<この記事を要約すると>

  • 2014年からパナソニックが主導してきた次世代型スマートタウンの「サスティナブル・スマートタウン(以下、SST)」
  • 2022年4月、関西では初となる「Suita SST」がオープンした
  • Suita SSTは、街の電気を実質再生可能エネルギーですべてまかなう「再エネ100タウン」を実現
  • 画期的な取り組みの全貌と、過去のSSTからの学びをあわせて紹介

2022年4月、大阪府吹田市に「Suitaサスティナブル・スマートタウン(以下、Suita SST)」が街びらきした(4月29日)。パナソニック主導のスマートタウンとしては、神奈川県藤沢市、同横浜市綱島に続く第3弾で、関西では初となる。商業施設、住宅施設を含む街全体では日本初となる「再エネ100タウン」を掲げ、街ぐるみでのカーボンニュートラル実現をめざす吹田の取り組みを、関係者の言葉から明らかにする。

吹田に生まれた「多世代居住型健康スマートタウン」

パナソニックの創業者、松下幸之助氏は「企業は社会の公器」との名言を残している。これは自社の利益追求に終始せず、企業活動を通じて社会全体を豊かにしていく発想に基づく。この思いが地域貢献の形となって現れたのが「1県1工場」である。1960年代の高度経済成長期、都市部への人口集中によって疲弊していた地方部の現状を憂い、松下氏は全国各県に1つ以上の工場を建設することを指示。地元の雇用拡大に寄与した。

それから半世紀以上が経ち、生産装置としての役割を終える工場もある。それら自社遊休地を次世代型のスマートタウンに生まれ変わらせるプロジェクトとして「サスティナブル・スマートタウン(以下、SST)」がスタートした。文字通り、持続発展する街として新たな地域貢献を進めることがねらいだ。ここにも、創業者の理念がしっかりと根を下ろす。

第1弾は2014年、神奈川県藤沢市の藤沢工場跡地に建設された「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(以下Fujisawa SST)」。2018年には、神奈川県横浜市の綱島工場跡地に第2弾の「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン(以下、Tsunashima SST)」がオープンした。

そして2022年4月、第3弾として関西初となる「Suita サスティナブル・スマートタウン(以下、Suita SST)」が街びらきを行なった。大阪市の北、大阪府吹田市のJR岸辺駅から徒歩10分ほどにある約2.3ヘクタールのコンパクトなSSTで、「多世代居住型健康スマートタウン」をうたう。

Suita SST交流公園付近を上空から撮影

敷地には、ファミリー分譲マンション、シニア分譲マンション、単身者共同住宅、ウェルネス複合施設、複合商業施設と5つの施設がある。加えて中央部には広々とした交流公園を設置した。

(左)単身者共同住宅(右)シニア分譲マンション

SSTは社外のさまざまなステークホルダーと協力し合う“共創イノベーションの場”であり、むろんSuita SSTでもそのビジョンを受け継いでいる。「Suita サスティナブル・スマートタウン協議会」と名づけた共創組織は全15団体と吹田市で構成され、事業者は不動産、ガス、電気、健康、鉄道、通信、金融、警備、ゼネコンなど多岐にわたる。

自治体も熱心に関わる。吹田市ではJR岸辺駅前を「北大阪健康医療都市(健都)」と定め、国立循環器病研究センター、吹田市民病院などを集積。その背景からSuita SSTは吹田市の健康・医療の街づくりと連動し、今後は健康増進アプリを通じてPHR(Personal Health Record、個人の医療・健康データのこと)の活用などを予定している。

Suita SST敷地内のウェルネス複合施設(左)。館内は交流ホール(右)や、コワーキングスペースや学習塾、デイサービス他様々な施設が入る

日本初の「再エネ100タウン」とは?

Suita SSTは「Suitable Town for Fine Tomorrows」をタウンコンセプトとし、これからの時代に求められるカーボンニュートラル、ウェルビーイングの実現に力を注ぐ。実現に向けては先行する2つのSST同様、エネルギー、セキュリティ、モビリティ、ウェルネス、コミュニティの領域で、各事業者が相互に連携する5つの分野横断型サービスを軸とした。

中でも、エネルギー領域の「再エネ100タウン」構想は大きな注目を集めている。街で消費する電力を実質的に再生可能エネルギー(以下、再エネ)ですべて賄うもので、商業施設、住宅施設を含む街全体を対象とする取り組みとしては日本初だという。Suita サスティナブル・スマートタウン協議会のマネジメントを担当するパナソニック オペレーショナルエクセレンスの桂島一氏は、この画期的な取り組みに関して次のように語る。

パナソニック オペレーショナルエクセレンス
ビジネスソリューション本部
関西25・30推進部
事業開発課
桂島 一 氏

「世界的に見ても、社会全体がクリーンエネルギーを利用する方向に進んでいます。そのため再エネによって脱炭素化を推進し、社会課題を解決していくことをSuita SSTの使命の1つとしました。しかし、パナソニック単独ではできることに限りがあります。エネルギーに関しては関西電力をはじめとしたパートナー会社へ協力を仰ぎ、各社の持つ知見を掛け合わせることで実現に至りました」(桂島氏)

再エネ100タウンの仕組みはこうだ。関西電力が再エネ電源、卒FIT電源(再エネの固定価格買取制度が終了した電源)、非再エネ電源を調達し、エリア一括で供給。一括で受電した電気をSuita SST内に張り巡らせた自営線(事業者が自ら敷設した電力用の電線)を通じて送電する。

関西電力 ソリューション本部 開発部門 地域エネルギー事業グループ 藤原英里子氏は「日本初だけに、関西電力にとっても非常にチャレンジング」とした上で、こう続ける。

関西電力
ソリューション本部
開発部門
地域エネルギー事業グループ
藤原 英里子 氏

「Suita SSTでは5つの施設すべてに太陽光発電設備を導入し、まずは“電気を創る”ことを念頭に置きました。そこで不足する電気に関しては外部から集めてきます。非再エネ電源で発電した電気についても非化石証書などを活用し環境価値証書を付与することでCO2フリーとし、実質再エネ100%としました。さらに各施設には高効率設備を導入し、街ぐるみで省エネ化を図るスキームになっています」(藤原氏)

環境性と並び、高い防災性に配慮しているのもSuita SSTのポイントである。大雨・台風や震災など、日本のどこにいても災害のリスクがあるためだ。「再エネを推進する一方で、非常時でも対応できるレジリエンス(回復力)の高い街づくりが必要と考えました」と桂島氏。実装した防災対策について藤原氏はこのように説明する。

「非常時は各施設の設備から電気を融通し合うシステムを構築して、レジリエンスの高い街づくりをサポートしています。また太陽光発電設備と蓄電池、敷地内の電気自動車の充放電器を周辺住民にも開放するなど、地域共生のモデルとなるよう検討しました」(藤原氏)

Suita SST内の受配電設備

最先端インフラの設置はコスト増を招くものだが、藤原氏は「事業者が知恵を出し合い先進的な取組みを行ったことが評価され、国の補助事業の適用を受けました。また、最新の高効率設備の導入や運用による省エネ推進などにより、設備投資や利用料金を通常の範囲に納めるように工夫を重ねました」と振り返る。これを受け桂島氏は「事業者同士のノウハウを持ち寄って協業を具体化できる点はSSTならではの醍醐味。再エネ100タウンは双方のシナジーを最大化できた好例と言えるでしょう」と語った。