誰もが歓びを分かち合い、活き活きとくらす「共生社会」へ
「みんなで“AKARI”アクション」の新たな挑戦

パナソニックは2013年から「ソーラーランタン10万台プロジェクト」をスタートし、新興国や途上国の無電化地域、電力事情の悪い地域にあかりを届ける活動を行っている。創業100周年を迎えた2018年1月には、アジアやアフリカなど30カ国の131団体・機関を通じ、10万台超の寄贈を達成した。

カンボジアには2014年度から約1万3000台を20数団体を通じて寄贈。そうした団体のひとつが、今回取材したコードンタイ村でも支援を行っているNPO団体「ライフ・ウィズ・ディグニティ」だ。プノンペンにあるオフィスでプログラムコーディネーターのトリー・コング氏に話を聞いた。

「我々は、厳しい環境にある人々の生活を改善するために活動しています。身体障害者や女性など弱い立場にある人が生計を立てるお手伝いをしたり、災害に強いコミュニティづくりを支援したり、出稼ぎに行く人たちが安全に出かけられるよう指導したりしています」

ライフ・ウィズ・ディグニティのプノンペン本部でプログラムコーディネーターを務めるトリー・コング氏

今、コードンタイ村など支援している村では何が問題になっているのか。コング氏は次のように説明する。

「一つは教育の問題です。貧しい家庭では子どもを学校に行かせることができないのです。カンボジアでは6歳から9年間の義務教育を受けることが定められていますが、小学校に入学することすらできない子どももいます。さらに学年が進むと、家での仕事が増え勉強する時間がなくなるとついていけなくなり、学校に行かなくなってしまうのです」

日本の外務省の情報によれば、カンボジアの小学校(第1~第6学年:6歳~11歳)の就学率は約77%、中学校(第7~第9学年:12歳~14歳)の就学率は約42%、高等学校は約20%、大学(高等教育)に至っては0.7~1.0%程度という。これは都市部も含めた全体の数字であるため、コードンタイ村のような農村地域ではこれを大きく下回ると推測される。

しかし、こうした農村の教育問題に、ソーラーランタンは変化をもたらしているようだ。コング氏は続ける。

「パナソニックさんにはソーラーランタンを提供していただき、たいへん感謝しています。子どもがあかりの下で長い時間勉強できるようになり、学校の勉強についていけるようになったと親御さんたちは喜んでいます。高校や大学へ進学する子どもたちが増えることを我々も期待しています」

教育以外にも、医療や貯金、食べ物やお祭りのお供えなど絶対的な収入が少ないために苦労する場面は多いという。そんな中、ソーラーランタンをうまく使うことで夜分に牛を世話したりバナナチップを作ることができるようになり、収入が増え生活水準が改善したそうだ。

家族が出稼ぎに行かずにすむよう、農作業などによる収入を増やすことが村人たちの目標のひとつ

「村の未来を担うのは最終的には村人たちです。私たちは彼らと心を通わせ、絆を深めながら、村の発展に尽力していきます。これからも日本のみなさんのご支援をお願いしたいと思います」

社員の企業市民としての自覚を高める

「ソーラーランタン10万台プロジェクト」完遂後の2018年からは、新たに「みんなで“AKARI”アクション」としてスタートを切った。あかりを届ける活動をパナソニックの社員だけでなく一般の人にも参加できるようにしたのが最大の特徴だ。

「以前から、活動に参加したいという社員の声が多くありました。そこで2014年に福利厚生のカフェテリアポイントをソーラーランタンのプロジェクトに寄付できる仕組みを作ったところ、4年で約4300名の社員が寄付をして3500台のランタンをお届けしてきました。さらに2016年からは社員がボランティアでソーラーランタンの寄贈先の村を訪問するという仕組みを開始し、3年間で3カ国に12人を派遣しました。1回に100名以上の応募が集まります」と、パナソニックの田中氏は社員の企業市民としての自覚の高まりを感じている。

パナソニックCSR・社会文化部 主務の田中典子氏

2019年2月に田中氏は4名の社員とともに、カンボジアのコンポンチャム州のある村を訪れた。30代から50代のお母さんたちが、識字教室に集まり、ソーラーランタンのあかりを使って夜遅くまで熱心に勉強する姿に、社員たちは大いに感銘を受けたという。

海外ボランティア特派員4名が、カンボジアのコンポンチャム州を視察した

「暗闇の中、子どもを抱いたお母さんが、一人また一人と、ソーラーランタンを点けて教室に集まってくるのです。字が読めないと、よい仕事が得られなかったり、だまされたりすることがあるので勉強したいと。彼女たちは子どものころ、学校に行きたくても行けなかった。だから今、勉強して収入を増やし、生活をよくしたいと一生懸命なのです」(田中氏)。

参加した社員たちは「あかりの力を改めて痛感した」「あかりが役立ち、喜んでもらっていることを実感した」と、ホームページやフェイスブックなどでで発信。みんなで“AKARI”アクションが企業として取り組む意義を共有した。

一般の人でも、古本やCD/DVDによる寄付で活動に参加できる。不要になった本5冊以上で、電話一本で無料で引き取りにきてもらえ、その代金が寄付される仕組みだ。手軽にあかりを届ける活動に参加できることから、2018年3月からの2019年3月までに約2万3000冊が寄贈された。これらの寄付によってカンボジアに新たに90台のソーラーランタンが贈られた。

「みんなで“AKARI”アクション」で集まった寄付金によって、カンボジアの障がい者を扶養する世帯などにもソーラーランタンが寄贈された

「パートナーシップ」が成功の鍵

企業が社会貢献活動に取り組むうえで、鍵になるもの何か。田中氏が大切にしているのは、パートナーシップという。

「地域によって必要としている支援は実に様々です。教育や保健の分野や、女性の就労支援などに注力してきていますが、国や地域によって抱える社会課題は異なります。アジアやアフリカ諸国などの無電化地域の状況を一番よく知っているのはNPOや国連機関などです。どの団体とパートナーシップで協働して取組むかが非常に重要なポイントと考えています。

パナソニックは、現場の課題を熟知され、その解決のために活動を行うNPOや国連機関との協働はとても心強く、責任ある活動を行うために、とても大切であると考えています。これからも、多くの人々とのパートナーシップの下、誰もが活き活きとくらせる『共生社会』を目指して取り組んでいきたいと思います」と、田中氏は未来を見据えた。