従業員向けに実質再エネ100%の電力を提供開始

後半は日経BP 総合研究所 主席研究員の神保重紀氏がモデレーターとなり、パネルディスカッション形式で進んだ。

株式会社日経BP総合研究所
主席研究員
神保 重紀 氏

神保氏の「CO2ゼロ化の取り組みで苦労した点は?」とのテーマに対し、楠本氏は次のように回答した。

「最大の課題はコスト。ビジョンには誰も反対しませんが、回収に10年、20年かかるような環境投資は二の足を踏んでしまう傾向があります。なぜなら工場は0.1円のコストにこだわるからです。その姿勢はものづくりの会社としては強みだと思いますが、こうした取り組みの際に難しい部分があるのは確かです。

もう1つは画一的な方法論がないこと。地域特性、工場で何を製造しているか、生産規模などによって最適な組み合わせが変化しますし、不確実性が高まっている時代のため、どのような時間軸で捉えるかによっても変わってきます。

ただ、コスタリカのように元気が出る事例もある。コスタリカの取り組みは、日本を研修で訪れたホルヘ・サンチェスさんがCO2ゼロの取り組みを初めて知り、それを母国に持ち帰って広げたものです。現地の社長も熱心に動き、わずか2年足らずで政府を巻き込む流れにまで拡大しました。2019年には大統領夫人がパナソニックセンター東京を来訪するなど、パナソニックの環境に対する取り組みをご理解いただいたことも一助となっています。

さらに素晴らしいのは、従業員一人ひとり、それからその家族にまで丁寧に浸透を図っていること。地域住民にもメリットを還元しているそうです。皆さんが誇りを持って推進しているので、持続のモチベーションが高いのです。熱心なキーパーソンとそれをバックアップする経営視点の組み合わせは、1つの成功パターンではないでしょうか」(楠本氏)

次のテーマは「次世代エネルギーの鍵を握る水素の活用について」。パナソニックでは2021年に5kW、2022年以降に700Wと、水素から発電する純水素型燃料電池を発売する。発電のみのモノジェネレーションモデルに加え、熱も同時利用するコージェネレーションモデルをラインナップするという。

最大の特徴は複数の純水素燃料電池を連携制御できること。これにより700Wの家庭用から、発電施設のような大型のものまで対応可能になり「分散型エネルギーの実現が期待できる」(楠本氏)とする。東京オリンピック・パラリンピック選手村跡地に建設される「HARUMI FLAG」では水素インフラとセットで稼働する計画で、本格的な社会実装が見え始めている。

3つめのテーマは「若年層に対するSDGsの発信」。池之内氏は「我々の世代と価値観が異なるミレニアル〜Z世代、または今の小中学生などについて、どのように伝えるのが効果的なのかは悩ましいところ」としながらも、オンラインで若い世代に向けたSDGs啓発キャンペーンを展開していることを報告した。

「パナソニックセンター東京」にて設置されたSDGs情報発信コーナー。持続可能な社会の実現に貢献するパナソニックの様々な事業活動の紹介、展示を通して子供たちが楽しみながらSDGsの理解を深められるコンテンツを用意

「若い人たちはすでにSDGsに対する理解があり、“SDGsとは何ぞや?”という直球のアプローチでは響きません。そこでアプローチを変え、“優しさ”をモチーフにしたオンラインキャンペーン『ソウゾウするやさしい展』を2020年12月27日まで開催しています。中にはSDGsに直接関係ないようなテーマもありますが、いくつか紐解いて整理していくと『これってSDGsにつながるよね』となってくる。身近な問題を通じて、自分ごととして実感できる切り口が必要との学びを得ることができました」(池之内氏)

4つめのテーマは、パナソニックによるCO2フリーの新たな取り組みについて。これは再生可能エネルギー指定の「非化石証明書」を使用し、実質再エネ100%の電力を従業員向けに提供するもので、2020年10月から社内で募集を開始した。本プロジェクトは従業員の受けも良く、楠本氏、池之内氏ともに申し込み済みだ。また、楠本氏の部署で働くスタッフは「子どもたちの将来のためにも切り替えたい」と話したという。

「パナソニックセンター東京」から配信された本ウェビナーの様子

セミナーの最後、池之内氏は「2030年、あるいはその先の2050年を見据えたとき、今の課題に対して手を打たねばならない。それがこの時代に生きる企業の責任だと考えています」と話し、楠本氏は「志・知恵・共創を持ち寄れば無限の可能性がある。そのために目の前の一歩から始めたい」と結んだ。これらの言葉が示すように、SDGs、ひいてはCO2ゼロの取り組みとは、豊かな未来に向けた布石なのである。