イノベーションが求められる時代、都市部の拠点開発では共創の場づくりが進む。JR大阪駅前で2024年夏に先行まちびらきを予定するうめきた2期地区の開発プロジェクトを手掛ける事業者がその第一歩として仕掛けるのが、「うめきた外庭SQUARE」である。ここで培ったリソースやノウハウを、地区内に整備するオープンスペースの管理・運営に生かす。

共創の場が、ビル内の限られた一角から屋外のオープンスペースにまでにじみ出しつつある。キーワードは、快適×開放。その結果として期待される多様な人の集まりが、オープンイノベーションを生み出す環境を創出する。

屋外オープンスペースを働く場とする発想は決して新しくない。オフィスビルの足元に広がるオープンスペースで実証実験に挑んだ例もある。最近では、屋外オープンスペースでテレワークの光景もみられる。快適×開放の価値が、そこにも表れる。

ただ共創の場となると、まだまれだ。屋外空間での活動もイノベーションに結び付けるという文脈では、三菱地所がおひざ元の東京・大手町・丸の内・有楽町(大丸有)地区でエリア全体をオープンイノベーションの場と位置付けた取り組みを展開する程度だ。

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が阪急電鉄をはじめとする民間9社をパートナー事業者に迎え、JR大阪駅前の北側に広がるうめきた2期地区開発プロジェクトの隣接区域で2020年7月に開設した「うめきた外庭SQUARE」は、そうした共創の場づくりに向けた第一歩とも言える試みだ(図1、写真1)。

(図1)独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)がパートナー事業者9社とともに2020年7月に開設した「うめきた外庭SQUARE」。グランフロント大阪と梅田スカイビルの間を結ぶ歩行者用通路を挟んで、人工芝のゾーンと天然芝のソーンに分かれる(資料提供:うめきた外庭SQUARE運営事務局)
(図1)独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)がパートナー事業者9社とともに2020年7月に開設した「うめきた外庭SQUARE」。グランフロント大阪と梅田スカイビルの間を結ぶ歩行者用通路を挟んで、人工芝のゾーンと天然芝のソーンに分かれる(資料提供:うめきた外庭SQUARE運営事務局)
[画像のクリックで拡大表示]
(写真1)「うめきた外庭SQUARE」。人工芝のゾーン「ノースラボ」には、運営パートナーとして関わる西尾レントオールが、公道を移動できる工作物である同社の「トレーラーBOX」を活用した管理事務所やラグジュアリートイレを設置している(写真:茂木俊輔)
(写真1)「うめきた外庭SQUARE」。人工芝のゾーン「ノースラボ」には、運営パートナーとして関わる西尾レントオールが、公道を移動できる工作物である同社の「トレーラーBOX」を活用した管理事務所やラグジュアリートイレを設置している(写真:茂木俊輔)
[画像のクリックで拡大表示]

2期地区は、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)開催の前年、2024年の夏に先行まちびらきを予定する拠点開発区域。UR都市機構が区域を中心とする一帯の基盤整備を進め、同機構が公募で選定した土地譲受事業者が建築物を建設していく(図2、写真2)。この土地譲受事業者9社のうち8社が、外庭SQUAREのパートナー事業者にも名を連ねる。

(図2)うめきた2期地区。地区の中央部に都市公園を、南北の両端に建築物を整備する。地区内の土地を譲り受け、建築物を建設する開発事業者は、代表企業の三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急電鉄、三菱地所レジデンス、大林組が出資するうめきた開発特定目的会社の9社※2020年12月時点のイメージで、今後変更になる可能性がある(資料提供:うめきた2期地区開発事業者)
(図2)うめきた2期地区。地区の中央部に都市公園を、南北の両端に建築物を整備する。地区内の土地を譲り受け、建築物を建設する開発事業者は、代表企業の三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急電鉄、三菱地所レジデンス、大林組が出資するうめきた開発特定目的会社の9社※2020年12月時点のイメージで、今後変更になる可能性がある(資料提供:うめきた2期地区開発事業者)
[画像のクリックで拡大表示]
(写真2)グランフロント大阪側から、うめきた2期地区南半分を見る。土地区画整理事業やJR東海道線支線地下化事業・新駅設置事業といった基盤整備工事のほか、一部の建築物ではすでに建設工事が進められている。全体開業は2027年度の見通し(写真:茂木俊輔)
(写真2)グランフロント大阪側から、うめきた2期地区南半分を見る。土地区画整理事業やJR東海道線支線地下化事業・新駅設置事業といった基盤整備工事のほか、一部の建築物ではすでに建設工事が進められている。全体開業は2027年度の見通し(写真:茂木俊輔)
[画像のクリックで拡大表示]

このメンバー構成にも表れているように、外庭SQUAREは2期地区の開発プロジェクトとも深く関わる。パートナー事業者に名を連ねる土地譲受事業者らは、区域内にUR都市機構が整備し、完成後は自ら管理・運営を担う見通しの都市公園約4.5haを中心に、外庭SQUAREで培ったリソースやノウハウを生かしていく。共創の場づくりに向けた「第一歩」というのは、将来の管理・運営に向けた布石という意味だ。

パートナー事業者を代表する阪急電鉄の業務代行にあたる阪急阪神不動産開発事業本部うめきた事業部部長の橋本英仁氏はこう期待をにじませる。

「企業が互いの枠を超え、オープンイノベーションによって新しい価値を生み出そうとする取り組みは、今後ますます重要になる。都市公園を中心とするオープンスペースには、家庭でも会社でもない『サードプレース』が求められる時代だけに、多様な人が集まるはず。オープンイノベーションを促す役割を発揮できる場所になるに違いない」

コンセプトは、「みどり」のリビングラボ

UR都市機構とパートナー事業者が共創の場づくりへの第一歩として手掛ける外庭SQUAREとは、どのような施設なのか――。

開設場所は、空中庭園展望台で知られる超高層ビル「梅田スカイビル」の足元(写真3)。2期地区とは、JR大阪駅寄りに移設・地下化される予定のJRの線路で隔てられた一角に位置する。広さは約2300㎡。2期地区を中心とする一帯の基盤整備完了後はその区域内の民間地権者やUR都市機構が権利を取得する見込みの土地だが、将来の用途は未定だ。

(写真3)「うめきた外庭SQUARE」の全景。右手、足元の見える黒っぽいビルが、梅田スカイビルだ。JR大阪駅側から現地に向かうときは、手前の歩行者用通路を右に折れ、地下に下ってJRの線路を潜り抜け、外庭SQUAREの2つのゾーンの間に出る(写真:茂木俊輔)
(写真3)「うめきた外庭SQUARE」の全景。右手、足元の見える黒っぽいビルが、梅田スカイビルだ。JR大阪駅側から現地に向かうときは、手前の歩行者用通路を右に折れ、地下に下ってJRの線路を潜り抜け、外庭SQUAREの2つのゾーンの間に出る(写真:茂木俊輔)
[画像のクリックで拡大表示]

JR大阪駅方面との間は現在、2期地区を東西に横断しJRの線路の下を潜り抜ける地下道で結ばれる。基盤整備工事の工程上、この地下道は2023年3月まで通行可能であることから、UR都市機構では2020年7月から2023年3月までの1000日間にわたり、この土地を共創の場づくりへの第一歩として活用することを決めた。

コンセプトは、「みどり」のリビングラボだ。リビングラボとは、社会課題に企業と市民が取り組み、新しいサービスや製品を共創するオープンイノベーションの場と言えるもの。「リビング」という言葉に表れるように、生活の場でもある。「みどり」という言葉は「イノベーション」とともに、2期地区のまちづくりの目標として掲げられた。「『みどり』と『イノベーション』の融合」という目標である。

どのような考え方でこの目標が定められたかを説明する前に、うめきた地区全体の開発プロジェクトについて簡単に紹介しておこう。

うめきた地区は旧国鉄跡地。広さは約24haにも及ぶ。しかも、西日本最大のターミナルでもある大阪・梅田エリアに隣接する一等地。都市間競争が激化する中、この地区の開発は関西圏の発展をけん引するリーディングプロジェクトとして期待が寄せられた。

UR都市機構が地元大阪市の要請を受け、コーディネーター業務を引き受けたのは、2002年1月。以降、地元とともに都市再生プロジェクトとして業務に取り組み、先行開発区域と呼ばれる1期地区の開発プロジェクトでは、基盤整備や民間誘導の役割を担った。こうして2013年4月にまちびらきを迎えたのが、「グランフロント大阪」である。

続く2期地区の開発プロジェクトでは、UR都市機構が再び基盤整備や民間誘導の役割を担う。基盤整備には大阪市や西日本旅客鉄道も加わり、外庭SQUAREとの間を隔てるJRの線路を移設・地下化し、JR大阪駅に近接する地下に新駅を開業する予定だ。開業は2023年春の見通し。この新駅によって、北は新大阪、南は関西国際空港という、大阪圏の2つの玄関口と直結され、国内外からのアクセスが一段と良くなる。

この絶好の立地条件を持つ2期地区を開発するにあたって目標として定められたのが、先ほども紹介した「『みどり』と『イノベーション』の融合」である。