ディープラーニングの精度向上がもたらした実利

精度の優れた認証エンジンに加えて、今回のシステムにはもうひとつ大きな特徴がある。それは処理フローの仕組みだ。例えば、従来の顔認証システムでは、映像から顔の場所を認識し、そこから顔がしっかり写っている画像を選択する。写りが悪ければ画像処理を施し、そのデータを基にして顔認証を行うという流れで、これらの作業すべてをサーバーで処理するのが一般的だった。しかし、これではサーバーに大きな負荷がかかってしまう。

「そこで今回、最後の顔認証以外の前処理をカメラ側で対応する仕組みを採用することで、サーバーの負荷を分散するようにしています」と、パナソニック株式会社の関口裕氏は解説する。

「仮に1度の撮影で10枚の顔写真を撮った場合、そのなかから顔認証に最適な写真2~3枚を自動的に選択してサーバーに送信する『ベストショット』という機能があります。これにより、サーバーの処理量をさらに減らせるわけです」(関口氏)。

また、1台のサーバーに接続できるカメラの台数は、サーバーにかかる負荷によって決まるため、サーバーへの負荷を減らすことで、コストメリットも大きく変わってくる。関口氏は、「すべての処理をサーバーで行うやり方では、1台のサーバーに対してカメラは4台前後が限界ではないでしょうか。一方で、弊社のシステムであれば、最大20台まで接続可能です。ユーザーにとって、これは大きなメリットとなるでしょう」と力強く語る。

パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社
セキュリティシステム事業部
市場開発部
商品推進課
課長
関口 裕氏

さらに、ディープラーニングによる精度の向上は、登録できる顔データの増加にも寄与しており、従来の最大1000から最大3万にまで増加できたそう。登録人数を増やした場合、顔認証の精度に変わりがなければ誤報の実数は比例して増えてしまうため、従来のアルゴリズム型では実利用の観点から1000が限界だったという。これを30倍にまで増加できたのは、ディープラーニングのおかげに他ならないのだ。

このように、非常に優れた認証エンジンや独自の処理フローなどを持つ今回の新システムだが、「認識エンジンがNISTで世界最高水準を達成したとしても、それをそのままお客様に提供すればいいわけではありません」。そう断言するのはパナソニック株式会社の篠崎浩介氏。商品化にあたっては、2つのポイントを重点的に追求したという。

「1つは『お客様監視実環境への適応』です。NISTが提供するテストデータはある一つのデータ群であり、そのテストで高い水準を満たしたとしても、実際の監視現場で同じ水準を出せるとは限りません。例えば、逆光や低照度、監視カメラを意識しない歩行環境時でも監視カメラにより近い画角で顔認証に最適な画像をきちんと撮れて、高い認証精度を保てるか。そういった部分を、カメラの撮像技術と認識エンジンの両面から、徹底的にやってきたと自負しています。

もう1つは、サーバーに対する『負荷の低減』です。ディープラーニングは精度を飛躍的に向上させるメリットがある一方で、データ量や処理量が増加するためサーバーの負荷も増えるというデメリットがあります。もともと、従来の機器でサーバー1台あたり20台のカメラを接続できるというコストメリットが大きな魅力だったため、新しいシステムでもこのレベルを落とすわけにはいきませんでした。ベストショットや分散処理を踏襲するのはもちろんのこと、ディープラーニングの効率を上げる仕組みなども新たに盛り込み、コストメリットと精度の両立を実現しました」(篠崎氏)。

パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社
セキュリティシステム事業部
市場開発部
セキュリティシステム企画課
係長
篠崎 浩介氏

認証技術は「守り」から「攻め」へ

これまでセキュリティ面での活用が主だった顔認証技術だが、今後はマーケティング分野での活用も期待されているという。顔を検出することで性別や大まかな年齢、人数を判定できるため、その統計データを経営コンサルティングに役立てようというわけだ。この仕組みは、POSシステムと連携することでさらなる情報を得られるほか、エリア情報と組み合わせることでヒートマップなどにも対応可能である。

なにより、セキュリティ目的で導入した監視カメラを、そのままマーケティングに活用できる点は、ユーザーにとって大きなメリットとなる。関口氏は「既存の課題を解決しながらビジネスの発展に寄与できるような価値を提案していきたいですね」と今後の展望を語る。

近い将来、人間の行動がカメラで認証できる世界も来るだろう。ディープラーニングの発展により精度が向上した顔認証技術がさまざまな分野に応用され、より安全・安心かつ便利な世界の実現に貢献することを期待したい。



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