<この記事を要約すると>

  • 110年の歴史を持つ京阪電気鉄道が、京阪特急の座席指定特別車両「プレミアムカー」に鉄道車両として初めて「ナノイー X」発生装置を搭載
  • 既存車両の改造だけに制約が多く、小型かつ高性能なデバイスの開発が求められた
  • そこでパナソニック アプライアンス社、JR東日本テクノロジーが全面協力して“特注品”を開発
  • 三位一体で成し遂げた「空気の質」の向上をクローズアップする

時代の変化に伴い、日常の移動手段である「電車」は快適な移動空間を提供するための進化を遂げている。京都と大阪をつなぐ京阪電車の座席指定特別車両「プレミアムカー」は、京阪特急70年の歴史で築き上げてきた数々のサービスの更なる向上を追求し、「車内の空気の質」に着目した。移動空間の「空質」をいかに高め、体験価値を提供するか。そこではパナソニック アプライアンス社による「ナノイー X」発生装置が大活躍している。

名古屋大学未来社会創造機構客員教授
元名古屋大学産学官連携推進本部特任教授
元ImPACTプログラム・マネージャー
宮田 令子 氏

1982年入社の東レ株式会社では、一貫して研究開発に従事。事業化・研究マネージメントを経験。日本生物工学会技術賞受賞。名大では、異分野融合領域の産学官連携共同研究等マネージメントに従事。2014年~2019年にかけ内閣府 革新的研究開発推進プログラムImPACTにてプロジェクトマネージャーとして参画。超微量物質多項目同時センシングシステムの実用化に向けたプロジェクトを主導した。

空気には、ヒトの目には見えないにおいや微粒子(PM2.5、PM0.1、ウイルス、細菌、有害物質など)がナノ、マイクロレベルのエアロゾルなどとなって漂っており、移動空間においてはヒトとともにそれらも移動、拡散していきます。安心・安全・快適な環境レベルを保つことがますます求められている昨今、多くの人が使用する「電車」においてもこの先進的な取り組みが成し遂げられることで、輸送関連業界での空気の質がさらに向上していくでしょう。

より快適な移動空間をお客さまに提供したい

ライフスタイルの変化を余儀なくされた2020年。なかでも電車を筆頭とする移動空間では、これまでになく健康で清潔な空気環境が求められている。パナソニック アプライアンス社が開発した微粒子イオンの「ナノイー/ナノイー X」発生装置は、こうした時代の流れにマッチするソリューションである。日常の住空間のみならず、早い段階から移動空間に搭載され、「空気の質」の向上に貢献してきたからだ。

電車だけを見ても、その納入実績は幅広い。2015年から運行を開始したJR東日本の山手線E235系をはじめ、京王電鉄の5000系、東急電鉄田園都市線の2020系、相模鉄道の20000系、都営地下鉄浅草線の5500形などに搭載されている。すなわち、実に多くの乗客が意識せずとも「ナノイー」発生装置搭載の車両に乗っていることになる。

「ナノイー」には、空気中の菌・ウイルスの水素を抜き取り、それらの働きを抑制するOHラジカルがふんだんに含まれている。菌・ウイルス以外にも、カビの抑制、花粉の抑制、タバコやペット、汗ほかの生活5大臭の脱臭、PM2.5に含まれる有害物質の分解、アレル物質(ダニや動物、菌由来などのよるもの)の抑制、美肌・美髪などに効果があるとされる。これらの効果はすべて複数の大学や研究機関により実証されており、科学的な裏付けを得ていることも特徴だ。

「ナノイー」とは、水に包まれた微粒子イオンのこと。臭気成分を溶かす水の性質を空気浄化に応用すべく、パナソニックが1997年から研究を開始した。

2016年には、OHラジカルの量が10倍となった次世代型の「ナノイー X」が誕生。これにより、従来以上に効果を発揮できるようになった。関西の大手私鉄である京阪電気鉄道(以下、京阪電車)はこの可能性に着目し、2019年8月から8000系特急車両の「プレミアムカー」に鉄道車両としては初めてとなる「ナノイー X」発生装置の搭載を開始した。「プレミアムカー」は2017年8月の運行開始時から「ナノイー」発生装置を搭載していたが、“より快適な移動空間をお客さまに届けたい”との思いからグレードアップに踏み切った。

こだわりを追求した座席指定特別車両「プレミアムカー」

開発にあたっては、パナソニックとともにJR東日本テクノロジーが尽力した。JR東日本テクノロジーは先に挙げた山手線をはじめ、鉄道車両への「ナノイー」発生装置の豊富な導入実績を持つが、「ナノイー X」発生装置の搭載事例は京阪電車が初めてとなる。三位一体となった開発の裏側や効果のほどを関係者に聞いた。