SDGs(持続可能な開発目標)に向けて産業界で様々な取り組みが進む中、アパレル業界で新しい事業モデルに挑戦しているブランドがある。三菱商事ファッションが提供する「THE ME」だ。THE MEはパターンオーダーなどと同じ受注型の生産・販売形態だが、中身をみると、興味深いポイントが見て取れる。デジタル技術を使った採寸後のパターン(型紙)生成の自動化や、取引先である生産工場とのデータ共有を進めることで、業務上発生しがちなロスを低減。これにより、顧客それぞれにフィットした服を、なるべく早期に、リーズナブルな価格で届けることに成功した。併せて「自分に合う服だけを選んで買う」という購買スタイルを消費者やアパレル業界に提案する意味もあるという。店舗オープンから1年が経過した「THE ME」プロジェクトの話を聞きつつ、サステナビリティに向かうアパレル業界の動きを見る。

三菱商事ファッションはアパレル分野の総合商社として国内最大手。顧客となるアパレルブランドのOEMやODMを手掛けてきた。また、商品の企画・生産・販売などにデジタル技術を適用する方法の研究開発も進めている。

※OEMは、アパレルブランドから指定されたデザインで生産を受託すること。ODMはアパレルブランドから依頼を受けて商品のデザインから製造までを受託することを指す。

同社が2020年7月から本格展開している自社ブランドが「THE ME」だ。THE MEの最大の特徴は、服の生産技術や業務プロセスに工夫を凝らし、いわば「自分にフィットした、欲しい服だけを選んで購入する」という在り方を消費者やアパレル業界に対して提案していることにある。

東京・表参道の喧騒(けんそう)から少し入り、落ち着いた雰囲気の一角に建つビルの2階にある「THE ME」の直営店(画像提供:THE ME)
東京・表参道の喧騒(けんそう)から少し入り、落ち着いた雰囲気の一角に建つビルの2階にある「THE ME」の直営店(画像提供:THE ME)

幅広いアイテムをカスタマイズ可能

THE MEで販売しているのは、主にビジネスシーンを意識した衣類。スーツ、パンツ、ニット、ブラウス、ワンピース、Tシャツなど、男女80アイテムずつほどを販売している。この8月から始まる2年目の秋冬シーズンからは、カジュアルラインも増やしていく予定という。

普通のアパレルショップ同様、商品が並んでいるように見えるがすべてサンプルだ(写真撮影:中島有里子)
普通のアパレルショップ同様、商品が並んでいるように見えるがすべてサンプルだ(写真撮影:中島有里子)

購入者は東京・神宮前にあるTHE ME店舗に訪問して、これらのアイテムから欲しい服を選び、採寸してもらいながらオーダーする。

「オーダースーツの事業者が市場に数多くあることが示しているように、一般的にお客様がオーダーできるのは、スーツが中心です。一方、スーツ以外の幅広いアイテムを取りそろえているのがTHE MEの特徴の1つです」。THE MEの責任者を務める三菱商事ファッション デジタル事業推進本部新規事業部長の前田真太郎氏はこう語る。

これは後で詳しく述べるが、THE MEではスーツやニットなどそれぞれのアイテムを購入者の好みに応じて細かく調整できる。例えば裾周りなどの寸法、ポケットの有無といった複数の角度から、購入者の好みにカスタマイズできるという。「スーツ以外、例えばTシャツなどでも裾周りなどを調整できます」(前田氏)。