<この記事を要約すると>

  • 数々の高級車で知られる英国のジャガー・ランドローバー(JLR)が、ラグジュアリーSUVの新型RANGE ROVER(レンジローバー)を発売
  • 同モデルには新開発の空調システムが組み込まれ、「ナノイーX」がシステムの中核を成している
  • モダン・ラグジュアリーな価値とともに“安全”を届けるジャガー・ランドローバーの哲学に、日本の技術が採用された理由とは?

英国を代表する高級車メーカーのジャガー・ランドローバー。2021年10月に発表した5代目となる新型RANGE ROVERには、パナソニックの「ナノイーX」を組み込んだ新開発の空調システムを搭載している。世界各国のロイヤルカスタマーに愛されるラグジュアリーSUVだけに、そのインパクトは大きい。採用の基準や開発の裏側について、ジャガー・ランドローバーとパナソニックの担当者が明かした。

“空気の質”向上は英国の高級SUVに不可欠だった

英国最大の自動車メーカーであるジャガー・ランドローバー(以下、JLR)。輝かしい歴史を刻んできたジャガーとランドローバーの2つのブランドから成り、ランドローバーが高品質なSUV(Sport Utility Vehicle)を主力とする。どちらも英国伝統の車作りを今に受け継ぐ高級車として、グローバルで数多くのファンを持つのが特徴だ。

ランドローバーのフラッグシップ車が「RANGE ROVER」である。オフロード走破能力と都市型の多目的利用をコンセプトに開発されたRANGE ROVERは、1970年に初代が登場。快適な乗り心地とフルタイム4WDによるパワフルな駆動、垢抜けたデザインをミックスしたことで、現在のSUVに連なるまったく新しいカテゴリーを開拓した。それゆえ、ラグジュアリーSUVのパイオニアと評されている。

ランドローバーの新型RANGE ROVER

2021年10月、JLRは5世代目となる新型RANGE ROVERを発表した。「妥協なき洗練性とラグジュアリー」をうたう新型モデルには、上質なインテリアや車内のインテリジェントシステムと並び、クリーンな室内空間を実現する「空気清浄システムプロ」が搭載されている。このシステムにパナソニックの「ナノイーX」を採用した。

日本では複数の自動車メーカー、電車やエレベーターなど公共空間でも採用される「ナノイーX」だが、海外の高級車が搭載したことは少なくないインパクトを与えた。しかもJLRは空気清浄システムプロを主要機能の1つとしてアピールしており、いかに車内空間の“空気の質”に配慮しているかが伝わってくる。

上質なインテリアとインテリジェントシステム、そして「空気清浄システムプロ」が搭載される新型RANGE ROVER内装

もともとJLRでは、車内の空気清浄化技術に高い関心を寄せてきた。新型RANGE ROVERの発表に先立つ2021年3月には、「ナノイーX」を搭載した車内空調システムのプロトタイプによる実証結果を公表。微生物学およびウイルス学の研究所である英国のPerfectus Biomedに研究を依頼し、実験室での密閉型テストにおいてウイルスと細菌(バクテリア)を最大97%抑制することを証明した。

RANGE ROVERを選ぶユーザーはデザインや装備のみならず、ファーストクラスのような心地よい乗車体験を求めている。2020年のパンデミック以降、急速に高まった清潔な空気に対する意識に応えるためにも、密閉した空間を安心して過ごせる新たな空調システムは不可欠な要素だった。以下、JLRとパナソニックの欧州担当者に「ナノイーX」搭載の狙いや、将来の展望について聞いた。

採用のポイントは高い技術力と車載システムの調和

JLRのMark Burniston氏は、新型RANGE ROVERの空調機能について次のように説明する。

「空気清浄システムプロは、複数のテクノロジーを組み合わせて新開発しました。1つ目がキャビン・エアフィルター・システム、2つ目が『ナノイーX』、3つ目がCO2マネージメントシステムです。これら3つのテクノロジーの融合により、空気の質の観点からしっかりとお客様を守ることを心がけました。なぜなら、我々の目的はモダン・ラグジュアリーな価値の提供ですが、車内を安全で落ち着いたものにすることが、この使命にとって重要だからです」

ジャガー・ランドローバー
プロダクト・ディベロップメント部門クライメート・システム担当シニアマネージャー
Mark Burniston CEng FIMechE

JLRでは、「ナノイーX」の前身となる「ナノイー」を2016年から一部の車種でオプション採用してきた。そうした背景もあり、「ナノイー」の10倍のOHラジカル(高反応成分)量を持つ「ナノイーX」は当然、次世代空調技術の有力候補だった。

「他社製品を含めてテストを繰り返しましたが、『ナノイーX』は非常に優れていました。Perfectus Biomedによる厳密な検証結果からも、その有効性は明らかです。それにパナソニックでは多くの消費者向け製品に『ナノイーX』を搭載しており、ブランド力、信用、実績を確立している点は採用の大きな要因でした。

さらに、車内のどこであっても同じ空気の質を享受できるという重要なポイントも選定理由の1つです。フロント、リアの両方に『ナノイーX』を設置し、OHラジカルを車内にまんべんなく循環させていますが、『ナノイーX』の実装は自然に溶け込んでいます」(Burniston氏)

新型RANGE ROVERの前部座席、後部座席。いずれにも「ナノイーX」発生装置を搭載し、車内にOHラジカルを循環させている

ただし、車載としてフィットさせるにはたくさんのクリアすべき課題がある。そのため、社内のメンバーが一丸となって協力体制を敷いた。「JLRにしかできない、新しいテクノロジーによる有益な顧客体験を提供したいとの思いがありました。また、新型コロナの影響により安心・快適な空調に対するニーズが高まっていたこともモダン・ラグジュアリーの追い風になりました」とBurniston氏は振り返る。

「開発段階では難題が立ちはだかりましたが、にも関わらず、垣根を超えた強固な協力体制のおかげで、一連のプロセスを加速できました。より優れた空気清浄能力を導入するだけでなく、この清浄能力を統合し、タッチパネルによる操作、InControlTRアプリを使ったリモートでの利用をも可能にすることで、利便性を高めました。」(Burniston氏)

タッチパネルはダッシュボード付近だけでなく、後部座席間にも設けられ、利便性を高めている

ここでは社内だけではなく、パナソニックの協力もあった。実際の開発プロセスにおいては、「ナノイーX」発生装置を車内に物理的に組み込めば完了、とはいかない。電装や制御などの領域でさまざまな課題があった。しかし、それらの解決に向けて欧州、日本のパナソニックとJLRのエンジニアとで週次のミーティングを開催。最適な方法について議論を重ね、完成に至ったという。