トマトの適収穫度を画像認識で判断

収穫ロボットは実際にどのような流れで作業を行うのだろうか。
トマトの苗の畝と畝の間に敷かれたレールの上を収穫ロボットは移動して実を収穫する。収穫ロボットには画像を認識するカメラが搭載されており、これによって実を見つけ、収穫すべき実なのかどうかを判断すると、動作する経路を決め、収穫作業用の先端部分(エンドエフェクタ)を近づけていく。狙ったトマトをリングに通し、実を引っ張り、主枝(果梗)を押すことで、手でもいだように実を取り、下に取り付けられたポケットに落とす。

収穫ロボットが実際にトマトを収穫する様子

現在6秒に1個のペースで収穫可能である。人は2、3秒で1個を収穫できるので人の方が速いが、人が作業できるのは3、4時間程度。一方収穫ロボットは10時間以上連続稼働でき、夜間にも働けるので、農園ではこの速度で十分と考えている。

収穫ロボットの開発における課題の一つは、トマトが熟し、収穫に適した頃合いである「適収穫度」に取れるようにすることだった。

そこで注目したのが色の変化である。トマトの実は緑色から熟すにつれて徐々に赤くなる。そこで実の画像を撮影し、その色を農園が作成した色見本と照合し、判断するシステムを開発した。「人間だと判断に個人差が出ますが、収穫ロボットではそれがなく、安定的に同じ熟度の実を取ることができます。試してみると、取る実の選別にはまったく問題がなく、満足しています」(中村農園長)

色見本の範囲は自由に設定できる。生産量を確保するために少し熟度が低い実まで取りたいといった場合は、通常より緑色に近い範囲に設定を変えるだけで可能だ。

また収穫ロボットが夜間でも、実の色などを識別・収穫できるのは、フラッシュ発光して撮影するからだ。夜の無人のハウス内ではピカピカと光が明滅しながら収穫ロボットによる作業が進む。

人とロボットが助け合う社会をめざす

この収穫ロボットを開発しているのがパナソニックである。担当の戸島亮氏は、定期的にこの農園に足を運び、農園と意見を交わしながら、現状分析やさらなる機能向上に努めている。

「最初は農業や収穫について人間の作業を模倣することから始めました。刃物を使わずにリングを使い、直接、実に触れないように収穫する方法も、手作業と同じようにしようとしたからです」(戸島氏)

パナソニック株式会社
生産技術本部
ロボティクス推進室
開発一課 課長
戸島 亮氏

収穫ロボットの性能は、最近、AIを導入したことによって格段に向上した。戸島氏は、「収穫ロボットは以前、トマトが葉や茎の陰にあって一部しか見えていないとき、トマトだと認識できませんでしたが、トマトがほんの一部見えている写真を学習させることで認識できるようになりました」と語る。今後は葉や枝など実以外の部分の認識性能を高めることで、さらにロボットの収穫率を上げようとしている。

パナソニックではこれまで医療福祉、家電、社会インフラなど様々な分野でロボティクス開発を進めてきた。こうしたロボット技術が次々に生まれているのは、家電メーカーとして人と触れ合い研究し蓄積した技術力がある。パナソニックでは「人に寄り添うロボティクス」をキーワードとし、人がロボットと共に安心して活動でき、人の役に立つロボットを作ることを目指し開発に取り組んでいる。

その際にパナソニックが大切にしていることは大きく二つある。一つは安全性だ。人にぶつかったり、人を傷つけたりしないように、きめ細かな配慮をしている。もう一つは、人間がロボット技術を利用して、自分らしく活動できること。これにはロボットが人間に代わって働く場合と、人間の能力自体を高める場合がある。人生100年時代と言われる今、パナソニックは、ロボットと共存することで、あらゆる人がより幸福に過ごせる社会を目指している。

「農業に限らず、広く世の中と人の役に立ち、人を幸せにするロボットを開発していきたい。この収穫ロボットで培われた要素技術が、他の様々な分野のロボットに応用されることにも期待しています」と戸島氏は語る。

AIの導入により大きく進歩している収穫ロボット。今後の研究でより大きな進歩を遂げ、農業はもちろん、様々な課題を解決する一手になることだろう。人と共生し、人の役に立つようなロボティクス社会の実現に、今後も期待していきたい。





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