<この記事を要約すると>

  • 現在、全国に約2万2000店舗あると言われるコインランドリーが進化を続けている
  • 明るく開放的な空間に生まれかわり、カフェやコンビニ、ドラッグストア併設型も増え、快適に過ごせるのが特徴
  • 業務用クリーニング機器開発・製造・販売大手のTOSEIは、自社製品の付加価値としてパナソニックの「ナノイー」を搭載。オーナーや一般客から好評を得ている
  • ランドリー業界に初参戦となった「ナノイー」がもたらした効果を、関係者とオーナーの言葉から明らかにする

ライフスタイルの多様化が進み、コインランドリー需要が増加している。現在の主流は明るく清潔な空間で、カフェの併設やキャッシュレス対応を備えた“次世代型コインランドリー”だ。一方で利用範囲が多岐にわたるからこそ、不特定多数にいかに安心安全を提供できるかが鍵を握る。業務用クリーニング機器開発・製造・販売大手のTOSEIでは自社製品にパナソニックの「ナノイー」を搭載。新たな付加価値とともに差別化の訴求ポイントとして好評を博している。

令和のコインランドリーは“明るく清潔”が基本

現在、日本国内にコインランドリーは約2万2000店舗あると推計されている。さすがにコンビニやドラッグストアにはかなわないものの、店舗数で見ればおよそ3分の1の規模に匹敵する。最近、自宅付近にコインランドリーが新設された、あるいは改装して非常に明るくきれいになったという経験がある人も多いことだろう。

広々とした店内には待合用のテーブルと椅子が置かれ、無料Wi-Fiやドリンクコーナーを設けていることも珍しくない。カフェやコンビニ、コインパーキング、ガソリンスタンドなどを併設した複合店舗も目立つ。かつてのジメジメと暗いイメージはなく、令和におけるコインランドリー像は“楽しみながら洗濯と乾燥をする場所”になりつつある。

小田急不動産が運営する、2021年4月オープンの「Odakyu Laundry」内観。明るく清潔な空間が提供されている

背景には、社会の高度化に伴うライフスタイルの変化が挙げられる。以前は単身者御用達の印象が強かったが、共働き世帯が増えたことにより、家事の時短を求めるファミリー層が積極的に利用している。週に1〜2度まとめて洗濯と乾燥を済ませられれば、日々の空いた時間を有効活用できる。家庭用と違い、強力なガス乾燥機で短時間にパリッと乾くのも魅力的だ。

40年前と比べ、共働き世帯は約2倍に増加している

また、布団や毛布、枕などの寝具類が手軽に洗えるようになったのも大きい。素材によっては適さないものもあるが、自宅では洗って乾かすことが難しかった布団をわずか2時間ほどで丸洗いから乾燥までしてくれる便利さは何物にも代えがたい。駐車場付きのコインランドリーでは、週末に自動車で寝具類を洗いに来る家族の姿も数多く見受けられる。

こうした次世代型コインランドリービジネスを後押ししているのが、業務用クリーニング機器開発・製造・販売大手のTOSEIである。ランドリー空間を清潔に保ち、快適に過ごせるように工夫して“待つだけの時間”を“有益な時間”に転換させた。併設店舗があれば自ずと待ち時間に人が行き来し、売上の相乗効果が生まれている。同社がうたう「コインランドリーは暮らしのハブになる」とのキャッチコピーは、まさに時代のニーズを表したものだ。

TOSEIでは2018年から、新たな付加価値としてパナソニックの「ナノイー」搭載モデルの出荷を開始した。利用客をはじめ、コインランドリーオーナーからの評判も上々で、現在はすべての機器に標準搭載している。TOSEIが「ナノイー」に着目した理由とは何だったのか。そこには、コインランドリー業界が抱える切実な課題があった。

TOSEI五反田ショールームに設置されたコインランドリー。各機器の中央に「ナノイー」の表示を付けている

「ナノイー」には差別化と脱臭、双方の効果が見込める

「コインランドリー市場は2014年後半から右肩上がり。当社の出荷台数で比較すれば、2020年度は2014年度の約2.2倍になっています」。そう語るのは、TOSEI 執行役員 営業統括責任者(CMO)の塚本広二氏。営業・企画の立場から、長年にわたりTOSEIのコインランドリー事業を牽引してきた人物だ。

株式会社TOSEI
執行役員
営業統括責任者(CMO)
塚本 広二 氏

塚本氏は「マスコミの露出が増えたこと、金融緩和政策により融資が受けやすくなったこと、無人かつ在庫を抱えないビジネスモデルが新規事業進出のハードルを下げたこと。この3点が大きな要因です」と分析する。2016年に初開催となった「国際コインランドリーEXPO」には大手のスーパー、コンビニ、飲食チェーン、ドラッグストアなどが大挙して押し寄せた。「様々な業界の方々が、母店の空いたスペースにコインランドリーを誘致すれば相乗効果が見込めると気づき始めました。その頃から風向きが変わったと思います」と塚本氏は話す。

逆の見方をすれば、これは競争の激化を物語る。全国各地にコインランドリーが乱立する中で、機器メーカーとしてはオーナーに購入してもらうために差別化の訴求が急務とされていた。そこで自社の洗濯乾燥機、乾燥機に付着するニオイを脱臭できればアピールポイントになるのではないかと着想した。

「コインランドリーの課題として挙げられていたのが機器のニオイです。水をふんだんに利用するために多湿な状況になってしまい、どうしてもニオイが付いてしまいます。当社の洗濯乾燥機は特殊な弁によって防いでいますが、それでも少なからず発生してしまうのが悩みでした。

乾燥機単体なら問題ないと思われるかもしれませんが、ドラム内の四隅にホコリが溜まってしまい、そのホコリから独特なニオイが出てきます。これを解消するには、当社に持ち込んでパネルを分解しての清掃が必要となり、多額のコストがかかります。この課題を解決すれば、お客様にとってもオーナーにとってもより付加価値を感じていただけると考えました」(塚本氏)

コインランドリー機器に表示された「ナノイー」マーク

チャレンジングな姿勢はTOSEIのDNAに組み込まれたものだ。TOSEIのコインランドリー業界への参入は2001年と遅く、後発組として出発した。それゆえ、世界初となる業務用洗濯乾燥機の開発・製造・販売を手がけて“ワンストップで完了する”スタイルを武器に独自の道を切り開いてきた。機器の回転率が売上に直結するコインランドリービジネスでは洗濯機、乾燥機が別々であることが常識で、一体化によって回転率が下がる洗濯乾燥機は発売当初、「売れるわけがない」と言われたそうだ。今では洗濯乾燥機がスタンダードになったことを鑑みると、先見の明があったと言えよう。

折よくパナソニック代理店から「ナノイー」の売り込みがあり、塚本氏は静岡県伊豆の国市にある静岡工場と連携して「ナノイー」搭載の検討を開始した。製造現場でもマイナーチェンジを予定しており、アップデート時の目玉機能として「ナノイー」に対する関心は高かった。

TOSEI静岡工場

業務用洗濯乾燥機/乾燥機での「ナノイー」搭載はこれが初めてのケースになる。TOSEI 静岡事業所 商品企画・開発本部 開発技術部 部長 深瀬利隆氏は「最初は『ナノイー』に対する漠然とした知識しかなかったため、パナソニックの担当者に足を運んでもらい、TOSEIの機器に対してどのような効果が見込めるのかを説明していただきました」と語る。

株式会社TOSEI
静岡事業所
商品企画・開発本部
開発技術部
部長
深瀬 利隆 氏

同じく開発技術部で副部長を務める日吉政宏氏は、20年前に洗濯乾燥機の開発を担当。逆境を乗り越えて成長を支えてきただけに、「初めての挑戦でしたが、ブランド力が高い『ナノイー』をぜひ当社の機器に搭載したいと思いました」と意欲的に臨んだ。そして工場に併設している直営ランドリーで、1カ月ほど『ナノイー』搭載モデルと非搭載モデルによるフィールドテストを実施。この結果が、塚本氏の背中を押した。

株式会社TOSEI
静岡事業所
商品企画・開発本部
開発技術部
副部長
日吉 政宏 氏

「ニオイを嗅いで比較したところ、搭載モデルでは明らかに独特なニオイがありませんでした。『中を掃除したのか?』と聞いたら『もちろんしていません』と。これは間違いないと確信し、採用のゴーサインを出しました」(塚本氏)

工場で働くスタッフも同様の意見だったが、感覚的な評価だけではエビデンスとはならないため、TOSEIは大阪・門真市にある「パナソニック株式会社 プロダクト解析センター」に調査を依頼。数値化したエビデンスを作成した。

「プロダクト解析センターでは臭気判定士がニオイを定量的に捉えて可視化してくれました。『ナノイー』を放出する・しないの比較表を報告していただき、それにあわせて当社の機器で最大限効果が出るように制御することができました」(日吉氏)