普通の生活にAIシステムが浸透していくことが理想

パナソニックでAIを担当したのは、同社シニアエンジニアの島崎繁氏だ。島崎氏は入社以来、OCR(光学的文字認識)の研究開発に携わり、現在はその知識を活かしてAIプラットフォームの開発に従事する。

パナソニック ソリューションテクノロジー株式会社
AI・アナリティクス部
AIプラットフォーム課
シニアエンジニア
島崎 繁氏

開発担当としてやりがいを感じたという今回のプロジェクトだが、「単純にAIがあればすべて解決という話ではなく、お客様が求めているゴールに沿ってどのようにAIを使うかを提案することがポイントになってきます。AIにもできることとできないことがあり、決して万能ではありませんので、見極めが大事なのです。今回のPBBの件も同様で、実際にやってみないとわからない部分も多かったため、一緒になって話し合いながら進めてきました」(島崎氏)。つまり両社がAIを使って何を達成するかを共有することが重要だったと言う。

お客様のケースに合わせて柔軟に対応できる力は、パナソニックが長年にわたり培ってきた産業・インフラシステムでの豊富な実績によるものだ。この背景を活かし、同社ではICTインフラ技術とIoT技術を核とした新規ソリューション群を次世代事業の重点領域に定めた。その中でデータ分析・AI事業は急成長株の1つとして業績を伸ばしている。

「当社には、工場の製造ラインでの画像解析に携わっていたメンバーもいますので、そうした産業関連の知見も吸収できます。さらに、画像・映像ソリューションはパナソニックグループの中心事業のひとつですから、横断的に協力できる部分も大きい。今回のケースではいかに使いやすいソフトウエアにするかも重要でした。すべてトータルで完結できるところがパナソニックの強みだと考えています」(島崎氏)

航空旅客搭乗橋自動装着システム概要(提供:新明和工業)

もちろん、今回の技術は横展開を見据えた息の長いものである。「お互いに最初の段階から、このソリューションを拡大していきたいとの思いはありました。それもあり、新明和工業さんは非常に高い精度にこだわりを持っていましたので、私たちもその思いに応えるために取り組み、信頼を勝ち取ることができたと思っております。徳島阿波おどり空港の実績をご覧いただき、成田国際空港やチャンギ空港にも新明和工業製の自動装着システムが導入されることになり、そこにパナソニックのAI技術が採用されていることで、世界でも当社の技術が認められたことを実感できました」(島崎氏)。

島崎氏は「人々の普通の生活に我々が作ったAIシステムが浸透していくことが理想」と語る。AIは人間から仕事を奪うのではなく、人間のさらなるパフォーマンスを引き出すための技術――今回の事例は、その仮説を見事に証明してくれた。