<この記事を要約すると>
- パナソニックでは、2016年にクラウド型農業管理システム「栽培ナビ」をスタートさせ、生産者と協力しながら着実な実績を上げている
- 2020年5月には、有機農業にも有効活用できる土壌・作物診断サービス「栽培ナビ ドクター」をスタートさせた
- 利用者は、栽培の履歴や気温や地温などの条件や、土の状態、作物の出来などを「見える化」し、そのデータを分析して栽培技術の向上に役立てている
- 実際に、品質や収穫量を上げたり、今までの実績を変えるほどの成果を出したりする生産者が続々と現れている
農業の名人は、高い技術と長年培った経験・勘で、とびきり旨い米や野菜・果物を作る。こうした栽培技術は誰でもマネできるものではない。高品質と高収益を両立させられるのは一部の生産者に限られ、新規就農者にとっては高いハードルになっている。こうした状況を覆そうと、独自のICTツールと土壌・作物分析サービスを提供しているのがパナソニック アプライアンス社だ。同社の事業開発センター アグリ事業プロジェクトでは、2016年12月からクラウド型農業管理システム「栽培ナビ」を提供し、確かな実績を挙げてきた。さらに、今年5月には有機農業にも有効活用できる土壌・作物診断サービス「栽培ナビ ドクター」を新しく投入。栽培と土壌の両方を「見える化」することで経験が浅い生産者をサポートし、農業の新たな可能性を切り開こうとしている。
営農を支える「栽培ナビ」、土作りを担う「栽培ナビ ドクター」
農家の高齢化が進み、担い手も耕作地もどんどん減り続ける日本の農業。最近では、法人の増加や若手経営者の参入によって多少持ち直す傾向が見えるものの、数値だけを見れば産業としての農業は衰退の一途をたどっている。何らかの対策が必要とされる中、弱体化をストップさせるカギになると期待されているのが先端技術を活用したスマート農業だ。
ICTやIoTを使った営農システムやツール、高機能ハウス・植物工場、ロボット農機による自動化など、大規模生産者や意欲的な若手農家が様々なツールや技術を取り入れ現場で使い始めている。これらの普及がさらに進み、誰でも使えるようになってくれば、国内農業の弱体化に歯止めがかかるかもしれない。また、他分野からの参入障壁は下がり、競争原理も働いてくる。そうなれば農業という衰退産業が息を吹き返す可能性が見えてくる。
こうした状況下で、農業関係者から大きな注目を集めているのが、パナソニック アプライアンス社が進める「栽培ナビ」ビジネスだ。同社の事業開発センター アグリ事業プロジェクトでは、2013年から農の現場に深く入り込みながら「無加温による冬メロン栽培」「夏のほうれん草栽培」といった季節的に難しい作物の栽培に成功するなど、センサー等のデータ活用により研究、結果を出してきた。

さらに、パナソニックでは今年5月には田畑の土壌・作物診断サービス「栽培ナビ ドクター」を新しくスタートさせた。今後、同社は「栽培ナビ」と「栽培ナビ ドクター」を2本柱として、農業現場への支援事業を展開していく考えだ。
