仕組みが事業者にリスクの低減をもたらします(写真1)。

(写真1)Mellow代表取締役の森口拓也氏。プラットフォーマーとして大事にしたいのは、事業者の思いやこだわりを持続可能な仕組みで利用者に届けていくこと。それを通じて、まちにバリエーションやばらつきを持たせ、まちを豊かにしていきたいという(以下、人物写真の撮影は尾関裕士)
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――主力事業であるフードトラック・プラットフォームとはそもそも、どのようなビジネスなのですか。フードトラックの台数は増えていると聞きます。

森口 少子化を背景に顧客の減少が見込まれる飲食業界への参入にはみなさん慎重です。インターネットが普及する以前と違って、いまはネット上で「飲食店 開業」をキーワードに検索し、店舗経営の厳しさを事前に情報収集できます。その結果として、フードトラックという道を選ぶ新規開業者が増えています。東京都福祉保健局の資料によれば、営業許可を取得したフードトラックの台数はこの10年で倍という伸びを見せています。

出店スペースは原則、私有地です。Mellowの例で言えば、オフィス街に立つビルの足元の空地を確保するのが一般的です。テイクアウトのニーズが高そうな場所に空きスペースがあれば、持ち主に交渉することも多くあります。地域展開は東京中心ですが、最近は関西や福岡にもエリアを広げています。2020年5月現在、出店スペースは計148カ所で1日当たり248台稼働分に達しています(写真2)。

(写真2)東京都品川区内のビルの一角に出店するフードトラックの例。4店舗が出店し、1日当たりの平均食数は250に上るという(画像提供:Mellow)
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私たちはフードトラックの事業者と出店スペースの持ち主の間に立ち、フードトラックと出店スペースをマッチングします。それによって与信の一元化とオペレーションコストの集約化を図ります。事業者や持ち主に対して、そこで価値を提供しています。

さいたま市や豊中市と包括連携協定

さらに大きな役割は、出店スペースという「場」の価値を上げることです。

フードトラックは固定店舗と違って、厨房設備に限りがあります。そのため、提供できる料理の幅にも限りがあり、利用者を飽きさせかねません。そこで、毎日違うジャンルの料理を提供できるようにフードトラックを配車するなど、バリエーションを豊かにする工夫が求められます。そこに、私たちの出番があります。見た目も重要ですから、出店スペースのデザインプロデュースやフードトラックの外観に関する指導も実施しています。

利用者に向けては、スマートフォン用のアプリケーションを提供しています。そのアプリを利用すれば、いつどこにどのようなフードトラックが出店するのか、知ることができます。固定店舗と違って、フードトラックは、いつどこに出店するのか、部外者にはつかみようがありません。プラットフォーマーだけが提供し得る情報なのです。

――フードトラックの利用者には、どのような点が支持されているのですか。

森口 「バリエーション」と「ばらつき」とみています。コスト構造上、冒険をしやすい。エッジの利いた攻めた商品も成り立ちやすいのです。フードトラック全体として、バリエーションの豊さを打ち出せます。またコンビニエンスストアや全国チェーンの店舗と違って、規格化されていない良さがあります。それが、「ばらつき」の魅力です。

もう一つ、純粋に便利という点も挙げられます。コンビニに並ぶのとそう変わらない手間で、「レンチン」で済ませる弁当とは異なる、出来立てで添加物のない食事を楽しむことができます。どんな人がどんなこだわりを持って作った料理なのか、フェイス・ツー・フェイスで届けられる価値も、大きいと思います。

――今年6月、さいたま市との間で包括連携協定を締結しました。自治体との連携はさらに、大阪府豊中市にまで広がっています。どのような役割が求められているのですか。

森口 一つは、災害時の支援です。東日本大震災の時、フードトラックの中には、その機動性を生かし支援に向かおうとしたものの、どこに向かえばいいのか、日ごろ接点のなかった自治体からの情報を得られず、支援にあたれなかったという苦い経験を持つ事業者がいる、と聞いています。災害時の支援には、普段から自治体と関係性を築いておくことが大事です。協定の狙いの一つは、そこです。