企業組織の人材不足を解消しつつ、障がいや病気がある人、子育てをしている人、第一線は退いたがまだまだ働けるというシニアの人など、様々な層の「働きたい」というニーズに応える枠組み。それが「ショートタイムワーク」だ。ショートタイムワークが切り開く可能性はどんなものか。

少子高齢化が進みゆく日本。産業界に共通する喫緊の課題は人材不足だ。

しかし、障がいがある人や病気がある人、育児や介護をしているが空いた時間で働きたいという人、働く意欲がある高齢者が、それぞれの事情の中で存分に働けるようになったら、どうなるだろうか。

企業など雇用する側の工夫によって、日本の人材不足は解消する可能性がある──。「ショートタイムワーク」はそのような着想の下で提示されている解決策の1つだ。ソフトバンク株式会社と東京大学先端科学技術研究センター社会包摂システム分野が提案しているもの。2009年からの共同研究「魔法のプロジェクト」で両者の連携は始まった。

※ICTを活用した障害児の教育・生活の支援策を推進するプロジェクト。特別支援学校をふくめてのべ700校以上・1000件の事例を創出しているという。

ショートタイムワークの公式ホームページでは次のように記述している。

『「ショートタイムワーク」は、何らかの理由により長時間の勤務が難しく、働く機会を得られなかった方が、週20時間未満という短時間からの就労環境を整えることで「共に働く」を実現できるダイバーシティな働き方です。それぞれの特性や経験を生かして働くことで、より多様な方の就労機会を創出し、企業や地域においても、人材の有効活用が期待できます。』

※ URLはhttps://www.softbank.jp/corp/sustainability/special/stw/

ショートタイムワークが「週20時間未満」としている理由は、障害者雇用促進法で定める支援の枠組みや法定雇用率の算定方法においては、障がい者に週20時間以上勤務してもらうことが必要であり、20時間未満しか働けない障がい者は企業に雇用されにくいという背景がある。ショートタイムワークではその点を意識し、働く機会を創出するべく週20時間未満とした。

※2020年度からは法制度の一部改正により、10時間以上20時間未満の雇用を対象とする特例給付金が新たに創設された。

ショートタイムワークの取り組みを進めている中心組織は、ソフトバンクのCSR本部。この働き方の産業界への普及・啓発を推進する組織「ショートタイムワークアライアンス」の事務局も務める。東京大学先端科学技術研究センターが、産学連携パートナーとして活動に協力している。

2022年5月現在、ショートタイムワークアライアンスの賛同・実施法人は218。このうち約26の法人がショートタイムワークを導入し、それぞれ1人以上のワーカー(働き手)を雇用しているという。

ショートタイムワークの実践風景の例。左が在宅勤務で働いているワーカー。右がワーカーと共に働いているソフトバンクの社内の様子で、作業用の画面とは別に用意した画面に映し出されている(出所:『「SDGs未来都市・横浜市」の実現に向けた汐見台地区「ショートタイムテレワーク」実証実験報告書』13ページ)
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ショートタイムワークの実践風景の例。左が在宅勤務で働いているワーカー。右がワーカーと共に働いているソフトバンクの社内の様子で、作業用の画面とは別に用意した画面に映し出されている(出所:『「SDGs未来都市・横浜市」の実現に向けた汐見台地区「ショートタイムテレワーク」実証実験報告書』13ページ)

日本では今後さらに高齢化が進むことが確実だ。そうした中「フルタイムでは働きにくいものの、時間を限れば能力を発揮できる」というワーカーは、シニア層を中心に増加すると考えられる。

翻って、日本の産業界ではダイバーシティの重要性が盛んに指摘されるようになった。障がいや病気がある人々や育児に関わる人を含めて、あらゆる層がそれぞれの立場から社会参加できる仕組みの整備は、日本の産業界が健全に発展するためにも必須の取り組みと言える。

ショートタイムワークは実際にはどのような働き方なのか。ソフトバンクではCSR本部が主導しつつ、2016年からショートタイムワークを導入、この働き方の有効性について検証を進めてきた。まずは同社内のショートタイムワークの導入事例を2つ、見てみよう。