「もう以前のやり方には戻れない」という究極の褒め言葉

送迎支援サービスは2018年6月から、基本機能の提供を開始する。もとになっているDRIVEBOSSは、モビリティ向けの課題解決型ソリューションとして2017年9月に発売した。もともと一般企業の社用車向けに安全運転・業務効率化支援を軸に展開しているが、“もっとカーナビの特長を生かして新たな価値創造ができないだろうか”との発想から、今回のプロジェクトが始まった。

パナソニック カーエレクトロニクス ソリューション事業統括部 営業2部 DRIVEBOSS推進課 課長 熊谷繁氏はこう語る。

「介護業界は今後の日本にとって重要な業界であるにもかかわらず、非常に人材が不足しています。そこでパナソニックグループのさまざまな事業部やAI担当の技術開発部門などと横断的に話し合いを重ねる中で閃いたのが今回の送迎支援サービスです。

パナソニック カーエレクトロニクス株式会社
ソリューション事業統括部
営業2部 DRIVEBOSS推進課 課長
熊谷 繁氏

そして『こんなことがあれば課題が解決できるのではないか』との解決手段を書き出して、グループのパナソニック エイジフリー(パナソニックグループの介護事業体)にヒアリングに行ったところ、大いに賛同してもらいました。グループ内の知見をすばやく収集できたことは、パナソニックならではの強みと言えるでしょう」(熊谷氏)

ツクイとシステムを作り上げていく中で、最も難しかったのは「いい感じ」の送迎計画を作ることだった。ツクイの楚山氏も同様のことを指摘しているが、要するにAIの効率至上主義だけでは上手く事が運ばない。

「送迎支援サービスの特長は、多くの制約情報を考慮し、簡単操作で全車両一括の送迎計画を作成し、カーナビ連携で送迎実績を作成できる点にあります。作成した送迎計画は訪問先リストとしてカーナビに転送表示され、訪問先ルートを案内します。ドライバーがカーナビに訪問先を設定する必要もなく、道に不慣れなドライバーへ効率的な送迎を支援することで、ドライバー確保や送迎業務軽減に貢献します。さらに、利用者の制約情報を1人ずつきちんとセットアップして、そこに要件を加味することで最終的に計画作成が格段に楽になります」(熊谷氏)

例えば制約情報の設定画面では「車椅子利用」「同乗禁止指定」「同乗希望指定」「施設受入時間帯」などの項目を非常に細かく設定できる。また、自動割当後の計画作成画面や車内の座席指定画面もぱっと見でわかるもので、作成した送迎計画はカーナビ画面に訪問先リストとして表示。随所に誤認識を防ぐ工夫がなされている。

利用者制約情報の入力画面

使い慣れたパソコンソフトのように、わざわざ説明書を見なくても操作できる簡便さにも留意した。

「仮運用をしているお客さまからの声としては、『操作がとても簡単で無理のない計画作成ができる』『計画作成そのものが楽しくなった』『もう以前のやり方には戻れない』など、前向きな感想をいただいています。今春の展示会での様子がメディアに取り上げられ、北は青森から南は鹿児島まで、全国の事業所から大きな反響がありました。一刻でも早く正式導入してほしいといった声を聞くにつれ、同じ課題で困っている事業所がたくさんあることを実感しています」(熊谷氏)

カーエレクトロニクス社としては今後、より多くの施設へのサービス提供を通じて介護業界に貢献していくとともに、高齢者を中心とした“交通弱者のモビリティ手段への貢献”を目指していきたいという。送迎支援サービスは初めの一歩となるが、AI/ITが介護業界という未開の大地を開拓し、これまでにない利便性・効率性、そして結果的に労働環境改善をもたらした貴重な例となった。ここから発展を続けていけば、5年後、10年後には今からは想像もつかない“交通弱者のためのモビリティ手段”が世の中に根付いているかもしれない。