<この記事を要約すると>

  • 急ピッチで教育のICT化が進む昨今、自治体により整備・導入のバラツキがあることが問題となっている
  • 一方、意識の高い地域の町も存在する。今回の主役である長崎県川棚町は教育のICT化の優等生。すでに児童・生徒2人に1台の割合でタブレット端末を配布済みだ
  • 2020年7月には、今後の協働学習に欠かせない最新式の電子黒板を55台導入。町内4つの小中学校で有効活用していく
  • 原爆の日に彼の地を訪れ、実際の電子黒板の授業を見学。電子黒板が教育ICTをどのように促進し、現場を変えていくかを関係者に聞いた

文部科学省主導で進められてきた教育現場へのICT環境の導入は、コロナ禍でさらに重要性を増すこととなった。2022年までに大型掲示装置を1教室に1台設置という計画もある中、長崎県川棚町の教育委員会はパナソニック製の電子黒板「BQ1シリーズ」55台の導入を決定した。人口1万4000人に満たない小さな町の教育現場を現地にて取材。ICT教育の推進が、教育現場にどんな希望の光をもたらすか――関係者に話を聞く。

長崎県の小さな町は教育ICT化の優等生

現在、急ピッチで教育のICT化が進む。核となるのは小中学生に1人1台の教育用コンピューターを配布し、高速な校内ネットワーク環境を整備する「GIGAスクール構想」だ。新型コロナウイルスの影響によってオンライン授業の必要性が高まったことも重なり、政府は前倒しで取り組みを加速している。また、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されるなど、2020年はさまざまな観点から“デジタル教育の夜明け”の年となった。

むろん、これまでも全国の教育現場でICT環境整備は行われてきた。だが自治体による温度差が激しく、公平性に欠けていたことも事実である。毎年、文部科学省が実施している「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査(概要)」によれば、教育用コンピューターの1台あたりの児童生徒数は1位の佐賀県が1.9人/台であるのに対し、最下位の愛知県は7.5人/台とおよそ4倍の開きがある(2019年3月時点)。GIGAスクール構想にはこの格差を是正し、誰もがICT機器を活用して次世代の学びを促進する狙いもある。

こうしたバラツキが見られる中、本記事の舞台となる長崎県川棚町は教育のICT化に関しては優等生と言える。人口1万4千人足らずの小さな町ながら、日経BPが調査した「公立学校情報化ランキング2019」では1700を超える自治体の中で全国28位の成績を収めた。県都の長崎市が222位、隣接する長崎第二の都市の佐世保市が308位であることを考えると、いかに恵まれたICT環境を有しているかがわかるだろう。

1700を超える自治体の中で全国28位の成績を収めた

2020年7月、川棚町は町内3つの小学校、1つの中学校に合計55台の電子黒板を導入し、新たな取り組みを開始した。選んだのはパナソニックが「JOINBOARD」の名で展開する最新モデル「BQ1シリーズ」(以下、BQ1)。65インチ・75インチの大画面ラインナップを揃え(川棚町には65インチを導入)、4Kの超高精細画質、10点同時描画、各種の入力デバイス対応など“こんな機能がほしい”という教育現場のニーズに応えたものだ。川棚町では、今後のスタンダードとなる協働学習におけるハブとして有効活用していく。

タッチスクリーン液晶ディスプレイ「BQ1シリーズ」

長崎原爆の日、電子黒板で校長先生が一斉配信

2020年8月9日――長崎市への原爆投下から75年を迎えた原爆の日。導入校の1つである川棚町立石木小学校を訪問し、電子黒板活用の現場を見学する機会を得た。この日は、4年生の教室からBQ1の「Screen Transfer(スクリーントランスファー)機能」を使って、平和学習の成果を各教室に配信した。

川棚町立石木小学校

スクリーントランスファー機能では、有線LAN経由により最大8台まで各教室の電子黒板に映像を配信できる。暑さが厳しい折に体育館に集まることは、熱中症のリスクがあるとともに集中力の低下を招く。加えて昨今はソーシャルディスタンスが必須ということもあり、涼しい各教室で話を聞ける一斉配信は、児童の健康を守る上でも意味があった。

カメラで撮影された映像はスクリーントランスファー機能により各教室に一斉配信された

授業ではより真価が発揮された。平和への思いについて時間内で作文を書く際には、BQ1に大きくタイマーを表示。その後の理科の授業では春と夏の気温グラフを4分割画面で表示し、「どのグラフが何月のものか」を児童が楽しそうにタッチしながら答える姿が印象的だった。分割したグラフを一瞬で重ね合わせて寒暖差を比較するなど、電子黒板ならではの教え方も斬新に映る。

教室中央にタイマーを表示させることができるのも電子黒板ならでは
2つのグラフを重ね合わせ寒暖差を比較
電子黒板に児童自ら記入するのもお手のもの

先生と児童、双方向のコミュニケーションを活性化

石木小学校 校長の寺地久弥氏は「7月に導入したばかりとあって、実践は今日が初めて。しかし一斉配信で情報を共有したり、理科の授業で簡単にグラフを重ねたりと、短時間でも電子黒板の有用性を感じることができました」と振り返った。これまでのICT機器は先生が扱って生徒は受け身のまま、つまりアナログがデジタルに置き換わっただけのケースが多かったが、BQ1であれば児童が指で直接画面に触れて、先生と双方向でコミュニケーションしながらの学習が可能になる。寺地氏は「デジタルに対する興味・関心を引く観点からも非常に効果的なツール」と評価する。

川棚町立石木小学校
校長
寺地 久弥氏

先に述べたように、川棚町には積極的に教育のICT化を推進してきた歴史がある。2010年にはパナソニック製の大型ディスプレイを各学校に設置。以降も段階的に整備を進め、最終的には児童・生徒2人に1台の割合でタブレット端末を配布している。川棚町教育委員会 教育長の竹下修治氏は「少子化の影響で子どもたちが減少する中、一人ひとりを丁寧にサポートし、10年後、20年後に夢が叶うような教育を進めたい。その一環としてICT教育を位置づけています」と町のビジョンを語る。

川棚町教育委員会
教育長
竹下 修治氏

導入では、川棚町の20年来のパートナーである九州教具が尽力した。九州教具の福浦直樹氏は「2010年にもパナソニックのディスプレイを導入するお手伝いをしましたが、それ以降、1台も壊れていません。10年間使っても壊れない安心感は大きい」と、パナソニックに対する信頼を寄せる。その上で最大の決め手になったのは「PCレスで操作できる点」だった。

「これまで20年間、川棚町に関わって教育ICTの発展を支えてきましたが、操作が苦手な先生もいらっしゃいます。そうした苦手意識を持つ先生たちにも“これは使える”と感じていただくためには、いかに操作のハードルを下げるかが鍵になってきます。BQ1はPCを接続せずに、直感的に画面を触って教えることができるため、川棚町への提案に最も適していました」(福浦氏)

九州教具株式会社
Q-bic ソリューションズ
営業推進部
シニア・ソリューションアドバイザー
福浦 直樹氏

九州教具ではBQ1のパンフレットを見せながら具体的な授業内容のイメージを教育委員会に説明した。竹下氏も「先生にとって最も負担なのはPC接続の設定。起動してすぐに利用できる便利さ、操作の簡便さは現場の要望にフィットしていました」と同意する。町では2020年9月から外部のICT支援員を雇用し、各学校で研修を開始。ICT機器を活用した授業のアドバイスを行う。このICTサポートも九州教具が提案し、町が予算を確保することで実現した。「宝の持ち腐れになってしまうことが一番もったいない」(竹下氏)との思いがあるからだ。