車両EV化と非接触充電システムを

私たちは一方で、災害時フード支援ネットワーク「フードトラック駆けつけ隊」をすでに組織しています。賛同事業者は約200社に上ります。千葉県で2019年9月に発生した台風15号による大規模停電時には、被災地域の行政と連携し、8日間で合計32事業者のフードトラックを派遣し、延べ4000食を無償提供した実績を持ちます。

――さいたま市との包括連携協定では、「産業・経済の振興、地域雇用の創出に関すること」という項目が最初に挙がっています。

森口 はい。市内の飲食事業の開業・営業を支援する役割を担います。自治体として市民の満足度を上げ、人口を増やしたい。それには、にぎわいのある、個性豊かなまちをつくっていく必要があります。ところが、飲食事業者にとって今の事業環境は厳しい。このままでは、まちが全国チェーンの店舗ばかりで埋め尽くされかねません。そこで、私たちの開業・営業支援の下でモビリティビジネスを創出し、公共空間を活用した市民サービスの向上やエリア価値の向上を図ろうという狙いです(図1)。

(図1)さいたま市との包括連携協定に基づく連携イメージ。具体的な取り組みとして、(1)市内飲食事業者に向けたフードトラック事業への開業・業態多角化・転換支援、(2)新たなモビリティビジネスの事業者育成、(3)フードトラックネットワークによる被災者支援、(4)市内農家と食材のマッチングによる地域農産物の販路拡大・利用促進、(5)公共施設の空きスペースを仕込み用キッチンとして活用、(6)公園などの公共空間を出店スペースとして活用――といった施策の実施を検討するという(資料提供:Mellow)
(図1)さいたま市との包括連携協定に基づく連携イメージ。具体的な取り組みとして、(1)市内飲食事業者に向けたフードトラック事業への開業・業態多角化・転換支援、(2)新たなモビリティビジネスの事業者育成、(3)フードトラックネットワークによる被災者支援、(4)市内農家と食材のマッチングによる地域農産物の販路拡大・利用促進、(5)公共施設の空きスペースを仕込み用キッチンとして活用、(6)公園などの公共空間を出店スペースとして活用――といった施策の実施を検討するという(資料提供:Mellow)
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――公共空間の活用と言えば、車道と歩道の間にあたる路側を時間帯によってさまざまな用途に使い分ける「カーブサイド・マネジメント」の導入を国が検討しています。出店スペースは、そうした公共空間にまで広がっていきそうですね。

森口 非常に興味深い話です。フードトラックの出店を想定すると、ハードの整備も同時に検討してほしいですね。具体的には、電気自動車(EV)向けの非接触充電システムです。フードトラックの車両には厨房設備用にエネルギーが不可欠です。現在は、ガソリンで発電する発電機や出店スペースのビルから電源を確保しています。ガソリン発電機は臭いと音の問題がありますから、できれば使いたくない。フードトラックの車両がEVになり、道路に非接触充電システムが設備されるようになるのが、一番です。道路空間の活用がエリア内の居住者や就労者にとって「場」の価値の向上に結び付くことを願っています。

業種を広げ、各地に停留所をつくる

――先ほど、その「『場』の価値を上げる」ことを自社の役割として挙げていました。それをどこまで果たせているか、現状の評価を聞かせください。

森口 自己評価は、今はまだ高くありません。フードトラックの出店している日中の時間帯はいいとしても、それ以外の時間帯は何もないのが普通です。「場」としての価値を残念ながらまだ高められていません。利用者から「ランチの時に来るフードトラック、おいしいよね」という声が上がる程度です。

利用者との関係をもっと深め、プラットフォームとしての存在感を増していきたいと考えています。例えば、同じ出店スペースに、昼はフードトラック、夜はネイルサロンを出店する。そうすると、ランチ購入者にはネイルサロンの割引を適用するなど、昼の時間帯から夜の時間帯への送客も考えられます。将来はこのように、プラットフォームを飲食事業以外にも広げ、その多層化を目指します。

業種の広がりはすでに出始めています。今年6月には、豊洲市場の仲卸業者と連携し、「お魚販売モビリティ」のトライアル営業を始めることを発表しました(写真3)。

(写真3)今年6月、東京・有明でトライアル営業に踏み切った「お魚販売モビリティ」。販売事業には老舗仲卸業者である泉久食品(東京都中央区)が乗り出す(画像提供:Mellow)
(写真3)今年6月、東京・有明でトライアル営業に踏み切った「お魚販売モビリティ」。販売事業には老舗仲卸業者である泉久食品(東京都中央区)が乗り出す(画像提供:Mellow)
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コロナ禍でご自宅での食事ニーズが高まることに対応しようと、臨海部エリアのタワーマンションや高齢世帯の多い東京都北区の住宅団地に出店スペースを広げる中、移動販売に対する期待を利用者にヒアリングする機会を得ました。話をお聞きすると、青果店、鮮魚店、パン店、花店などにも来てほしいという声が上がりました。ヒアリングを通じて、日常生活を支える物販の移動店舗ニーズも相当数あることが分かっています。

森口拓也(もりぐち・たくや)氏。1992年生まれ。早稲田大学在学中(2013年)にALTR THINKを創業。データ分析を駆使し100万⼈以上が使うチャットアプリを複数開発後、上場企業へ売却。企業のデータ分析基盤構築など多くのプロジェクトに携わった後、Mellowの創業に参画。2018年11月から現職。ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ・オペレーション、すべての文脈でショップ・モビリティ市場を成長させるため奮闘している
森口拓也(もりぐち・たくや)氏。1992年生まれ。早稲田大学在学中(2013年)にALTR THINKを創業。データ分析を駆使し100万⼈以上が使うチャットアプリを複数開発後、上場企業へ売却。企業のデータ分析基盤構築など多くのプロジェクトに携わった後、Mellowの創業に参画。2018年11月から現職。ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ・オペレーション、すべての文脈でショップ・モビリティ市場を成長させるため奮闘している
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――今年6月にはまた、あらゆるショップ・モビリティの停留所をつくっていく「SHOP STOP」構想を発表されました。多層化するプラットフォームをタテに貫く軸になるのが、この構想という位置付けですね。

森口 そうです。「SHOP STOP」とは簡単に言えば、バス停の移動店舗版です。まちなかに停留所を設置し、例えば朝はコーヒーショップ、昼はフードトラック、夜はヘアサロンというように、時間帯別にそこにさまざまなショップ・モビリティが立ち寄るイメージです。バス停と同じように、いつどのような業種のショップが来るのかが分かるように、そこには時刻表も掲げたいと考えています。

当面は私有地から取り組み始めます。「SHOP STOP」に公共的な価値を持たせることができれば、そのフィールドを道路空間にも広げられそうです。今後は、「SHOP STOP」を各地に広げていくと同時に、ショップ・モビリティの種類や台数を増やしていきます。