2020年頃から先のモビリティに最も大きな影響を及ぼす自動運転。クルマが自律的に移動するようになれば、クルマの使い方ががらりと変わる。そんな未来の社会を思い描き、メーカーではなく、自動運転社会の“担い手”を目指して動き出したのが、ロボットタクシーである。2016年2月には第1弾の実証実験を実施。2020年には何らかの形で無人タクシーのサービスを始めるという。同社が描く未来について聞いた。

(写真提供:ロボットタクシー)

Q:いよいよ実証実験も進み出しましたね。2020年にはサービスを始めると聞いていますが、どのようなサービス像を思い描いていますか。

2月29日から3月11日にかけて、藤沢市で第1弾の実証実験を行いました。自動運転の実験ですが、運転席には人が座り、一般公募したモニターに対して、住居とイオン藤沢店の間を送迎するという、比較的単純なものです。それでも、ステレオカメラやレーダー、GPS(全地球測位システム)などを使った自動運転が、きちんと動作することは確かめられましたし、モニターの方々にもそれを体験してもらうことができました。

ロボットタクシーの中島 宏社長
(以下、人物写真の撮影は北山宏一)

これに対して、私たちが目指しているのは、ドライバーが同乗しない、完全に無人で動くタクシーです。利用者がスマートフォンなどを使ってリクエストすれば、即座にタクシーが指定された場所まで迎えにいきます。タクシー業界ではドライバー不足が深刻な問題になっていますが、ドライバーが不要なら、24時間、いつでも利用できます。人件費が減る分、運賃も下げられるでしょう。利用者にとっても、ドライバー不足に悩むタクシー会社にとってもメリットがあります。

支払いは事前に登録されたクレジットカードでの決済。料金体系は、現在の携帯電話の料金プランのようにできるといいと思っています。一例としては、月額課金にして、月間の累計乗車距離が一定の距離に達するまでは乗り放題、それを超えた分は超過した距離に応じて課金する、そんなイメージです。ほかにも、各種の割引やポイントなど、いろいろな組み合わせがあるでしょう。

当面は、当社自身で自動運転のクルマを用意し、直営のサービスを提供しますが、タクシー会社などと提携してタクシー会社から無人タクシーを配車できるようにしていくつもりです。私たちは、自動車メーカーやタクシー会社に依存するつもりはありません。あくまでも、目指しているのは仲介です。もっと言えば、最初はタクシーですが、バスなど他の乗り物にも同様の仕組みを展開していきます。

Q:ロボットタクシーはネット企業のディー・エヌ・エー(DeNA)とZMPの合弁会社ですね。ZMPは自動運転技術の開発を手がけていますが、なぜDeNAが、「自動運転のタクシー」なのでしょうか。

ご承知の通り、DeNAという会社はメーカーではありません。ですから、新しい技術を自ら開発して何かするという発想はあまりなく、もっとニーズドリブンな考え方をします。まず社会の中での課題を見つけ、その解決に必要なものは何かと考えます。そして、課題解決のために有用な技術を当てはめて事業を展開します。

ロボットタクシーについても同じでした。あちこちで、生活における課題について話を聞く中で、地方を中心として、家から駅まで行く、あるいは買い物に出るなど日常的な移動の手段に深い悩みを抱えている人がたくさんいることに気づきました。手軽に使える公共交通が近くにない、高齢者はバス停などまで行くだけでも難儀する、というような、いわゆる“移動弱者”が増えているわけです。特に地方の中山間地など、過疎が進んでいる地域では深刻な問題です。

楽に移動したいのなら、タクシーを呼べば目的地まで乗せて行ってくれます。ただ、地方ではタクシーも稼働車両が少ないのが実情です。背景には、タクシー業界におけるドライバー不足があります。理由の一つはドライバーの高齢化が進み、就業人口が減っていること。そしてもう一つは、タクシー事業は人件費が売上高の75%近くを占めるため、需要が少ない場所では稼働させる車両の数を抑える必要があることです。なおかつタクシーは、頻繁に使うと料金がかさむため、日常の移動手段としては必ずしも使いやすいものではありません。

一方では、自動車メーカーをはじめ、各社が自動運転技術の開発でしのぎを削っています。これをタクシーに導入してスマート交通サービスを実現すれば、移動に困っている人を楽にしてあげられるのではないか。さらに言えば、退屈なことが多い移動時間を楽しく過ごせるようにできるかもしれない。そう考えて、ロボットタクシーを立ち上げました。

私たちが始めようとしているスマート交通サービスは、自動車というハードウエアと組み込みソフトウエア、クラウドシステム、スマホやパソコンのアプリといった、大きく4つの領域を高度に連携させなければ実現できません。DeNAは、クラウドシステム、アプリについては実績があります。ただ、自動車のハード/ソフトについては経験がありません。代わりに、いろいろな会社とコラボレーションしてサービスを生み出すことは得意です。そこで、自動運転技術の開発を手掛け、私たちと同様にタクシーに応用したいと考えていたZMPと一緒に事業化することにしたわけです。

Q:事業としては、直営のほか、他のタクシー会社との提携サービスも提供すると?

本来、交通サービスは地域に密着して愛されるべきです。そこで、私たちはプラットフォーム提供企業として、地方のタクシー会社と積極的に組んでいこうと思っています。浸透させていくために直営もやりますが、事業の中心はあくまでも、遠隔監視や配車システムなど、無人タクシーのためのプラットフォーム提供です。このプラットフォームの上で、ドライバーの確保に困っているタクシー会社が運行管理者になって事業を行う、というビジネスモデルを推進していきます。

それから、キャッチーな印象なのでロボットタクシーという社名にしましたが、タクシービジネスにしか目を向けていないわけではありません。バスなど他の交通手段も対象にできると考えています。まずはリスクが少ない乗用車型で実績を残し、法改正の動きなどを見ながら、大型車両での運用を考えていきます。さらに、同じくドライバー不足に悩んでいる物流などの世界にも、自動運転を適用していけるかもしれません。