<この記事を要約すると>

  • 世界の水産資源が危機的な状況にあるなか、パナソニックが日本で初めて社員食堂に、サステナブル・シーフードを継続的に導入
  • SDGsの達成や東京2020大会後に残るレガシーの構築にもつなげたい考え
  • 総務部門の協力で、コストを抑えつつ華やかで魅力的なメニューを開発し、本社食堂では、喫食率30%を常に達成する人気メニュー化を実現
  • 生産から流通まですべての過程で認証取得が必要という課題を克服し、後続企業が導入しやすい環境を実現、さらなる広がりで消費行動の変革を目指す

未来の子どもたちに海の豊かさをつなぐため、「サステナブル・シーフード」のムーブメントを社員食堂から盛り上げたい――。世界の水産資源が危機的な状況にあるなか、日本企業で初めて持続可能な水産物「サステナブル・シーフード」を社員食堂で継続的に導入したパナソニック。給食会社の協力のもと、パイオニアとしてさまざまな課題を解決しながら、後続企業が導入しやすい環境を実現してきた。SDGs(持続可能な開発目標)の達成や東京2020大会のレガシーづくりにもつながる、パナソニックの取り組みに迫った。

SDGsの達成や東京2020大会のレガシーの構築・継承にも貢献

サステナブル・シーフードは、海の生態系に配慮して乱獲をせず、自然破壊が少ない方法で獲られたり、養殖されたりした魚介類のこと。パナソニックが社員食堂で導入しているのは、サステナブル・シーフードの国際的な認証制度である、天然水産物を対象としたMSC(海洋管理協議会)認証と、養殖水産物を対象としたASC(水産養殖管理協議会)認証の魚介類だ。どちらも、海洋保全へと結びついていることが厳密な審査により証明されている。

パナソニックは2018年3月から、本社(大阪府門真市)で月1回の特別メニューとしてサステナブル・シーフードの提供を開始した。現在は国内20拠点の社員食堂で導入しており、昨年度だけで約2万食を提供したという。2020年を目標に、約100カ所ある国内拠点のすべての社員食堂への導入を目指している。

社員食堂で提供されているサステナブル・シーフードのメニュー

フロントランナーとして取り組みを進める、パナソニックの喜納厚介氏は「社員食堂への導入はあくまでスタートだと位置づけています。国内でおよそ10万人いる社員は消費者でもありますから、社員食堂をきっかけに、サステナブル・シーフードの重要性や、MSC、ASC認証について知ってもらい、スーパーなどの社外でも選ぼうという意識を高めてもらうことで、消費行動の変革を起こすことができるのではないかと考えています。他社にもお声掛けしてムーブメントを起こし、ひいてはSDGsや持続可能な社会実現の達成にもつなげていきたい」と語る。

パナソニック株式会社
ブランドコミュニケーション本部
CSR・社会文化部 事業推進課 課長
喜納 厚介氏

FAO(国連食糧農業機関)によると、世界の水産資源の約9割が枯渇状態か限界漁獲状態となっている。背景には、人口増に伴う魚介類の消費量の増加や生態系を無視した乱獲などがあるとされる。危機的な状況を受け、MSC、ASCの取り組みは世界中に広がっており、MSCは世界で370の認証取得があり、天然漁獲量の15%が認証取得漁業によるものとなっている。

一方、日本ではMSC 認証はホタテガイ(北海道)など6漁業、ASC認証は60 養殖場(ともに2019年5月末現在)にとどまっている。イオンなど大手スーパーでMSC、ASC認証の魚介類の取り扱いは増えているものの、消費者の認知度もまだまだ低いのが現状だ。

パナソニックがこの取り組みを始めたきっかけは、社会貢献活動の一環として支援をしていた南三陸のカキの養殖業が日本で初めてASC認証を取得したことだった。もともとWWFジャパンと共に約20年間にわたって「海の豊かさを守る」活動を推進してきたが、生産者への直接的な支援だけでなく、生産したカキを食べることで消費者としても役立ちたいと考えたことが始まりだったという。

「世界的な背景としては、企業もSDGs達成への貢献が強く求められる時代になり、その14番目の目標として『海の豊かさを守ろう』という項目があること。また、東京2020大会の会場や選手村などでは、原則としてサステナブル・シーフードの導入が義務付けられる予定だそうで、30年来、オリンピックのワールドワイド公式パートナーを務めてきた当社として、大会後に残るレガシーの構築、継承にも貢献できると考えました。ちょうど昨年が創業100周年だったことも良いきっかけになり、社員の皆さんに気軽に社会貢献活動をしていただく機会として、総務部門の協力を得られたことも大きなポイントでした」(喜納氏)

オリンピックで初めてMSC認証のサステナブル・シーフードを導入した2012年のロンドン大会後にイギリス全土にムーブメントが広がり、公営施設、学校の3分の1がサステナブル・シーフードを導入。年間2億食の需要を生み出し、ロンドン2012大会最大のレガシーと呼ばれているという。

四方を海に囲まれ、1人当たりの水産物消費量が世界の主要国で3位(2013年、FAO, Eurostat and Eumofa)という日本。だからこそ、「未来の子どもたちに魚を食べる文化をつないでいくためにも、サステナブル・シーフードが当たり前のもの、「常識」になるよう、ぜひ広めていきたい」と喜納氏は力を込める。