ニューかめりあになぜATPS-BLUEsysが採用されたか

カメリアライン株式会社
取締役
運航部長 兼 旅客営業部長
安全統括管理者
福間 功 氏

福間氏は、ニューかめりあにATPS-BLUEsysを採用した理由を次のように話す。「薬剤方式は、初期投資が低い一方で薬剤を購入するランニングコストが高く、頻繁に寄港するニューかめりあには合わないと判断して、すぐに候補から外れました。UV方式と電気分解方式のどちらも機能的には十分でしたが、設備の説明を受けたときに細かなところまで行き届いたサービスをしてくれるという印象を受けたのと、信頼できる会社であることからATPS-BLUEsysを選択しました。実際に運用してから、まだ小さな課題はあるものの、その課題に対して、期待通りの迅速な対応をいただくと、やはりパナソニックだと実感しますね」。

日本郵船株式会社
物流・コンテナ航路統轄グループ グループ長 代理
高野 薫 氏

舶用メーカーとしてのパナソニックの実績はないが、国内企業として信頼性が高いと日本郵船株式会社の高野 薫 氏も評価する。「誰もが知っている会社でもあり、何かあった場合の対応力が高く、安心できるパートナーとして間違いないと考えました。毎日一往復するお客様をお乗せする船であるため、トラブルや万が一の場合に迅速に対応してくれる信頼性は非常に重要だと考えています」。

日本郵船株式会社
物流・コンテナ航路統轄グループ 物流チーム
中村 彰吾 氏

ATPS-BLUEsysがフィルターレスであることも、採用された理由の1つだ。多くのバラスト水処理装置では、大きめの生物をフィルターにかけて除外してから、それぞれの方式で殺菌しているが、ATPS-BLUEsysは電解槽により殺菌能力を高めることで、フィルターレスを可能としている。「フィルターがある装置は、どうしても定期的に分解洗浄する必要があります。装置を付けることで、定期運航に支障が出たり、乗組員の手間が増えたり、乗務員を増員することは避けたいと考えていました」と日本郵船株式会社の中村 彰吾 氏は話す。また、フィルターレスであることで、装置自体のサイズが小さく、設置しやすいことも就航船であるニューかめりあには優位であった。

バラスト水は全量電解槽で電解処理される(インライン電解)。電解により生成する殺菌剤だけでなく、さまざまな殺菌効果により高い殺菌性能が得られる。また、撹拌による3D撹拌効果によって、ごみなどに付着した微生物や細菌類も確実に殺菌するだけでなく、電解副生成物や海水中の土砂やごみの除去も行う。
残留塩素濃度の計測、中和剤の注入量制御は自動的に行われ、完全に無害化されたバラスト水を船外へ排出する。また、排出時には殺菌処理を行わず中和処理のみを行うため、排出能力が低下することはない。

(バラスト水処理システム ATPS-BLUEsysの仕組み)

就航船でもスムーズに設置・運用が可能

定期点検はすでに12日間の予定でスケジュールされていたが、実際の導入は10日間で終えることができたという。「博多港に停泊中に事前作業などを行ってもらって、入渠中の作業をスムーズにすることができました。パナソニックが手配してくれたサービスエンジニアが付きっ切りで、非常によく動いてくれたと思います。やってみて初めてわかることも多く、スケジュールどおりに進めることが困難でしたが、最終的にはスケジュールどおりに終わることができました」と福間氏は説明する。また、パナソニック環境エンジニアリング株式会社の枝川 晶義 氏は、就航船へのバラスト水処理装置の設置は、事前準備が非常に重要であることを明かした。「就航船は、メンテナンスや改造などで図面どおりではないことが多いですね。ニューかめりあは、比較的図面どおりでしたが、あらかじめ3Dスキャニングして、どのように設置しておくかを決めておく必要があります。また、配管もどこに何が流れているかをしっかりと把握しておくなど、事前準備をしておかなければスムーズな設置はできません」。

パナソニック環境エンジニアリング株式会社
舶用装置エンジニアリングユニット
ユニットマネージャー
枝川 晶義 氏

また、髙橋氏は、ニューかめりあのような頻繁に港を行き来する船に導入できたことは、日本郵船にとっても、パナソニックにとっても意義のあることだと強調する。「ニューかめりあのような過酷な環境で動かすケースは、ほかにはあまりないと思いますね。ぜひチャレンジさせて欲しいとパナソニックから提案を受けましたが、1年間無事に運用できたときには両社に大きな知見が生まれ、信頼関係を築けると感じました。まだ始まったばかりの分野なので、タイムリーな改善や速やかなフィードバックを行っていくことにより、パナソニックにとっても、他の船にも応用できるようなノウハウを蓄積していけるといいと思います」と語る。

“異業種”として参入したパナソニックのバラスト水処理装置

水、空気、土の浄化で地球環境に貢献していく事業を進めているパナソニック環境エンジニアリングがバラスト水処理装置の開発を考え始めたのは、2009年ごろだったと枝川氏は振り返る。「エンジニアリングを主体に事業を進めている中で、造船所のお客様にバラスト水処理の話を聞いたのがキッカケでしたね。我々は、水処理の技術を持っており、“クリーンテクノロジーを究め、地球環境に貢献する”という基本理念にも合致するので、新たな事業とすることができるのではないかと考え、経営会議にかけて承認してもらいました」。

しかし、その道のりは非常に困難だったという。「3年間は、基礎的な部分の研究開発を行っていましたが、海水1トン中に多いときで10万匹以上生物がいることを知り、海の中にこんなに多くの生き物がいることに驚きました」と話す枝川氏。さらに「狭くて高さもない場所に装置を置く必要があるため、省スペースにこだわり、フィルターがないほうがよいと判断しました。一方で、フィルターがない分、電気分解での殺菌能力を高めなければならず、1時間で数千トンの水が一瞬で流れていく中で、ほぼすべての生物を電解槽で一瞬のうちに殺菌していく必要があり、この点が非常に大変でした」と開発に当たっての苦労を語った。 “異業種”として参入したパナソニックが、この新たに生まれるマーケットでどのように活躍するのか、今後の動向に注目したい。