技術の進歩で自転車+ITの可能性は無限大

結果、それら必須要件をクリアしたモデルが完成。堀氏は協業がもたらした意義を次のように話してくれた。

「今回の取り組みは、パナソニックグループとNTTドコモグループの協業としても実りが多いものだと感じています。我々が扱う電動アシスト自転車には、通信モジュール、GPS、加速度センサーといったIoT機能が搭載されています。これらをパナソニックグループが持つ豊富なアセットやテクノロジーと組み合わせて、今後も大きく発展させていける自信があるからです。超高速・多接続通信の5G時代になれば、コネクテッド・バイクの需要はさらに高まっていくはずです」(堀氏)

2018年5月には、大阪市でサービスの本格展開を開始した。これまで地元事業者の「HUBchari(ハブチャリ)」にシステム提供を行ってきたが、HUBchariと相互乗り入れする形でドコモ・バイクシェアを広めていく構えだ。堀氏は「同じ都会でも東京と大阪では環境やニーズが異なりますから、新しいチャレンジだと捉えています」と身を引き締める。

そして自身もサイクリストだという堀氏は“ミライの自転車”が持つパワーについて、このような思いを寄せる。

「自転車はちょっと寄り道して面白いお店やエリアを発見できますし、昨今の健康増進の面から見てもプラスになることが多い。これからはただの乗り物ではなく、ITと連携してクーポン情報やエリア情報などを簡単に取得できるようになります。自転車+αの楽しさや魅力をお客さまに発信していくことで、既存の交通機関の代替以上の価値を提供できるのではないでしょうか」(堀氏)

万人に受け入れられるデザインと使い勝手を目指して

ドコモ・バイクシェアの要望を受け、パナソニック サイクルテックはどのような姿勢で開発に臨んだのか。同社専務取締役 中駄義信氏は「ユーザビリティの点では、ユニバーサル性の高いデザインが必須。デザインをかなり工夫し、ユニセックスかつ幅広い年齢層に使いやすい構造を目標に様々なアイデアを出し、ドコモ・バイクシェアと1つ1つ詰めていきました」と語る。

パナソニック サイクルテック株式会社
専務取締役
中駄 義信

新型モデルでは2年前の初代モデルを全面的に見直した。乗りやすさについては初代と比較してサドルからハンドルまでの距離が約8cm長くなり、大柄な外国人観光客の方でも余裕を持って運転できるように配慮。インバウンド需要の伸びを意識した開発である。

今夏投入予定の新型モデル

電動アシスト自転車の肝となるバッテリーは、12Ahからサイズを変更することなく大容量の16Ahへとパワーアップを図った。その結果、約3割も走行可能距離が伸びたという。

コストを抑制するため、市販車のパーツを用いた点も特徴だ。頑丈なバスケット、サドル、タイヤ、スポーク、モーター、手元スイッチなどを同社の子乗せモデルを中心に共用化した。これら共用化は「市場実績があり、信頼性が確認できていること」(中駄氏)も大きな理由となった。電動ユニットには電源供給機能を搭載、新たな電子機器も活用できる付加価値もある。

アシストモードを簡単に切替えられる小型スイッチ

幸之助の想いのもと安全・安心を提供し続ける

中駄氏は完成した第2号モデルについて「お客さまが最も心地よく乗車できるポイントはどこだろう?と突き詰めた自信作」と胸を張る。そこには、パナソニックが培ってきたモノづくりに対する歴史と矜持がある。

「我々には、長年自転車を作り続けてきた豊富な知見があり、加えてテクノロジーの要である電動ユニットを開発、内製しています。ドコモ・バイクシェアの様々な要望に対して、ワンストップオペレーションで対応できたことが最大の強みと言えるでしょう」。(中駄氏)

2017年には電動アシスト自転車の国内出荷が60万台を超え、全体の1割強まで普及した。徐々に市場が形成される中で、これまでのように買い物や子乗せモデルばかりではなくスポーツやタウンバイク、ビジネスモデルなどニーズも多様化してきた。電動アシスト自転車、ひいては自転車を取り巻く環境が変わり続けていく中で、中駄氏はどんな未来を見つめているのか。

「もちろん進化を求めていきますが、乗り物として、安全・安心の土台は不変。自転車の持つ価値が何なのか――その本質は外さないようにしたいと考えています。

我々の前身であるナショナル自転車工業株式会社が誕生してから今年で66年経ちました。松下幸之助創業者が作った会社で、1つの事業部として商品が大きく変化していないのは恐らくこの領域ぐらいでしょう。松下幸之助創業者が、家の中だけではなく、外でも人びとの生活が豊かになるようにとの思いを込めて立ち上げた事業。その思いはこれからも大切にしていきたいと思います」(中駄氏)

未来コトハジメで取材して2年経過した本事業。たった2年で加速度的に成長したことを考えると次の2年後、つまり2020年の本丸の時点で、どこまで公共交通機関として受け入れられているだろうか。大いに期待できる本事業にこれからも注目していきたい。

年齢、性別問わず幅広く利用されている
2020年のさらなる先に向かって挑戦を続ける
 オリンピックでのTOPスポンサー、パラリンピックでのワールドワイド公式パートナーを務めるパナソニックは、2014年に「東京オリンピック・パラリンピック推進本部」を設置。2020年東京の街づくりに貢献する新しい技術・サービスの開発を行うとともに、新規ビジネス開拓に注力している。
 ビジネス創出のヒントになるのは社会課題解決である。推進本部では数多くの社会課題を探り、 “5スマート+ネクスト3”を柱とした。
  パナソニックが取り組む5スマート+ネクスト3
 このうち、スマートトランスポーテーション実現に向けた一環として、今回のサイクルシェアの協業に取り組んでいる。東京大会において、オリンピック・パラリンピック両大会での最高位のスポンサーとして電動アシスト自転車を提供する経緯もあり、市場開拓に向けた意味でも期待は大きい。
 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 戦略企画部 プロジェクト推進課 課長の井上英紀氏は「サイクルシェアは地元住民だけではなく、観光客や外国人の方が試し乗りできる機会。まずは乗ってもらって、電動アシスト自転車はこんなに便利なんだということを感じてほしい」と語る。
  パナソニック株式会社
  東京オリンピック・パラリンピック推進本部
  戦略企画部
  プロジェクト推進課 課長
  井上 英紀氏
 新型モデルのバッテリーに搭載された電源供給機能とドコモならではの通信機能を活かし、“次世代の自転車”に向けたサービス展開も構想中だ。オープンイノベーションがもたらす未来の可能性について、井上氏はこのように展望を語った。
 「2020年は1つのマイルストーンですが、そこでビジネスが終わるわけではありません。挑戦を続けながら新しい価値を生み出す――こうした活動は2020年以降もずっと続けていきたい。そこから事業の柱となるビジネスが育っていくことが理想です」(井上氏)




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