10年前の東日本大震災のように、ひとたび大規模災害が起きると同時にたくさんの要救助者が発生する。そんなとき何よりも重要なのは、限られた時間で効率よく救助活動を行うことである。地球温暖化の影響などもあり、今後も災害の増加が予想されるなか、助けを求める人をいち早く見つけ出す手段として、ドローンとAI(人工知能)、AR(拡張現実)/MR(複合現実)を活用した新たな災害救助システムが注目を集めている。「未来の救助」の姿を探った。

地上からは見えない屋上の人をドローンで見つけ出す

2021年1月、福島県南相馬市にある「福島ロボットテストフィールド」でひとつの実証実験が行われた。津波や洪水から逃れるためビルの屋上に逃れた人をドローンで捜索するという想定の実験である。

ビル屋上に横たわる人の姿は、壁が邪魔をして地上の捜索者からは見えない。そこでまずドローンを飛ばして、撮影した映像からAIで要救助者を見つけ出し、それを実際の風景と重ね合わせてARグラスに映し出す。ビルの屋上と要救助者のアイコンを引出線で結ぶことにより、人がどこにいるかリアルタイムの情報として伝えることに成功したのである。

このドローンを核にした災害救助システムである「3rd eye ドローンシステム」を開発したのは、茨城県古河市に本拠を置く株式会社ロックガレッジである。このシステムはどのように生まれたのか。同社の代表取締役で、システム全般の開発を手がけてきた岩倉大輔さんに話を聞いた。

2021年1月の実証実験でAR/MRグラスに投影された立体映像(出所:ロックガレッジプレスリリース)
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2021年1月の実証実験でAR/MRグラスに投影された立体映像(出所:ロックガレッジプレスリリース)

「3つめの眼」によって壁の向こうが見通せるようになる

ロックガレッジの3rd eye ドローンシステムでは、ドローン、AI、そして、ARグラスという3つが重要な役割を果たしている。

「ごく簡単に言うと、ドローンとAIが要救助者を見つけ出し、それをわかりやすい画像でARグラスに映し出します。こうして本来は見えない壁の向こうに倒れている人の姿が見えるようになるのです」と岩倉さんは言う。

これをもう少し詳しく説明すると、まずドローンで撮影した画像の中からAIが要救助者を見つけ出し、推定アルゴリズムを用いてその3次元の位置情報を特定する。こうして人のいる場所の緯度・経度・高度がわかれば、目の前の風景のどこにいるか、ARグラスに重ね合わせて表示することができる。このARグラスを救助チーム全員で装着していれば、瞬時にリアルタイムの情報を共有できるのだ。