電車の待ち時間にスケジュール帳を開き、予定を確かめながら電話する。移動中に掛かってきた電話での求めに応じて、必要な資料をメールですぐ送信する――。こんなとき、仕事用にちょっと利用できるスペースを、東京地下鉄が銀座線の一部の駅に試験設置している。働き方改革が叫ばれる時代。将来に向け、こうした都市インフラの整備が進みそうだ。

まちなかをあらためて見回すと、オフィスの外で仕事をしている人の多いこと。カフェでじっくり取り組むのはもちろん、移動中に駅や道端でちょっと電話を、ちょっとメールを、というビジネスパーソンの姿は少なくない。

確かに、スマートフォンやノートパソコンが手元にあれば、仕事の場所を選ばない。作業効率を考えれば、電車の待ち時間など移動中のすき間時間はうまく利用したい。いちいちオフィスに戻ることなく、外で用件を済ませられれば、ムダを省ける。

問題は、「場」だ。たかが電話1本、メール1本なら、手軽に利用できるファストフード店が目の前にあっても、わざわざ入る気にはなれまい。とはいえ、電話でやり取りするだけならともかく、例えば資料を確認しながらになると、屋外ではつらい。

実際、駅のホームや道端にしゃがみ込んで、スマホやパソコンを利用するビジネスパーソンの姿を目にする。ベンチでもあれば、そこに座ってひざの上をデスク代わりに使えばいいのだが、肝心のベンチが、駅のホームはともかく、道端にはほとんどみられない。

オフィスの外でも快適に仕事ができる環境。それはいま、都市インフラに求められる一つの要素と言える。働き方改革が叫ばれ、公衆無線LAN(Wi-Fi)やコンセントを自由に利用できる環境が整備される中、「場」が課題として浮かび上がる。

そうした場の一つとして、東京地下鉄が東京メトロ銀座線の3つの駅に試験設置するのが、「エキナカワークスペース」である。表参道駅と溜池山王駅では今年3月から、銀座駅では4月から供用を始め、今年12月までにこうしたスペースへのニーズやその使われ方を検証していく予定だ。いずれも無料で利用できる。

独立感のある木製ブースには鏡も

試験設置という事情もあって、3つの駅にはそれぞれ異なるタイプのワークスペースを置き、その反響を探っている。

溜池山王駅の改札口近くとホーム上に試験設置するのは、不燃加工を施した木製ルーバーで周囲を囲うブース型のタイプである(写真1・2)。腰くらいの高さにノートパソコンを置ける広さの天板が固定され、そこをデスク代わりに使える。

(写真1)溜池山王駅の改札口近くに試験設置されたエキナカワークスペース。黒っぽく見える正面の支柱部分に、コンセントが備え付けられている。鏡付きのブースは、その支柱部分に細長い鏡が取り付けられている(画像提供:東京地下鉄)
(写真2)溜池山王駅の銀座線ホーム上に試験設置されたエキナカワークスペース。ブースの造りは改札口近くに設置されたものと同じ(画像提供:東京地下鉄)

木製ルーバーで囲まれているため、ブース内は独立感があって、ホーム上でも落ち着く。天板の下に備え付けられているフックにカバンを掛ければ、天板を広々と使うことも可能だ。正面には、天板のやや上にコンセントが備え付けられている。

粋な計らいとうなったのは、幅3~4cmほどの縦長の鏡が正面の支柱に取り付けられているブースも用意されている点だ。ここなら鏡で身だしなみをチェックしていても、いかにも鏡を見ているという感じを周囲に抱かれずに済む。

表参道駅のホーム上に試験設置するのは、ベンチと一体になっているカウンターデスク型のワークスペースである(写真3)。不燃加工を施した木材を用いたデザインは溜池山王駅のものと共通だが、造りはシンプル。カバン掛けはあるもののコンセントはない。

(写真3)表参道駅の銀座線・半蔵門線ホーム上に試験設置されたエキナカワークスペース。ベンチと一体型のカウンター付きで、その下にカバン掛けは備え付けられているものの、コンセントはない(画像提供:東京地下鉄)※銀座線渋谷駅の移設工事に伴って、現在は一時的に使用できない

地下鉄で移動中にスマホで確認したメールに資料を添付し、急いで返信したい。しかしホームに降り立つと、ベンチはあいにく先客で埋まっている――。そんなとき、このカウンターをデスク代わりに使えば、用件はすぐに済ませられる。

溜池山王と表参道の2駅に試験設置されたワークスペースが立ったまま使用するタイプであるのに対し、銀座駅で定期券売り場内に試験設置されたものは腰を下ろしてじっくり使用するタイプ。コンセント付きのデスクとイスを6人分、用意する。