華やかでおいしくヘルシーなメニューで認知を拡大

サステナブル・シーフードを導入して1年以上が経つ本社では、月1回の特別メニューに加え、小鉢としても週3回の提供を始めた。社員の間では「サスシー」という呼び方が定着し、「今日はサスシーの日だね」「今回のサスシーメニューは何?」といった声があちこちで聞かれるほど、認知度は高まっているという。通常20%の選択率なら人気メニューといわれる社員食堂で、サステナブル・シーフードの特別メニューは毎回30%を超えており、中には50%に迫るメニューもあった。

「サスシー」の呼び名で特別メニューとして定着している

もともと魚を使ったメニューは人気が低い中、これだけの喫食率を実現している背景には、コストアップを抑えながら、魅力あるメニューを開発する努力が欠かせなかったという。

給食会社と共にメニューの検討を行っているパナソニックの前川まゆみ氏は、「社員はMSC認証の魚は若干価格が高くても環境に良いことを分かっていますが、やはりおいしくてヘルシーで見た目が華やかといった魅力がなければ食べてもらえません。ある程度コストを抑えつつ、いかに見栄えのするメニューにするか、毎回、給食会社さんと試行錯誤しています」と話す。

パナソニック株式会社
本社グループ人事・総務センター
総務課 主務
前川 まゆみ氏

取材当日のサステナブル・シーフードメニュー「キハダマグロの手作りカツとお魚ミンチのドライカレー 雑穀米&10種のVege畑添え~コンソメスープ&フルーツポンチ風付き~」も、2回の試作と3回の打ち合わせを経て生まれた自信作だ。コストのバランスを取ってキハダマグロのカツを少なめにして、その分、魚ミンチのカレーでボリュームアップ。雑穀米と彩りがきれいな野菜サラダでヘルシーさをアピールし、皿数を増やして豪華に見せるなど工夫を凝らしている。

キハダマグロの手作りカツとお魚ミンチのドライカレー 雑穀米&10種のVege畑添え~コンソメスープ&フルーツポンチ風付き~

ポスターなどでのPRはもちろん、見栄えのするカフェ風の食器を総務で新調したことも工夫の一つ。カレーなどの人気メニューや他の食材と組み合わせたり、夏季には冷たいそばにホタテやエビを加えたり、エスニック風のメニューで目先を変えたり、「おいしい、ヘルシー、サスシー」を合言葉に、毎回、流通事情から限定的になる魚種でも飽きさせない華やかなメニューの工夫が継続した人気につながっている。

「スーパーでMSC認証の魚を選んでもらうためには、まずは食堂のサスシーメニューを食べて美味しいと思ってもらわないといけないと考えています。また、給食会社さんにご尽力いただいていますから、多くの社員に食べてもらいたいですし、売れ残りは環境にも良くないので、ついつい力が入ってしまいます。おいしいものを毎回提供していただいているせいか、『サスシーメニュー楽しみ』という声も聞こえるようになってきました。メニューを選択するだけで気軽に社会貢献できるという取り組みは、社員の喜びにもなり、社会貢献活動に積極的な会社に誇りを感じる機会にもなっていると思います」(前川氏)

まずは興味を持って食べてみようという気持ちにさせるメニュー開発のノウハウを広げていくため、全国の拠点の人事・総務部門とのネットワークづくりにも取り組む予定だ。

食堂に設置されたリーフレットと、テーブルに設置された「サステナブル・シーフード」についてのパネル

すべての過程で認証取得の困難さも乗り越えて

メニューの開発以上に、導入にあたって課題となったのは、給食会社をはじめ、輸入、卸売、加工、流通などすべての過程において、認証した水産物を分別・適正管理するCoC認証の取得が必要となることだった。

パナソニックからの呼び掛けに応じ、給食会社として初のCoC認証を取得したエームサービスの吉岡正登氏は「認証取得に始まり、運用体制の確立、物流面でのCoC認証の確保、社員食堂で使える魚種の少なさ、メニューの開発、価格調整など課題は多く、これほど大変だとは思いませんでした」とパイオニアとしての苦労を口にする。

エームサービス株式会社
品質統括センター
環境マネジメント室
チーフ
吉岡 正登氏

例えば、今年3月に初めて南三陸のカキフライを社員食堂で提供したが、これもフライにするためのカキの加工をする工場のCoC認証を待って、ようやく実現したものだ。認証魚を取り扱う取引先でも量販店向けの在庫はあるが、業務用の取引は初めてのため在庫がなく、水揚げの時期を待つなど、仕入れのルートを確保する難しさがあるという。

また、業務用の取り扱いがないため、家庭向けに個包装されたものを大量に処理する手間も発生。何百人が一斉に来るため、ある程度先に盛り付けておかなければいけないが、生ものは温度管理が必要だったり、盛り付けの作業工程が多かったり、積み重ねられない状態だったりと、食堂の現場に臨機応変さが求められることも多く、一つ一つクリアしてきた。

「ただ、最近は『業務用部門も在庫を持とうと思います』『小さいロットでの取引が可能になりました』などと言われることが多くなり、CoC認証の広がりや、業務用の需要が他からも出てきていることを実感しています。仕入れの調達先も多様化して、最初は6か7だった魚種も12ほどに増えてきました」と吉岡氏。

エームサービスは、もともとスポーツの国際大会での食事提供の経験が豊富で、過去の大会で採用されているサステナブル・シーフードに関心を寄せていたという。ただ、「おいしい」「安全」ではなく「持続可能性」がテーマなだけに、クライアントにアピールするのは難しいと考えていたそうだ。

「ところが今回、パナソニック様から逆にお声掛けいただいたので、ぜひやらせていただきたいとお伝えしました。食を提供する企業として、持続可能性に配慮した水産物を選択しながら、水産資源を次世代につなげていくことは使命だと思っています。今後は、パナソニック様と一緒に取組みを進めながら、高齢者施設や病院など他のクライアントからの要望にも応えていけたらと考えています」(吉岡氏)

サステナブル・シーフードを導入している食堂の様子(パナソニック本社)

他企業のほか、地方公共団体や高齢者住宅などへの広がりも目指す

パナソニックは、エームサービス以外の給食会社にも認証取得の提案を行っており、現在、大手を含む7社(西洋フード・コンパスグループ、グリーンハウス、魚国総本社 等)の給食会社が認証を取得した。このため、他企業の社員食堂でも導入しやすくなり、損保ジャパン日本興亜、デンソー、JXTGホールディングスが社員食堂での導入を開始。企業にサステナブル・シーフード導入の動きが広がってきた。

さらには、地方自治体や公共施設、病院、高齢者住宅の食堂や学校給食、レストランなどにも広がっていけば、需要が増え、それによって生産者の取り組みが進む。そして持続可能な社会の実現へ――。パナソニックの取り組みは、そこまでを視野に入れた、まさに社会を変える挑戦なのだ。

サステナブル・シーフードの普及は、衰退しつつある日本の漁業を救う可能性もある。喜納氏は「南三陸のカキ養殖は、東日本大震災で養殖のイカダが流され、復興の際にイカダを従来の3分の1に減らしたことが、ASC認証を取得につながりました。それによって、持続可能な環境になるとともに、カキの生育スピードが3倍になって品質が良くなり価格が上昇。一方で、イカダが減ったので労働時間は減り、若い世代も帰ってくるという、社会的な価値と経済的な価値がバランスした、とても良い事例になっています。2025年には大阪万博もありますから、直近の東京2020大会での盛り上がりに加え、継続的に、サステナブル・シーフードの普及に向けて取り組んでいきたい」と話している。

食堂前に特設コーナーを設け、サステナブル・シーフードに興味を持ってもらうための工夫が凝らされている


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