2020年7月から、JR東日本グループが高輪ゲートウェイ駅でパナソニックが開発した車いす型モビリティ機器「PiiMo(ピーモ)」の実証実験を行っている。実証実験の実務を担うJR東日本商事はこの実験を通じて、各種のロボットを現場で運用する際のノウハウ抽出、また駅だけでなく街や商業施設での利用を見据えた課題点を洗い出すことを狙う。ロボット社会を見据えた実験の要点と今後の展望について、JR東日本商事の大野誠一郎リース・ソリューション本部AI・ロボティクス推進部長とパナソニックの荻島敬司パラリンピック統括部ロボット推進課主務に聞いた。

──近年、まちづくり分野では「ラストワンマイル」というキーワードを通じて、最終目的地にアクセスするための、より利便性の高い交通手段の確保が課題になっています。こうした課題の解決に向け、JR東日本グループは高輪ゲートウェイ駅でパナソニックが開発した車いす型モビリティ「PiiMo(ピーモ)」の実証実験を行っています。PiiMoは名称に「追従型ロボティックモビリティ」を冠し、後続車両が先頭車両を自動的に追従する機能や、障害物を察知して自動停止・自律的に回避する機能など、ロボットの特性を備えていることが特徴です。この実証実験のポイントについて教えてください。

大野氏(以下、敬称略):高輪ゲートウェイ駅にある、一般の方が入れない非営業エリアで実施しています。PiiMoを含めたさまざまなロボットを駅や街で使う場合、どのようなことが課題になるかを抽出するのが目的です。

例えば、透明で大きなガラスがあるような場所でもロボットのセンサーがしっかり反応するか、あるいは、電波の悪いところでも正常に動作するか、エレベーターにスムーズに乗ることができるか、といった点を検証しています。

JR東日本グループが高輪ゲートウェイ駅での実証実験で使用している、パナソニックが開発したモビリティ「PiiMo(ピーモ)」。同社はPiiMoの名称に「追従型ロボティックモビリティ」を冠しており、複数の車両間で協調動作する機能を備えている。例えば、複数の後続車両が先頭車両を自動で追従する、先頭車両を搭乗者またはスタッフがリモコンで操作し、後続車両には高齢者や足の不自由な人、あるいはその家族が乗って目的地まで一緒に移動する、といった用途に適用できる。ほかにも、障害物などへの衝突の恐れがあると判断した場合には自動停止する機能、前方車両の軌跡に障害物などが出現した場合には後続車両が自律的に回避しながら走行を継続する機能などを備える。パナソニックが車椅子ベンチャーのWHILLと提携し共同開発した。車両の基本機能はWHILLが開発、パナソニックはセンサーや自動追従の仕組みなど安全性や制御に関わる部分について独自の技術を組み込んだ(写真撮影:高下義弘、以下同)

言い方を変えれば、駅や街などの実空間にある、ロボットやモビリティにとってあまり好ましくないような環境下でロボットやモビリティがどう動作するか、そうした環境下でロボットやモビリティを問題なく使えるようにするにはどうすればいいか、といった点を確認するのが趣旨です。同時に、ロボットやモビリティに優しい施設環境とは何か、ということも検討しています。

なお、これらの検証は、PiiMo以外のロボットやモビリティを使っても実施しています。私はエンジニアではない事務職の人間です。将来、街で様々な人がロボットやモビリティを利用するという未来社会像を想定すると、私のような専門知識がないユーザーでもいろいろな種類のロボットやモビリティが簡単に扱えることが求められます。ですので、そういった観点での調査も行っています。

実証実験の実務を手がけるJR東日本商事の大野誠一郎リース・ソリューション本部AI・ロボティクス推進部長(右)とパナソニックの荻島敬司パラリンピック統括部ロボット推進課主務(左)

現場で使ってはじめて見えてくるものがある

また、もう少し業務に近い例で言いますと、現場で対応できるトラブルと、メーカーさんに対応を依頼すべきトラブルの線引きがどの辺りにあるのかも検証しています。現場での本格運用を考えた場合、いちいちメーカーさんに電話して支援を依頼しなくても対応できるようにする体制づくりも必要だからです。

──ロボットやモビリティに優しい施設環境、つまり施設そのものをロボットやモビリティに合わせていくという発想は興味深いですね。

大野:例えば電力です。ロボットやモビリティの充電の際に多くの電力を使う場合は、施設で元々使っている電力に、その分がプラスアルファされることは見逃せません。施設が出来上がってから保管スペースを作ったり、電力量を増やしたりするのは非常に面倒ですよね。ですから理想的には、そもそも施設が出来上がる前に、ロボットやモビリティを使うことを考えた設計をする必要がある。ロボットやモビリティが活動する施設にはどういった要素が必要になるか、ユーザー目線で抽出することも欠かせないと考えています。