パナソニックの技術をフル活用し、価値ある資源として再利用

PETEC 取締役社長 河野宏樹氏は「お客様が使用された家電を引き取り、それを選別して回収した資源をもう一度資源として有効活用しています」と話す。先述したように使用済み家電の金属には鉄、アルミ、銅は言うに及ばず、中には貴重な金も含まれる。まさに“都市鉱山”と言われる所以だ。

パナソニック エコテクノロジーセンター株式会社
取締役社長
河野 宏樹 氏

一方で化学素材のプラスチックも積極的に活用している。実際にパナソニック製品では、冷蔵庫部品、洗濯機の台枠などに再利用されている。さらにこれまでゴミとして捨てられていたプラスチックを固形燃料化する装置を導入するなど、リサイクルの取り組みは一貫している。こうした資源循環型社会の実現に資する思いが、「商品から商品へ」という同社のビジョンへとつながった。

家電を製造する工場を“動脈側”とすれば、PETECは“静脈側”の工場になる。精巧に組み立てられた製品を分解・破砕し、価値ある資源として再利用するためには、当然動脈側とは異なった技術やノウハウが求められる。

河野氏は1つの例として、パナソニックが開発した「高精度樹脂選別システム」を挙げた。さまざまな種類のプラスチックを高速で選別するシステムで、破砕したプラスチックに近赤外線を照射し、そこから跳ね返る波長を瞬時に測定してPS (ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)の3種類を選別。高速エアーを吹きかけて同時に仕分けを行う仕組みだ。

冷蔵庫の解体ライン。冷蔵庫内の部品を手作業で取り出す

「同時に3種類、しかも高速に選別する装置はパナソニックならではだと思います。飛翔解析のアルゴリズムにパナソニックの技術の粋が集まっているんです。ここには近畿2府4県から数多くの使用済み家電が集まってきますので処理スピードも非常に重要。高精度に単一素材を選別できることで、飛躍的に生産性も向上しました」(河野氏)

ただし昨今はデザイン性の高い製品が多くなり、その分、素材の選別に工数がかかるケースも出てきた。これについて河野氏は「パナソニックには優れた画像解析の技術やロボットの技術もあるので、AIやIoTを用いて少しでも効率化を進めていければ」と将来の展望を語る。

またPETECではリサイクル現場の声をもとに、3R(Reduce、Reuse、Recycle)に適した環境配慮型設計を動脈側に提案することもある。「パナソニックの開発設計部門の人たちに足を運んでもらい、回収・選別の現場を見た上でリサイクルしやすい設計をお互いにディスカッションしています」と河野氏。銘板を張り付けていたものからレーザ印刷にしたり、選別する際に混乱しないように素材を明示したり、錆びないビスを使用したりなどの工夫がもたらされた。

エアコンのライン。解体された部品が破砕機へ送られる

子どもたちも興奮する工場見学、そこで高まる資源循環の意識

話を聞く前に工場内を見学したが、そのラインは動脈側と比較しても遜色のない内容だった。とは言え工程自体はリバース(巻き戻し)のような感覚だ。いきなり“ネジを外す”作業から始まり、着々と家電が解体されていく。人手がかかる部分もあるが、ほとんどの工程を機械で自動化していることもあり、整然と作業が進んでいるのが印象的だった。

従業員の作業環境にも人一倍気を使う。例えば10年近く外気にさらされるエアコンの室外機は汚れがひどくホコリも多く付着している。そこで2018年にはエアコンのラインを再編。アシストロボットを活用して重たい室外機を運搬、解体する前に強力なエアーを吹き付け、集塵を行うことで徹底的にホコリをなくす。ライン上では新鮮な空気を循環させるなど、できる限り作業の負荷を取り除くようにした。

室外機のホコリは強力なエアーを吹き付けて取り除く

「リサイクル工場と聞くと“汚い”とのイメージを持っている方が多いと思います。でも、実際に見学に来ると“ここまで清潔にしているんだな”“こんなに機械化が進んで効率よく資源が回収できているんだな”と思われる方がほとんど。PETECでは5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)をしっかりとして、環境に配慮して運営していることを皆さんに理解していただいています」(河野氏)

工場のある加東市は、日本酒米のブランドとして知られる山田錦の一大産地だ。風光明媚な田園地帯に建つ社屋は清潔感があり、外観からはおよそ家電リサイクル工場とは思えない。PETECでは3カ月に1度、地区住民代表や有識者を交えて環境保全協議会を主催し、地域密着型企業として溶け込む。

毎週火・水・木・金と4日間開催している工場見学も、資源循環の理解を深めるための欠かせない施策となっている。小学校高学年から一般まで、年間およそ1万人がPETECを訪れ、これまでに延べ18万6000名が来訪。海外からの見学者も多く、2019年4月16日現在で世界131の国と地域から訪れたという。PETEC総務部 見学担当の藤原みのり氏は「長年愛用された家電が、また新たな資源として生まれ変わる工程はとても見応えがあり、最近では修学旅行の見学コースに入っています。小学校高学年のお子さまから大人の方まで、より多くの方々にリサイクルの重要性を知っていただきたいです」と説明する。

パナソニック エコテクノロジーセンター株式会社
総務部 見学担当
藤原 みのり 氏

河野氏は、このような情報発信もPETECにとって重要だと考える。

「中には、将来こういう仕事に就きたいと言ってくれる子どもたちもいます。毎年来てくれるようなリピーターを増やし、毎年進化しているPETECを体感してほしい。これからはSDGsが主流になってきますが、当然そこでは地球環境保護が重要なテーマの1つになります。つまり我々のやっていることを今後、どんどん広げていく必要があるのです。その姿勢を体現する場所としてPETECを知ってもらいたいですね」(河野氏)

1991年の「環境宣言」、創業100周年に向けた「グリーンプラン2018」など、これまでも意識的に環境活動の行動指針を掲げてきたパナソニック。19年目を迎えた老舗の循環型モノづくり施設は、今後の方向性を探る1つのヒントとなるだろう。

工場全体は安全に見学できるよう専用通路を設けている


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