新宿や渋谷に比べ駅周辺の更新で後れを取る東京・池袋。基盤整備に合わせ駅東西では再開発に向けた検討が進み、線路をまたぐ歩行者用デッキの構想があらためて浮上してきた。区はさらに東口駅前の歩行者空間化も打ち出す。4つの公園を核に公共主導で進めてきたまちづくりは最終フェーズに入る。まちの回遊性を高め、「駅袋」から脱却できるのか――。

鉄道4社・8路線が乗り入れ、乗降客数が1日約260万人と言われる巨大ターミナル・池袋。その駅前の風景が、がらりと変わる見通しだ。

地元豊島区が打ち出しているのは、駅東口からさらに東方向に真っ直ぐに伸びるグリーン大通りの駅寄り区間の歩行者空間化である(写真1)。グリーン大通りはそこまでの折り返しになる想定だ。駅東口を南北に貫く明治通りも、グリーン大通りとT字型に交わる区間が併せて歩行者空間化されるため、駅前で南北に二分され、それぞれの端部に新しく整備される交通広場での折り返しになる想定だ。駅前の通過交通をほかに誘導し、駅前にはぽっかり、大きな広場が生まれることになる。

(写真1)グリーン大通り。正面に見える駅前との間が歩行者空間化される見通し(写真:茂木俊輔)
(写真1)グリーン大通り。正面に見える駅前との間が歩行者空間化される見通し(写真:茂木俊輔)
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歩行者優先のまちづくりはもともと区で進めてきた施策である。2020年3月に更新した「池袋副都心交通戦略2020更新版(以下、交通戦略)」では、「鉄道で来街する人がまちなかに出やすいように、駅からまちなかに連続する安心して通行できる人中心の道路空間を確保」という方針を掲げる。歩行者空間化はこうした方針に基づく。

狙いは、「駅袋」からの脱却だ。

池袋駅はかねて乗降客数は多いものの多くは乗り換え客だった。「交通戦略」の推計では、駅で乗り降りする人は4分の1程度にすぎないと見込む。しかも駅直結の形で、百貨店をはじめとする商業施設が立地する。買い物はそこで済んでしまう。結果、多くの人は駅の中にとどまり、まちなかにまで出てこない、という見方を生んだ。それが、「池袋」をもじった「駅袋」という呼び名につながった、とみられる。

歩行者優先のまちづくりは、駅からまちへ鉄道利用者を取り込むために、言葉を換えれば「駅袋」からの脱却を図るために、まちなかの歩きやすさを向上させるもの。グリーン大通りの歩行者空間化は、その実現に向けた大きな一歩だ。

この歩行者空間化を可能にする道路整備がある。東京都が事業中の「環状第5の1号線」と呼ばれる道路である。予定通り進めば、供用開始は2027年度の見通し。この道路を利用できるようになると、明治通りに集中していた車両交通が分散するようになるとみられる。さらに駅前の通過交通を誘導できるようにもなるため、明治通りを駅前で南北に分断することにも道が開ける、という発想だ。

ただ、実現に向けた具体の道筋は未定。交通管理者側との協議もこれからという状況だ。道路構造の見直しを検討中の自治体では見直し後を想定した社会実験を実施していることから、同様の取り組みも求められそうだ。区都市整備部交通・基盤担当課長の小澤丈博氏は「実現への道筋については今後、検討していきたい」と、将来を見すえる。

駅西口の再開発には、三菱地所グループが参画

グリーン大通りの歩行者空間化と並んで駅前の風景を一変させようとするのは、駅西口と駅東口でそれぞれ検討されている再開発である。

池袋駅周辺の拠点開発と言えば、古くは地上60階建ての超高層ビルをシンボルとする「サンシャインシティ」が、最近では区庁舎跡地エリアを公民連携で開発した「Hareza(ハレザ)池袋」が挙げられる。いずれも駅から少し離れた場所にある。

これに対して2つの再開発はまさに駅前。グリーン大通りの歩行者空間化と同様、鉄道利用者を駅からまちへ取り込む装置としての役割が見込まれる。「駅袋」からの脱却に向けた拠点開発として、大きな期待が寄せられる。

先行するのは、西口だ(写真2)。区域の広さは約6ha(図1)。地権者が再開発組合を設立し法定再開発事業を実施する「組合街区」(約4.6ha)と、東武鉄道が単独で事業を実施する「東武鉄道街区」(約1.3ha)の2つに分かれる。組合街区では再開発組合の設立に向けて準備組合をすでに立ち上げ済み。区都市整備部再開発担当課長の大根原尉之氏は「この一帯は新宿や渋谷に比べまちの更新が遅れていた。それが再開発機運の醸成につながり、準備組合への加入率は地権者数の8割を超える」と話す。

(写真2)駅西口の再開発検討区域。基本構想によれば、区域内には超高層ビル3棟を建設するほか、交通広場を整備するという(写真:茂木俊輔)
(写真2)駅西口の再開発検討区域。基本構想によれば、区域内には超高層ビル3棟を建設するほか、交通広場を整備するという(写真:茂木俊輔)
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(図1)駅西口の再開発では、組合街区と東武鉄道街区に分かれるものの、まちと駅を一体的に再整備する前提で計画を進めている(資料提供:豊島区)
(図1)駅西口の再開発では、組合街区と東武鉄道街区に分かれるものの、まちと駅を一体的に再整備する前提で計画を進めている(資料提供:豊島区)
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15年ほど前、勉強会の開催という形で地域にまちづくりに向けた検討を持ち掛けたのは、区だ。大根原氏によれば、その狙いは大きく2つあるという。

一つは、区域の西端にある五差路を、駅周辺の交通ネットワークの観点から交差点に改めることだ。五差路と駅を結ぶ1本の道路はまるまる区域に取り込み、残る4本で交差点を形成するように都市基盤を改める。

もう一つは、駅周辺に分散していた交通広場の機能を1カ所に再編・集約することだ(図2)。「それによって、鉄道とバス・タクシーとの間の乗り換え利便性を向上させる。交通結節機能の強化を図る狙いだ」(大根原氏)。

(図2)駅西口も駅東口もバス・タクシーの乗降場が分散している。区ではそれらを再編・集約し、鉄道との結節点になる交通広場を整備したい、と考えている(出所:豊島区「池袋副都心交通戦略2020更新版」(2020年3月))
(図2)駅西口も駅東口もバス・タクシーの乗降場が分散している。区ではそれらを再編・集約し、鉄道との結節点になる交通広場を整備したい、と考えている(出所:豊島区「池袋副都心交通戦略2020更新版」(2020年3月))
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組合街区には三菱地所と三菱地所レジデンスの2社が事業協力者として加わり、地元とともに計画を検討している段階だ。超高層ビルの建設や交通広場の整備に加え、街区内にある池袋西口公園と一体的に運用できそうな半地下広場の整備も計画されている。地下と地上を円滑に結び付ける空間として、駅側の人の流れをまち側に送り込む役割を望むことができそうだ。次のステップである都市計画決定は2022年度内を見込む。

かたや東口は、明治通りとグリーン大通りでL字型に区切られた一帯で再開発に向けた検討が進む(写真3)。現在、区主体の懇談会の段階から地元主体の協議会の段階に一歩進んだところ。地権者の参画は、まだ途上にある。

(写真3)駅側から東口の再開発検討区域を見る。豊島区は、駅前を左右に貫通する明治通りをその手前で折り返し、そこに交通広場を整備したい、と考える(写真:茂木俊輔)
(写真3)駅側から東口の再開発検討区域を見る。豊島区は、駅前を左右に貫通する明治通りをその手前で折り返し、そこに交通広場を整備したい、と考える(写真:茂木俊輔)
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