JR中野駅周辺が、駅ビルや新改札口の誕生と時を同じくして生まれ変わる。目玉の事業は、中野サンプラザや中野区庁舎の敷地一帯の再整備。オフィスや共同住宅で構成する超高層ビルや7000人規模のホールなどが、2028年度内に開業する見通しだ。この事業では新たに設立するエリアマネジメント団体を中心に、「文化」を切り口とするまちづくりを目指す。

JR中野駅周辺では、土地区画整理事業や法定再開発事業が目白押しだ。地元中野区が公表している資料を見れば、一目瞭然(図1)。いくつもの計画・事業が、ひしめき合う。10年もたつと、駅周辺の様相は様変わりしそうだ。

(図1)JR中野駅周辺のまちづくり事業(2021年1月現在)。法定再開発事業は中野サンプラザや中野区庁舎を中心とする中野駅新北口駅前エリアのほか、中野二丁目地区や囲町東地区でも具体化。参加組合員としては、中野二丁目地区では住友不動産が、囲町東地区では三井不動産レジデンシャルが参画している(資料提供:中野区)
(図1)JR中野駅周辺のまちづくり事業(2021年1月現在)。法定再開発事業は中野サンプラザや中野区庁舎を中心とする中野駅新北口駅前エリアのほか、中野二丁目地区や囲町東地区でも具体化。参加組合員としては、中野二丁目地区では住友不動産が、囲町東地区では三井不動産レジデンシャルが参画している(資料提供:中野区)
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しかも、人の流れの基点になる駅には2027年度までの間に、既存の南口や北口とは別に西口の改札が新設され、駅ビルを兼ねた橋上駅舎も整備される見通し。西口改札から南北に分かれる先には駅前広場が整備され、駅とまちとの一体感は一段と強まる。

引き金は、隣接する杉並区に一部かかる形で駅北側に広がる警察大学校等跡地地区のまちづくりである。区内の土地については、地元中野区が新庁舎や中学校などの用地として取得したほか、民間事業者や学校法人などが取得。2012年5月には広さ約1.5haの公園に隣接する複合開発事業「中野セントラルパーク」が全体完成を迎え、2013年4月には明治大学や帝京平成大学が開校した。いまでは「中野四季の都市(まち)」と呼ばれる一帯である。

この一帯では、キリンビールや栗田工業などの本社オフィスが置かれ、2つの大学キャンパスが開設されたことから、昼間人口は2万人ほど増えたといわれる。中野区まちづくり推進部中野駅周辺まちづくり課長の小幡一隆氏は「昼間人口が増えたことで、経済効果が表われている。また空間の魅力が増したこともあって、まちづくりに成功したとみられている。そうした評価が、開発機運の醸成につながっている」と分析する。

計画中・事業中の再開発事業の中で、新設される西口改札とも直結することになり、とりわけ拠点性が高いのが、「新北口駅前エリア」約5.2haの再整備事業である。「新北口駅前」には現在、既存の交通広場のほか、中野のランドマークと言える文化複合施設「中野サンプラザ」や中野区庁舎が立地する(写真1)。

(写真1)右手が中野サンプラザ、左手が中野区庁舎。中野サンプラザは、側面が三角形の構造物を2つ組み合わせた造りが特徴。1973年6月、勤労者福祉施設として開業した。コンサートホールのほか、レストラン、ホテル、結婚式場、研修室、ボウリング場、音楽スタジオ、スポーツ施設などとして運営されている(写真:茂木俊輔)
(写真1)右手が中野サンプラザ、左手が中野区庁舎。中野サンプラザは、側面が三角形の構造物を2つ組み合わせた造りが特徴。1973年6月、勤労者福祉施設として開業した。コンサートホールのほか、レストラン、ホテル、結婚式場、研修室、ボウリング場、音楽スタジオ、スポーツ施設などとして運営されている(写真:茂木俊輔)
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この再整備事業では、都市再生機構が土地区画整理事業を施行し基盤整備を進める一方で、同事業によって集約した宅地約2.3haには野村不動産ら民間事業者が法定再開発事業を施行して拠点施設を整備する(図2)。代表事業者の野村不動産、東急不動産、住友商事、ヒューリック、東日本旅客鉄道の5社で構成する民間事業者グループが協力事業者9社と掲げる拠点施設の開発コンセプトは、「Culture Driven City NAKANO 100」。「文化を原動力として、生活・交流・産業が活性化し、成長し続けるまちづくり」を目指す。

(図2)拠点施設の完成予想パース。真ん中にそびえる「シンボルタワー」の左下にはJR中野駅が、右下には大ホールやライフスタイルホテルなどが位置する。高層部では、中野サンプラザの外観デザインのモチーフにもなっている三角形をデザインの一部に取り込んでいる(資料提供:野村不動産)
(図2)拠点施設の完成予想パース。真ん中にそびえる「シンボルタワー」の左下にはJR中野駅が、右下には大ホールやライフスタイルホテルなどが位置する。高層部では、中野サンプラザの外観デザインのモチーフにもなっている三角形をデザインの一部に取り込んでいる(資料提供:野村不動産)
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勢いのあるアーティストの登竜門に

拠点施設は、「シンボルタワー」と「NAKANOサンプラザ」の2つ(図3、図4)。駅寄りにそびえるタワーは上層階から、オフィス、共同住宅、商業施設で、隣のサンプラザは駅側から、エリマネ施設、ライフスタイルホテル、大ホールで構成する。提案段階では、街区全体を「NAKANOサンプラザシティ」と呼ぶ。2028年度内の開業を見込む。

(図3)拠点施設を整備する法定再開発の施行予定区域。JR中野駅の西側には線路上に駅ビルを兼ねた橋上駅舎が整備され、図中「西側南北通路」に面して西口改札が新設される。この通路の南北には駅前広場が整備されるほか、北側はさらに歩行者デッキを通じて施工予定区域内の拠点施設と直結することになる(資料提供:野村不動産)
(図3)拠点施設を整備する法定再開発の施行予定区域。JR中野駅の西側には線路上に駅ビルを兼ねた橋上駅舎が整備され、図中「西側南北通路」に面して西口改札が新設される。この通路の南北には駅前広場が整備されるほか、北側はさらに歩行者デッキを通じて施工予定区域内の拠点施設と直結することになる(資料提供:野村不動産)
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(図4)拠点施設の断面構成と配置構成。「シンボルタワー」には、上層部にオフィス、下層部に共同住宅を配置する。「NAKANOサンプラザ」には、エリマネ施設を挟んで、大ホールとライフスタイルホテルを配置する。大ホールは、既存の商店街がある東側の中野5丁目に正面を向け、前面には広さ約3500㎡の広場を整備する(資料提供:野村不動産)
(図4)拠点施設の断面構成と配置構成。「シンボルタワー」には、上層部にオフィス、下層部に共同住宅を配置する。「NAKANOサンプラザ」には、エリマネ施設を挟んで、大ホールとライフスタイルホテルを配置する。大ホールは、既存の商店街がある東側の中野5丁目に正面を向け、前面には広さ約3500㎡の広場を整備する(資料提供:野村不動産)
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原動力とする文化の核になるのは、最大収容人数7000人程度の大ホールである。野村不動産開発企画本部中野プロジェクト推進室室長の五箇孝慎氏は「このホールを、勢いのあるアーティストの登竜門として聖地化したい。エリアマネジメントにあたる協議会組織を中心に、世界の文化を中野に呼び込み、中野の文化を世界に発信する役割を担う文化協議会と連携し、オンラインコミュニティも活用しながら、『集積』『発信』『創出』『醸成』という文化拠点形成のサイクルを回し、中野ファンを世界に広げていく」と意気込む。

再整備事業の発端は、旧雇用・能力開発機構が所有する中野サンプラザを、地元中野区が民間企業グループとともに設立した受け皿会社で2004年11月に取得したことにある。同機構は国が定めた特殊法人等整理合理化計画を受け、もともと勤労者福祉施設として建設された中野サンプラザを区に譲渡することを、その2年前から打診していた。

区が受け皿会社を通じた取得を決めたのは、まちの活性化と中野駅周辺のまちづくりを推進する狙いからだ。取得後10年間は民間企業グループが設立した運営会社がまちのにぎわいに役立つ運営を行い、その後は運営会社の主導で区が策定する計画に沿って再整備事業を行う予定だった。

ところがその後、運営会社側の問題から同社が中野サンプラザの所有・運営から手を引くことになり、区がその“後処理”に乗り出す。2008年10月には、運営会社が保有する受け皿会社の株式を取得する一方、その運営会社が設立した新・運営会社を受け皿会社に買い取らせるために追加出資することを決めた。再整備事業を区主導で行う方向にかじを切り、それと同時に、区庁舎との一体整備を打ち出した。

区は再整備事業に向けた検討を進める過程で、2015年3月には事業構築パートナーを、2016年7月には事業協力者を選定し、民間事業者の意見を聞いてきた。野村不動産を代表企業とする企業グループは、構成メンバーを一部改めながらも、この事業構築パートナーや事業協力者として検討段階から一貫して再整備事業に関わりながら、地元との関係づくりにも努めてきたという経緯がある。