損得勘定を超え、“現場目線”でともにニーズを解決する

宮古島のスマートコミュニティ実証事業とパナソニックの接点は、2016年のエコキュート選定時に遡る。パナソニックの西川弘記氏のもとに、比嘉氏がかけた1本の電話がきっかけだった。

「比嘉さんが携帯電話にかけてきて、『エコキュートで太陽光エネルギーのピークを吸収しながら再エネをコントロールしたい』と話し始めたんです。びっくりしましたよ。当時、私もまったく同じことを考えていたのですから。そこで意気投合して、2日後には現地に飛んで打ち合わせをしました」(西川氏)

パナソニック株式会社
ライフソリューションズ社
コミュニケーション部 統合プランニング課
兼 スマートシティ推進担当
主任技師
西川 弘記氏

パナソニックの中でエネルギー関連プロジェクトに携わってきた西川氏は、再エネに関する知識も豊富だ。「太陽光エネルギーを効率的に分散して使用することで社会的負荷を軽減していくことが今後の在り方。安定的かつ持続性があるエネルギー供給を理想とする視点は比嘉さんと一致しています」(西川氏)

前述の通り、2016年からの模擬実証では複数ベンダーのエコキュートを試験したが、2018年からのフィールド実証ではパナソニック製品が選ばれた。比嘉氏によれば「実証の結果、我々の制御方法に最も適していたから」だという。一方の西川氏は「パナソニックの機器を売りたいから参加しているのではなく、まずはお客さまの希望を叶える方法を一緒に考えていくのが我々のスタンス。とくにこうした横断的なプロジェクトでは一社独占の考えだと上手く行きません」と、改めてパナソニックの姿勢を強調する。

市営住宅に設置されたネットワーク型エコキュートは需給調整と温水提供を兼ねる

以降、比嘉氏とパナソニックの関係は深まり、自家消費型モデルとエネルギー調整をより確実なものとするために、システムの中に蓄電池を加えようと活発な意見交換を続けている。上手く進めば、2019年度後半から着手する予定だ。昼間の余剰電力を蓄電池に貯めておくことで、利用量の多い夜間に消費することができる。毎年のように深刻な台風被害にさらされる宮古島では停電のリスクも大きい。このことから、災害時の非常用電源としての活用も見込む。事実、パネル設置の際には台風対策をしっかりと考慮した工事を行った。

「家電や住宅建材で蓄積してきた“現場のデータ”を持っていることがパナソニックの強み。さらに地域の電気店や電気工事会社と築いてきた地場のネットワークがあります。再エネや環境問題の解決は美しい言葉で語られがちですが、私は形容詞がついた具体的な解決法を示したい。今回のように、現場目線で志が同じ仲間たちと壮大な社会実験に関わることができるのはとても幸せです」――西川氏はそう話す。

下地第2与那覇市営住宅2

比嘉氏は、短期的な損得勘定を超えた結びつきを「一緒に次のステージに進むための心強いパートナー」と評した。「毎月のようにミーティングを重ねてお互いにヒントを与えあっています。複数ベンダーが前提とは言え、パナソニックとの協業のおかげでここまで進化することができました。最適な蓄電池の開発でもともに進化していきたい」(比嘉氏)。そして目指す未来をこのように続けた。

「2050年の時点でも、電気代を意識することなく同じように使えることが目標。そのためには安心して低コストかつ潤沢にエネルギーを用意しておく必要があります。プロジェクトが始まったこの8年間だけを見てもクラウド、IoTなど目まぐるしく技術が進歩し、やりたいことが実現可能になりました。今年度は蓄電池を上手く取り込み、次はEV(電気自動車)も視野に入れながら次へと進んでいきます」(比嘉氏)

全体を取りまとめる三上氏は「我々、公共セクターの人間は当然ですが、このプロジェクトでは、民間の皆さんも持っている技術で何ができるかではなく、この地域に何が求められているかというニーズをもとに、解決策を生み出している。本当にメンバーに恵まれています」と、プロジェクトの手応えを感じている。本格的な社会実装が始まった今、官民の熱意がどのように宮古島の再エネ事業を育んでいくのか。超えるべきハードルは多いが、成功を祈りたい。なぜならその成果は、日本社会のエネルギー革命にも直結するものだからだ。