カロリエコを通じて食のパーソナライズを目指す

カロリエコは健康関連機器を開発する部署から生まれた。一見、栄養管理とは無関係のように思える。開発担当者の1人、パナソニック株式会社の海藏 博之氏は、開発の経緯をこのように振り返る。

パナソニック株式会社 アプライアンス社 技術本部
ホームアプライアンス開発センター
開発第四部 第二課
主任技師
海藏 博之 氏

「健康機器を扱っていることもあり、頻繁に病院に足を運んでヒアリングをする中で、『ダイエットをするにしても運動の消費カロリーはわかるが、摂取したカロリーがわからないと痩せることもできない』との声が多いことに気がつきました。そこで食品のカロリーや栄養素が手軽にわかる製品を作れないものかと考えたのが最初です」(海藏氏)

もともと門外漢だったチームは仮説を立てながらカロリー計測の方法を探ってきたが、当初はトライ&エラーの繰り返しだった。そこに予想もしていなかった別部門から、ある技術を使ってみないかとの提案が届く。「その技術を実際に試してみると、『もしかしたらできるかもしれない』との手応えを得ました。あの提案がなければ、今でも成立していなかったと思います」(海藏氏)。

測定原理は、近赤外光を食品に照射し、食品の吸光量をセンサーによって検知することでカロリーや栄養価を推定する。さらに独自のアルゴリズムにより、素早く手軽な測定を可能にした。精度の高さは先述した通りだが、海藏氏は「まだ実験環境下の数値なので、実用化に向けあらゆる状況でこの数値をクリアしていけるようにしていきたい」と意欲をのぞかせる。

独自アルゴリズムにより早く・手軽に測定できる。

2017年3月には米テキサス州で開かれた国際IT見本市「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」、同年10月には「CEATEC JAPAN 2017」に出展し、大きな反響を呼んだ。「SXSWのアンケート結果では、実に糖尿病患者の90%が購入意向を示しました。最近はスマホアプリで健康管理をするケースも増えており、やはり健康意識の高まりをひしひしと感じます。糖尿病までは行かなくても、メタボやダイエット対策でのニーズも多かったです」(海藏氏)。

これまで糖尿病患者にヒアリングを行う中で、“好きなものを食べられる”ことが大きな幸せになることを海藏氏は学んだ。「実証実験の一環として、ある患者さんに対して焼きそばパンの計測を行ったところ、想定カロリー内で収まったのです。そうしたら『焼きそばパンなんて食べられると思わなかった。ほかの食事もどんどん計測したい』と。いろんなものが少しずつ食べられるようになれば食の楽しみも増えると思います」(海藏氏)。

カロリエコで実際に計測する様子。食事を皿に乗せ、入れるだけで簡単に計測ができる。

カロリエコのプロジェクトは、アプライアンス社による家電領域を中心とした新規事業創出と人材育成を目的とする取り組み「Game Changer Catapult」(ゲームチェンジャーカタパルト)の一環として進められている。今後は田中教授らと協力しながらエビデンスやデータ、使い勝手のフィードバックを蓄積。より高精度で使いやすいデバイスを目指し、鋭意努力を重ねている。

「想定は家庭用だけではありません。例えばレストランに設置すれば外出先でも適切なカロリーを表示できるようになり、残ったカロリー内で美味しい食事のメニューを提案できるようになるかもしれません。いずれはウエアラブルデバイスと連携して、『あと10分走れば想定カロリー内でビールが飲める』といったレコメンドなどができるようになればいいですね。何かしらのインセンティブがあれば、運動を継続するモチベーションが生まれますから。

これからの時代、健康に関してはどんどんライフログを蓄積していき、1人1人に合ったサービスが生まれる時代になるのではないかと考えています。カロリーからオススメのレストランをレコメンドしたり、運動メニューを提示したりといったイメージです。カロリエコがそうした未来の一端を担い、世の中の役に立てたらうれしい。ですから、一家に一台を目標にしています」(海藏氏)

家電がもたらす価値が技術の進化により変化している。カロリエコはおいしさではなく、”食べる楽しみ”を広げる新たな試みであり、さらに糖尿病患者の食事に対する不安を解消する社会課題解決の側面も持つ。進化するテクノロジーとアイデア力・開発力が具現化した本プロジェクトに今後も大きく期待したい。





パナソニックの“Game Changer Catapult”の取り組みについて

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測定技術のカギとなる「近赤外光」とはどのようなものなのか、
また「食」へのお役立ちを調理以外の分野にも広げていくその思いとは。

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