<この記事を要約すると>

  • 東京2020大会開幕に向け、快適な空間を目指した選手村が開村
  • 猛暑の中、「きれいな空気」を作るエアコンが活躍
  • 空気自体を洗う「ジアイーノ」を東京2020大会関連施設に設置
  • 既に目線は「東京2020大会後」へ、真価が問われるのはここから

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村が7月13日、開村した。世界中から来日する選手やスタッフの居住エリアとして、東京2020オリンピックでは1万8000ベッド、パラリンピックでは8000ベッドを用意し、競技に集中できるよう快適な環境を提供する。特に猛暑が予想される東京では、温度や湿度のコントロールは不可欠だ。快適な空気という「おもてなし」を実現するパナソニックの技術が、選手村でも活躍した。

選手村ではリラックスできる快適な空間を

「選手村に来ていただいたアスリートの皆さんが、競技に集中して最高のパフォーマンスを発揮できるよう、リラックスできる快適な空間を目指しました。選手が自国に帰る時に『選手村に来てよかった』と感じていただければと思います」。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 選手村整備担当課長 近藤好信氏はそう語る。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
選手村整備担当課長
近藤好信氏

東京・晴海にある選手村は敷地面積44ha。選手が生活する「居住ゾーン」、選手村運営に必要な機能を集約した「運営ゾーン」、選手の生活を支える店舗がそろう「ビレッジプラザ」に分かれている。居住ゾーンには地上14~18階建ての居住棟21棟のほかメインダイニングホール、フィットネスセンターやレクリエーションセンター、総合診療所などがある複合施設、公園も備える。

ⒸTokyo 2020 / Shugo TAKEMI
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村全景

居住棟には約3800戸の住戸(1~8名利用)があり、それぞれの住戸には寝室とユニットバスのほかコモンルームも備わっている。寝室はシングルルームで9㎡以上、ツインルームで12㎡以上を確保している。選手に居室でリラックスして過ごしてもらうために重要視した設備のひとつとしてエアコンがあげられる。「高温多湿な日本の真夏の開催ですから、当然、暑さが問題になります。宿泊する方に快適に過ごしていただくためには、空調をきちんと整備することは必須でした」(近藤氏)。

選手村「居住ゾーン」の一画

選手村の部屋に設置されたルームエアコンは約1万5000台。実は、すべてパナソニックの「ナノイー X」搭載型エアコンが使われている。空気中の花粉、カビ菌などを抑制し、室内の脱臭を実現する「ナノイー X」搭載型は、「きれいな空気」にこだわるホテルなどでも導入が相次ぐ。「日本の『おもてなし』として、できることは何か。また、トップスポンサーとして、どれだけのことができるのかを考えた時、ナノイー搭載エアコンしかないと思いました」。2014年からパナソニック東京オリンピック・パラリンピック推進本部で選手村プロジェクトを率いる辻本純一主幹はそう言い切る。

ⒸTokyo 2020 / Shugo TAKEMI
部屋にエアコンの室外機が配置されている

選手の潜在ニーズ調査から、浮上した空気の重要性

カルガリー1988オリンピックから30年以上トップスポンサーとして支えてきたパナソニックだが、選手村のサポートを組織的に取り組むのは今大会が初めて。当初、選手村に関する情報はほとんどなかった。まずはどのような設備が入っているのか、課題は何か、情報を集めるところからスタート。ロンドン2012、リオ2016の選手村建設に携わった現地のスタッフに話を聞くとともに、北京2008大会以降に入村したことのある日本人選手・スタッフ十数人にヒアリングした。その結果、選手村では練習と食事以外、ほとんどの時間を部屋で過ごす選手が多く、部屋の環境が非常に重要だということが分かったという。

パナソニック株式会社
東京オリンピック・パラリンピック推進本部
選手村プロジェクト
主幹
辻本 純一 氏

「高温多湿の東京2020大会ではエアコンが重要な設備になるであろうことは、その時点で想像できました。冷やすことはもちろん大切ですが、においや空気といった部分に対しても我々が持っている『ナノイー』技術を使って、選手の皆さんをサポートすることができるのではないかと考えたのです」(辻本氏)

パナソニックが1997年から研究を開始した「ナノイー」は、水に包まれた微粒子イオンのことだ。空気中の菌やウイルスの水素を抜き取り、それらの働きを抑制するOHラジカル(高反応成分)がふんだんに含まれている。

改良の末、2016年に誕生した「ナノイー X」は「ナノイー」の約10倍のOHラジカルを保有。「ナノイー/ナノイー X」は、一般的な空気イオンに比べて寿命が長く、潤いが多いのが特徴。菌・ウイルス以外にも、カビの抑制、花粉の抑制、タバコやペット、汗ほかの生活5大臭の脱臭、PM2.5に含まれる有害物質の分解、アレル物質(ダニや動物、菌由来などのよるもの)の抑制、美肌・美髪などに効果があるとされる。目に見えなくても「清潔できれいな空気」は、安心感につながる。

「ナノイー」の約10倍のOHラジカルを保有した「ナノイー X」。効果は目覚ましく、一例として上記の主要なアレル物質の抑制を新たに実証済み
※出典:https://panasonic.jp/nanoe/effect.html

選手村のエアコンについては、開催都市契約等に基づき、組織委員会が必要とする仕様に合致する製品をスポンサー企業が供給可能な場合は、スポンサー製品を優先して使用することになっていた。組織委員会の要求と予算範囲は温度湿度を調整できるルームエアコンであったが、パナソニックが考える選手への最高のおもてなしとして「温度湿度の調整だけでなく、更にきれいな空気を提供する」という熱意から、組織委員会の要求、予算を満足しつつ、「ナノイー X」納入を実現した。

「ナノイー X」搭載エアコン

約1万5000台もの台数を供給するにあたっては、全社を挙げた協力体制を敷いて乗り切った。また、環境配慮への観点から選手村設備の再利用を進める組織委員会と東京都の方針により、取り付けと大会後の撤去という2つの工事が必要になる中、すべてグループのエンジニアリング会社に請け負ってもらうことで一元管理ができたことも大きな力になった。さらに、同社のサービス部門と連携し、繁忙期と重なる大会中も故障などにすぐに対応できる体制も整えることができたという。

「今回、選手向けにわかりやすい英語版の簡易型取扱説明書を作ってくれたのは事業部です。組織委員会が用意した選手用のアプリの中に入れてもらい、選手がエアコンの操作で困らないように工夫しています。大会直前の限られた時間の中、約1万5000台すべて試運転して、万全の体制で大会に臨むことができるのも、グループを挙げての協力体制の賜物だと思います」と辻本氏はグループの結束力を強調する。