フロンティア精神で挑む酪農

キーマンとなった牧場経営者の一人が、約250頭の乳牛を成育するフロンティア牧場株式会社の山下和洋氏だ。北海道中南部に位置し、先人たちが戦後に原野を切り開いた足寄町で、最先端の酪農を先導する山下氏は、カメラの設置について次のように語る。

「大切な子牛を一頭、失うことを考えたらパナソニックのカメラは安い。講習会などでこの監視カメラを勧めるのは、映像でも乳牛のタグ(耳標)の10桁の番号が分かるほど画質がいいから。2日間で3頭ほどのペースで生まれてくる子牛を、今では映像と鳴き声だけでまず状態をチェックできるようになりました。分娩がはじまり、介助を要する適切なタイミングで駆けつけられることは大幅な効率化につながっています。」(山下氏)

フロンティア牧場株式会社
フロンティア牧場株式会社 代表取締役
山下 和洋氏

約1年前に完成したフリーストール牛舎は、ロボット搾乳機や自動給餌機、巨大な餌寄せロボットなどが稼働する近代的で美しい巨大空間だ。牛舎全体を見渡せるカメラが1台と、分娩が近い乳牛たちを見守る分娩監視カメラが2台、設置されている。

牛舎全体を3台のカメラで常に見守っている

事務所のパソコンの分割画面の中から、マウスを使って生まれたばかりの子牛がいる分娩舎を選択し、回転させてズームアップすると、子牛が鮮明に映し出される。操作のシンプルさも、酪農におけるIT化を推し進める条件の一つだ。

ワラ1本まで鮮明に写るカメラで乳牛の様子を事務所から確認することが可能に
①システムから聞こえる鳴声(うめき声)で分娩を事務所で察知
②どの牛で分娩がはじまったのかをカメラでPTZ操作で確認
③分娩の牛を特定し、従業員へ分娩介助の指示。無事分娩完了

実はパナソニックでは、酪農という新しい現場に入った担当者全員が、食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証であるJGAPの指導員資格を取得した。これまで酪農の仕事と全く無縁だったという北村氏はこう話す。

「より現場を理解した上での新しいご提案や、逆にお客様からこれからの酪農のご相談を受けたとき、少しでもお役に立てたらと思っています。今後は気象観測装置と連動し、また一つの画面に気温や室温、モニタリングセンサーなどでさまざまな情報を集め、人が見ていなくてもアラームで分娩をお知らせするなどのシステムも進めたい。IoT化とその先にあるAI化を見据えて、酪農の後継者不足という問題に私たちも使命感を持って取り組んでいきます」(北村氏)

最先端の技術を導入しているフリーストール牛舎

企業型の経営で広がる可能性

酪農の未来のカタチには、パナソニックが酪農業とともに進む技術革新のほかに、もう一つの柱がある。山下氏が描くのは、家族経営が中心の酪農を法人経営に変えていくことだ。自らも、これまでのノウハウを発展させ経営を法人化することで、新しい酪農にチャレンジする山下氏は、次のように語る。

「10年前、離農した牧場を継承したり、離農された方々を雇用して規模を拡大するなかで前身である会社を設立しました。大規模化が進むこれからは、家族経営で子どもが後継者となり農地を守るスタイルではなく、組織力や対外的な信用を得るためにも法人化が必要だと思っています。私は次世代を担う意欲ある酪農家に会社を継いでもらい、組織として地域との大きなプロジェクトに関わって利益を出すことで、これからの酪農業の可能性を広げていきたいと思っています」(山下氏)

北海道の自然豊かな土地を有するフロンティア牧場

山下牧場から山下牧場株式会社、そしてフロンティア牧場株式会社へ。山下氏の開拓者としての強い思いは、人材と最新のテクノロジーを武器に日本の酪農の未来を切り開いていくはずだ。

フロンティア牧場では優秀な人材が日々活躍している