エネマネで街全体の消費電力平準化

性能の高さと並んで評価されているのは、そのサイズだ。目標スペックは900×500×1800㎜。三井不動産レジデンシャルの髙木洋一郎氏は「HARUMI FLAG」の住宅開発を担う民間事業者グループの代表企業の立場で、それを都市型でコンパクトと評価する。

「水素を活用した街づくりという観点から言えば、プレイヤーをどう決めればいいかという点が課題でした。純水素型燃料電池を需要者側としてどう選ぶかという点でも、カタログや発注実績を基に決めるものではありません。将来のことですから、何を開発しているか、どこまでできるか、確認していかないといけません。そうした中でパナソニックでは、住宅街区の一角という設置環境にマッチした都市型の製品を先んじて開発していました。それが、目に留まったのです」

三井不動産レジデンシャル株式会社
東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部 推進室 主管
髙木 洋一郎氏

住宅開発を担う民間事業者グループでは分譲棟各住戸に設置する家庭用燃料電池「エネファーム」にもパナソニック製の最新機種を導入する。各住戸では家庭用蓄電システムや同じくパナソニック製のHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と組み合わせ、家庭で消費する電力の最適制御を行う。

家庭用燃料電池「エネファーム」で発電した電気は、電力会社から購入した電気とあわせて住戸内に。
発電時の熱もお風呂やキッチンなどで使用することが可能

「HARUMI FLAG」では水素を活用するとはいっても、それだけに頼るわけではない。区域内には系統電力も引き込まれる。現在建設中の高層マンション21棟の共用部には太陽光発電システムや蓄電システムも設置される。これらを組み合わせながら、街全体の管理組合や街区単位の管理組合など街区管理者側が別個のエネルギーマネジメントシステムを利用し、電力消費の平準化を図っていく。

家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」(参考写真)

髙木氏は「街区共用部の電力をMEMS(マンションエネルギーマネジメントシステム)で管理する一方で、街全体のサーバーに各街区のデータを取り込み、全体として電力消費にどのようなトレンドがあるか確認できるようにし、系統電力への依存度やエネルギーコストをできるだけ抑える運用を目指します」と将来をにらむ。街区単位に設置するこのMEMSにも、パナソニックの製品を導入する。

こうした水素インフラを本格的に社会実装した街は、「HARUMI FLAG」が国内で初めてだ。エネルギー整備計画の段階では水素供給事業はガス事業か電気事業か、位置付けが明確ではなかったが、ここではガス事業法の適用を受けるガス事業という整理がつけられた。パイプラインの敷設に関する技術基準には、中圧ガス導管に適用される技術基準が原則として適用される。

国内初の試みだけに検討・協議に苦労

ただガス事業法を所管する経済産業省では、パイプラインでの水素供給に関する安全性は別途評価する必要があると判断し、水素供給設備に関してはすでに委員会を立ち上げ、その安全性を評価してきた。そこで認められた仕様は、中圧ガス導管と同じ仕様に一定の防護措置を加えたもの。具体的には、埋設する深さを120cm以上に深くした上で、道路上の各種工事でパイプラインを損傷することがないように導管上に防護用の鉄板を巡らせた。

また安全確保の観点から、都市ガス同様、地震計、圧力計等を設置し、供給状況を監視する。晴海エコエネルギー株式会社の担当も兼務する東京ガスの福地文彦氏は「センサーにて異常値を検出すると、速やかに水素ステーション内に設置する供給設備にて供給遮断する仕組みです」と説明する。

東京ガス株式会社
エネルギーソリューション本部 エネルギー企画部 エネルギー公共グループ 課長
福地 文彦氏

水素供給事業者としての苦労は、国内初の取り組みゆえにこうした点を一つひとつ検討・協議しながら決めなければならなかった点という。「ガス事業法において純水素供給への対応実績がないため、各種の規制をどう解釈し、どう扱うか、課題が生じます。大きな山場は超えましたが、運用段階での課題には今後も対応していくことになりそうです」(福地氏)

水素を活用した街づくりの未来を、どうみるか――。

エネルギー事業者としては、「さまざまなエネルギーがある中で低炭素社会づくりに何がどう貢献できるか、見定めている段階です。水素はその選択肢の一つ、可能性はあると思います」(福地氏)とみる。街づくりを担う開発事業者からは、「水素は蓄電池のような貯蓄性の高さが魅力です。開発区域内に一定量を貯蓄できれば、災害時も安心です。純水素型燃料電池が生み出す熱も生かせる複合用途の開発に向いているのではないでしょうか」(髙木氏)との指摘も聞かれる。

「HARUMI FLAG」を起点に国内外に広がりを見せていくであろう水素を活用した街づくり。パナソニックではそれをまず純水素型燃料電池の開発で後押ししていく。今後は、水素を効率良く「つかう技術」に加え、水素を「つくる技術」や「ためる技術」の開発も本格化させていく方針だ。

各街区に設置される純水素型燃料電池(PEFC)。水素を直接取り込み、発電する燃料電池システム

≫ 前編はこちら 東京の未来をけん引する街 「HARUMI FLAG」(前編)