<この記事を要約すると>

  • エネルギー自給率が3%ほどの宮古島では2018年に「エコアイランド宮古島宣言2.0」を発表。2030年に22.1%、2050年に48.9%と、具体的な未来のエネルギー自給率を定めた
  • 未来を見据え、2011年には「宮古島市島嶼(しょ)型スマートコミュニティ実証事業」がスタート。だが第一期となる最初の5年間は苦難の連続だったという
  • 2016年の第二期からは方針を変更し、住居への太陽光パネル/エコキュート設置による分散型エネルギーの制御に着手。2018年には市営住宅に実装され、徐々に効果が現れている
  • 壮大な目標に向け、宮古島市、地元のエネルギー企業、パナソニックがコミットする官民共同プロジェクトの裏側に迫った

沖縄本島から南西に300km、台湾とのちょうど中間に位置する宮古島。離島という条件から約97%のエネルギーは島外からの化石燃料に依存している。この状況に危機感を抱き、2018年3月には2050年に約50%を太陽光発電と風力発電で賄えるようにするシナリオを打ち出した。社会実装が始まった現場を訪れ、関係者の思いを聞いた。

日本の南国、宮古島が目指すエコアイランド

紺碧の海に囲まれた沖縄県の宮古島。年間平均気温23.3度、亜熱帯性気候に属する“日本の南国”である。

紺碧の海に囲まれた沖縄県宮古島

2008年、中心を成す宮古島市は「エコアイランド宮古島宣言」を公布。以降、島の環境を守り、限りある資源を有効活用することを心がけてきた。10年目を迎えた2018年には「エコアイランド宮古島宣言2.0」を発表し、より市民がイメージしやすい明確な5つのゴールを設けている。

ゴールの1つに掲げたのが「エネルギー自給率の向上」だ。2015年のエネルギー自給率はわずか2.99%。離島である宮古島はエネルギーのほとんどを島外からの運搬に頼らざるを得ず、エネルギーコストが高い現実がある。さらに周辺諸島を含む全体の人口は約5万5000人と経済規模も小さいことから、発電のスケールメリットを活かすことができない。原油価格が高騰したり、災害などの理由により定期的な燃料運搬に問題が起きたりすれば、少なからず市民生活に影響が出てしまう。

~ 千年先の、未来へ。 ~ エコアイランド宮古島の5つのゴール

そこで宮古島市では2030年に22.1%、2050年に48.9%と、具体的な未来のエネルギー自給率を定めた。決して簡単な目標ではない。しかしこの数字に向け、これまで着実に自給率向上の取り組みを進めてきた歴史がある。

2011年には沖縄県の事業を受託する形で「宮古島市島嶼(しょ)型スマートコミュニティ実証事業」がスタート。島の太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)を利用して、電力消費の見える化、電力需要の制御によるエネルギーマネージメントシステム(EMS)の実現に着手した。ここでは、すでに設置済みの風力発電機やメガソーラー(大規模太陽光発電所)を活用した。

運用は2013年10月から始まったものの、当初思い描いていた成果が生まれなかった。EMS実証では200世帯の家庭、25の事業所、農地を対象としたが、負荷制御が可能な設備がないため電力の需給バランスを図るためのデマンドレスポンス(DR)が上手く機能しなかったのだ。ここから、再エネ活用における需給最適化の問題が浮き彫りとなった。

プロジェクトの立ち上げから携わってきた宮古島市役所の三上暁氏は、かつての状況をこう振り返る。

「初めての試みゆえEMSを誰が担うのか、スタート時点では空席のまま進めてきた経緯があります。我々も最大限の努力をしていましたが、技術的な解決策が見当たりませんでした。そこでシステム評価をしてくれる専門家に依頼することにしたのです」(三上氏)

宮古島市役所
企画政策部 エコアイランド推進課
エコアイランド推進係
係長
三上 暁氏

白羽の矢が立ったのは、ネクステムズ代表取締役社長の比嘉直人氏。依頼を受けた2013年当時は、沖縄電力グループの沖縄エネテックに在籍していた。比嘉氏は宮古島メガソーラー設備のシステム設計や、沖縄電力の再エネ発電設備導入事業に関わってきた技術者であり、宮古島市のリクエストにはまさに適任だった。

「監視を続けるうちに、この制御では限界があると気づきました。電力の需要が逼迫したとき、人間が介在してメールで節電依頼をするしかなかったんです。それでなくても太陽光は不確実なエネルギーです。その中でどうやって省エネを確立しながらDR効果を生み出すかに頭を悩ませました」(比嘉氏)

株式会社 ネクステムズ
代表取締役社長
比嘉 直人氏

鍵は「不確実な再エネをいかに制御するか」にある

難航した2015年までのプロジェクト第一期が終わる頃、比嘉氏は宮古島市に「より高度なステージで新たなギアで臨むかどうか」を問いかけた。これに対し三上氏は「宮古島の将来を考えたらここで終わるわけにはいかない。太陽光を中心とした再エネによる電力システム構築に向けて加速していきたい」と回答。これを受け、一念発起した比嘉氏はネクステムズを設立。2016年からスマートコミュニティ実証事業は第二期へと突入した。

第二期の実証ではリモートで直接制御するEMSが必要との結論に至った。解決に資するソリューションとしてたどり着いたのが、太陽光パネルとエコキュートだった。これを住居に分散エネルギー機器として設置し、電気を使う消費者が不確実な太陽光エネルギーの変化に合わせて使い方を調整することにしたのだ。

まずはリモート環境を整備するためにネクステムズがクラウド制御システムを開発し、2017年度までに「エコパーク宮古」にて模擬実証を行った。ここではスマートハウス向けの標準通信プロトコルであるECHONET Liteを用いて複数ベンダーの機器を検証。2018年度からはフィールド実証へと移行し、宮古島市内の市営住宅40棟202戸を対象に太陽光パネルとエコキュートを設置した。現在、120戸の家庭で利用されている。

「エコパーク宮古」にて各社エコキュートで模擬運用実験を実施

市営住宅のスキームでは、エコキュートのリモート監視と制御をネクステムズが担い、電力消費の細やかな調整を図る。画期的なのは、ネクステムズの子会社である宮古島未来エネルギーが「第三者所有モデル」によって無料でシステムを設置したことだ。これにより住民は初期負担がなく太陽光エネルギーを自家消費に使え、宮古島未来エネルギーから温水熱を購入できる。余剰電力は沖縄電力の電力系統に販売する。そこには比嘉氏の次のような思いがある。

「まずは宮古島で永続的に使える技術でなくてはならない。それには補助金に頼らず、民間でこのモデルを普及させることが重要と考えたのです。これまで太陽光はFIT(固定価格買い取り制度)に支えられてきましたが、2019年11月からは順次卒FITも発生し、売電目的では成立しにくくなりました。だからこそFITに頼らない自家消費型へ切り替えるべき時期に来ています。固定価格ではない、自家消費型の太陽光の新しい価値が市民権を得るようになれば、全国各地で同じスキームで価値が生み出されるようになります。そうなった未来は、“エネルギーの地産地消”が実現するはずです」(比嘉氏)

宮古島未来エネルギーが太陽電池モジュールとエコキュートなどを無料で設置し(第三者所有設備)、発電した電気を住宅に販売する下地上地市営住宅10棟

国が2018年の第5次エネルギー基本計画で再エネを主力電源として打ち出し、RE100やEV100など、企業間でも再エネ利用に対する意識が高まるといった時代の後押しもある。三上氏は行政の立場から、市営住宅のフィールド実証についてこう評価する。

「いよいよ住民に再エネが供給されるところまで来たのは非常に感慨深い。しかもFIT目的ではない自家消費にフォーカスしたものです。これこそ次世代のエネルギー供給のあるべき姿であり、その第一歩の社会実装だと思います」(三上氏)