<この記事を要約すると>

  • 酪農家が特に神経を注ぐのが、大切な子牛の分娩
  • 日夜を問わない過酷な環境下での見守りが、大きな負担に
  • パナソニックは分娩監視カメラシステムで酪農家の負担を軽減
  • 技術革新と法人経営化が、日本の酪農の未来を切り拓いていく

毎日の搾乳や飼料の給与など酪農従事者の労働条件は、とりわけ過酷だ。労働人口の高齢化や人手不足が問題となる中、行政も酪農における働き方改善や、生産性の向上に向けた支援を進めている。一方で緊急性を伴うこうした課題に、開拓の精神と最新のテクノロジーで挑み続けている牧場がある。最低気温が-30℃に近い厳しい寒さにもなる北海道で、乳牛の分娩監視カメラシステムを取材した。

過酷な北の大地でも機能するカメラで酪農従事者の働き方改革を

長時間労働の是正など働き方の改革が注目される中、酪農従事者の1人あたりの平均労働時間は年間2259時間と、製造業の2050時間と比べても長い。

こうした労働環境を背景に人手不足や高齢化などの問題を抱えながらも、離農した牛舎を買い取るなどして規模を拡大し、積極的な機械化を進める牧場も少なくない。搾乳ロボットや自動給餌機などを輸入して、少人数で対応できる作業体系を整えるのだ。農林水産省の資料によると酪農家の労働時間の内訳は搾乳作業が5割、飼料の給与作業が2割を占めていることから、近年の機械化による作業軽減の効果は大きい。
(参考資料:農林水産省 楽酪事業及び楽酪GO事業概要説明資料・P7)

製造業以上の長時間労働を必要とする酪農の現場

そんな中でも酪農家が特に神経を注ぐのが、乳牛の分娩だ。通常、子牛が正常に生まれてくる場合であれば、特別な処置は必要ない。しかし逆子や凍死、キツネに襲われることで発生する分娩ロスは、牛個体の販売価格が高騰していることによる経済損失だけでなく、生乳を生産するはずの乳牛が生まれなかったことで収益も下がり、牧場の大きな損害につながる。

だからこそ深夜におよぶこともある分娩のたびに、何度も牛舎に行って状況を確認するのだが、これは酪農家の大きな負担の一つである。冬の北海道となれば、なおさらだ。

「乳牛を見守るカメラが欲しい」という顧客の相談が、パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社に届いたのは、今から約2年前。これまで取り引きがなかった一次産業の顧客の要望から、新システムの構築に至るまでの経緯を同社の北村雄一氏は次のように話す。

「必要とされていたのは、屋外の環境性能の良さが前提条件の高品質カメラです。世界的にも評価が高いパナソニックのカメラは極寒、チリやホコリといった環境下に対応し、平昌の冬季オリンピックでも採用されています。また乳牛の鳴き声だけでも分娩の進捗状況が分かる酪農家にとって必須であるマイクが搭載され、さらに赤外線照明(IRLED)なら昼夜を問わず使用できることもあり、お客さまの期待に応えられると直感しました。ところが糞尿なども伴う牛舎という環境での設置だけは唯一、前例がありませんでした」(北村氏)

パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社
北海道社 エンジニアリング部 部長
北村 雄一氏

高品質カメラと保守という安心をセットにしたサービス提供

そこでカメラは高い防塵・防水と、-40℃の寒冷地に対応し湿気にも強い「i-PRO」シリーズを使用。北村氏は当時をこう振り返る。

「お客様はまさに待ったなしの状態。そこでカメラを特に厳しい環境に設置し、事業部と共に耐久性に問題がないことを確認する作業と並行して、お客様には即日サポートや点検など、メンテナンスが充実した保守契約プランをご提案することで早急な対応が実現しました」(北村氏)

もちろん牛舎にカメラを設置して監視する方法は、以前から存在していた。しかしそれは、牧場の経営者が独自にカメラを設置したものなどで故障も多く、品質も納得できるものではなかったという。高性能の監視カメラによる分娩ロスの軽減は、差し迫った課題だったのだ。

現場に通いつめ牛舎の配電状態や使用方法などの現状を分析し、最適なプロダクツの選定や一元管理システムの構築を行ったのが、システム担当の山本富美夫氏だ。

「ズームして子牛が寝ているワラの一本一本まではっきりと映る画像の鮮明さは、一目瞭然です。お客様には、回転機能で広いエリアも効率よく見渡せる画像をお見せするなどの実演で、抜群の性能に満足いただけました。また簡単に自宅のテレビやスマートフォンで遠隔監視ができるという提案で、仕事の効率化のイメージをお伝えできました」(山本氏)

パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社
システムプロダクツセンター 北海道SE課 主事
山本 富美夫氏

実は一般家庭において家電製品のイメージが強いパナソニックにとって、家族経営が中心の一次産業向けビジネスにおける道筋は、まったくなかった。それでも設置のための現場の下見依頼が殺到した経緯は、牧場に出入りのある販売会社を通じたプロモーションのほかに、すでに導入した酪農家のクチコミがあったからだ。

さらに農林水産省やホクレン農業協同組合連合会の補助金制度も追い風となり、1年間で60か所の牧場にパナソニックの分娩監視カメラシステムが導入された。